【4ヶ月使ったレビュー】NIKKOR Z 180-600mmは航空機やスポーツ撮影に適した入門望遠レンズ

2023年8月31日に発売され、事前予約で真っ先に手に入れたNIKKOR Z 180-600mm f/5.6-6.3 VR

NIKKOR Z 180-600mm f/5.6-6.3 VR導入

タイトルに結論を最初に書いてしまいましたが、この数か月の望遠撮影では、Fマウント単焦点望遠レンズAF-S NIKKOR 600mm f/4G ED VR(以下ロクヨンG)と共に、このNIKKOR Z 180-600mm f/5.6-6.3 VRで撮影をしてきました。荷物を減らしたい撮影状況でも、Z 180-600mmは活躍しています。
そもそもAF-S NIKKOR 600mm f/4G ED VRは、気軽に持ち出せる重量サイズのレンズではないので、Z 180-600mmの出番の方が多くなっています。

私の戦闘機・航空機撮影のメインレンズは、現在もあくまで単焦点レンズのロクヨンGですが、ネイティブなZマウントの最新レンズであるNIKKOR Z 180-600mmがどの程度航空機撮影が可能か、また画質やAFの速さはどうか、簡単に比較していこうと思います。
また、息子がサッカーを始めて、試合を撮る機会も出てきたので、サッカー撮影についても書こうと思います。
このレンズの撮影はほぼ動態メインとなっているため、静態撮影中心の方と少し評価が違うかもしれない事をご了承ください。
野鳥撮影も行わないため、被写体との距離は離れた場面が多いです。

●サイズ・重量・操作性

全長は315mmとやや長め。縮めた状態のAF-S NIKKOR 200-500mm f/5.6E ED VRよりも48mm長いため、カメラバッグは選ばなければなりません。

180-600mm用にレンズケースNikon CL-L2を購入しました

ただインナーズームなのでズーミングに係わらずレンズが伸びないのが特徴です。
伸びるズームの場合、重心変化が大きい、レンズに埃が入りやすいといったデメリットがある反面、ズームの広角側ではレンズ全長が短くなるため、持ち運びの点では有利です。
ズームで伸びないのは、個人的にはメリットが大きいと思い、特に望遠域での重心変化は、ブレの発生具合にも影響してくるので、大きなメリットです。
ズームリングの回転角度は70度と小さいため、、AF-S 200-500mmより高倍率になったにも関わらず、ズームリングを持ち直すことなくズームの端から端まで移動でき、素早いズーミングが可能です。
かつて使っていたSIGMAの150-600mm Sportsは、伸びるズームを生かして直進ズームのように使うことが可能で、これはこれで便利でしたが、ズーミングしたときの重心移動が厄介でした。そもそもレンズ重量も2,860gと割と重かったですし。
またAF-S 200-500mmはズームの回転角が160度近くあり、素早いズーミングに難ありでした。
それと比べると、Z 180-600mmは小さな回転角と、リングのトルク変動もほぼなくスムーズなので、使い勝手は良好です。

Z 180-600mmは重量も2,140gと比較的軽量。ただこれを軽量ととるか、重いととるかは人それぞれ。私は何せ5,060gの重量級なロクヨンGを使っているため、それからしたらずっと持っていられるくらい軽量に感じます。少なくとも長時間手持ち撮影も苦にならないレベルです。
これが初めての超望遠ズームという人には重く感じるでしょう。ただ、これより軽いとなると、フルサイズならNIKKOR Z 600mm f/6.3 VR Sと言ったやや暗めの単焦点か、M4/3など小さなフォーマットのカメラ&レンズを使うしかないでしょう。
600mmという焦点距離は、それなりの覚悟は必要なレンズです。買っても扱いきれずに手放す割合が高いのも、この手の超望遠レンズだったりします。

操作性は、まず本体スイッチとボタンは必要最小限で、フォーカのA/M切替とフォーカスリミッター、そしてL-Fn1ボタンがあります。
手振れ補正の切替はボディ側のメニューからの設定で、私は手持ち撮影が殆どで、ほぼSportsモードしか使わないので、本体側の切り替えスイッチが無くても困らないです。
L-Fn1ボタンにはAFロックやAF ONなど、あらゆる機能が割り当てられますが、私はロクヨンGと同じ、フォーカス位置呼び出しを割り当てています。
万一フォーカスを大外ししても、無限遠手前位にフォーカスが来るように設定しているので、このボタン1つでもあるかないかは大違いです。AF-S 200-500mmやSIGMA 150-600mm SportsにはFnボタンはありません。

マルチコントロールリングは、デフォルトのフォーカスリングの設定で使っています。
息子のサッカーの試合では、選手が入り乱れた場合に、息子以外にフォーカスが持っていかれることがあったため、コントロールリングを併用しフォーカスを時々MFとして使いましたが、概ねリ回転角に対しリニアにフォーカスは追従します。使い勝手はAF-SやSIGMAのHSMのリアルタイムMFと大きく変わらない印象でした。

ほぼAFで問題ないけど、とっさのMF操作も概ね良好

ズームリングのすぐ手前にコントロールリングがあるので、ほぼ持ち替えせずにフォーカスリングからコントロールリングに手を伸ばせるので、さっとMF出来るのも良いですね。

使い勝手については、トータルで満足です。

●解像力

まず画質で一番わかりやすいのが解像力です。
Zマウントレンズは、安価なものも含めて、解像力不足を感じることはほぼなく、特に画面周辺ではFマウントの同クラスのレンズと比較しても、安定した解像力を提供してくれます。
Zマウントでは高倍率ズームのNIKKOR Z 24-200mmでも従来の高倍率ズームのネガを感じさせないくらい、画面の隅々までしっかりと解像します。
レンズは望遠になるほど、光学設計上後玉(一番カメラ側についているレンズ)も撮像面から離れるため、一眼レフとミラーレスでの差は少ないと言われています。
しかし、実際にはZマウントの180-600mmは、Fマウントの同クラスのレンズであるAF-S NIKKOR 200-500mm f/5.6E ED VRを確実に越える画質を提供してくれました。
元々FマウントのAF-S NIKKOR 200-500mmも比較的良好な解像力でしたが、Z 180-600mmは全焦点距離でさらに一皮むけた印象です。
少なくとも、AF-S 200-500mmや、Tamron, SIGMAの150-600mmクラスからの買い替えでは、解像力は確実に向上します。
各種収差の少なさも、解像力に貢献しているでしょう。

航空機のディテールもよく出ています

中心付近は、どの焦点距離でも絞り開放から解像力は高いです。画面隅は比較するとやや低下する傾向はあるもの、一眼レフのレンズと比較するとその差は大きくはなく、
安定しています。1段絞れば周辺解像力も向上しますが、私はほぼ絞り開放でしか使っていませんが、画質低下は殆ど感じられないので、安心して絞り開放から使えます。
SIGMAは600mm付近は少しだけ絞ったほうが良好、AF-S 200-500mmは開放から問題なく使えるも、少し絞ったほうが良くなりました。それと比較しても、Z 180-600mmは航空機撮影ではほぼ絞り開放で問題なかったです。

実のところ、解像力だけの話をすると、条件にもよりますが古い単焦点のロクヨンGにかなり迫っていると思いました。ほんとうに技術の発達にはビックリです。
もちろん、しっかりブレなく撮れた場合は、古くても単焦点のロクヨンGの方が圧倒的にしっかりと解像するものの、その差は以前の望遠ズームよりも縮まってきていると言えます。
条件によって、と書いたのは、やはり被写体との距離や明るさ、コントラストの条件の変化が大きくあっても、古くても単焦点レンズの方が安定性は抜群に高いです。そこは明確にズームと単焦点レンズの差が出るところです。特に最短撮影距離付近では、Z 180-600mmはやや画面隅の解像力が低下する傾向は感じます
なので、このZ 180-600mmは単焦点望遠よりは各種条件での安定性(解像力だけでなくボケ味など総合力)は一歩引くものの、日中なら殆どの場面では十分な高画質を発揮できるレンズと言えます。
望遠レンズに於いて、画面の隅までカリカリに描写させる場面は少ないと思いますが、遠景の風景などは、2段絞ると、隅々まで解像力が上がります。

●ボケ味

味、と表現するように、好みの分かれる部分です。
f値の大きなズームレンズだけに、広角側でのボケはやや中途半端です。
また、背景の距離と被写体によっては、ややボケがざわつくこともありますが、それでもAF-S 200-500mmと比較しても、背景ボケは滑らかに感じました。

後ボケは悪くない
ズームと考えれば後ボケは素直

後ボケと前ボケ、前ボケのほうがざわつく印象はあります。

前ボケは少しざわつく印象

ただ、一般に後ボケのほうが重視されることは多いので、この手のズームではこんなものかな、という感じですね。決してうるさいボケというところまではならないです。

単焦点には敵わないものの、この価格帯の望遠ズームとしては大きな欠点はなく、良好です。
望遠側で口径食が少し発生するようですが、玉ボケを気にするような撮影をしなければ、特段欠点にはならないでしょう。

●倍率色収差・軸上色収差・球面収差

いずれの項目も全く気にする必要はなく、RAW現像で倍率色収差のチェックを外しても、色収差は気になりません。軸上色収差も実写では全く気にならないですね。
最短撮影距離付近で、やや球面収差による影響があるような…気がしないでもないです。最短撮影距離付近では
解像力低下を感じるのは、球面収差の影響かもしれませんが、あからさまに目立つほどの球面収差ではないかと思います。

●湾曲収差

糸巻き歪みは補正を外すとあるようですが、大きくはないため、補正をした所で画質に影響は感じられません。
常時補正で良いでしょう。
コマ収差は、そのような撮影シチュエーションがないため未評価です。

●AF速度

NIKKOR Z 180-600mmはAFモータにSTM(ステッピングモータ)を使用しています。
STMはパルス波による電流のON/OFFに高速に繰り返すこと(これをスイッチングと言います)でモータを回転させます。1パルスごとの回転角が決まっているため、パルスの発生回数で回転角を正確に出すことができ、またパルスを発生させる間隔を変化させることで、ゆっくり回すことも速く回すことも可能です。速度制御しやすく、エンコーダのような角度センサを別途用いる必要がなく、回転角度が正確という特徴があります。また静粛性も高く、ほぼ無音です。
半面、DCモータや超音波モータと比較してトルクがやや低めという欠点もあります。
このため、従来は比較的小型なレンズや、安価なレンズに用いられてきました。

航空祭のフォーメーションからのブレイク、こういうのは全く問題なくAF追従

Nikonでは、現状Zマウントレンズでは殆どがSTMを採用していて、高価な超望遠レンズの一部のみが、SSVCM(ボイスコイルモータ=リニアモータ)を採用しています。
NIKKOR Z 100-400mmは、ややAFが遅め、と言われていました。
本レンズに関しては、爆速ではないものの、超音波モータのAF-S 200-500mm比較しても速いと感じられるレベルです。超音波モータだから何でも爆速というわけではなく、結局のところ超音波モータでもレンズによって採用されるモータが変わりますし、f値にもよりますし、STMだからとかリニアモーターだからとか、一概に言えないです。
さすがに同じAF-Sでも、AF-S 600mm f/4G(ロクヨンG)の方がスパっとキレのある速さですが、Z 180-600mmもこのクラスのレンズとしては健闘しているほうでしょう。

A/Bを焚いての離陸も問題なし

ただし、コントラストが低い被写体で、時々AF速度低下を感じます。スーではなく、じわーといった感じに遅くなることがあります。
これはレンズのせいというよりは、カメラ側の問題でしょうね。Nikon Zの像面位相差AFは、少しでも暗いとあまり機能せず、コントラストAFに依存する傾向がありますが、自衛隊車両のようなカーキ系の車両のようにコントラストが低いと、さらにAFが合わなくなる場面が何度かありました。
この辺りは、レンズよりむしろカメラ側の改善を望むところです。

雨天では迷彩の99式自走榴弾砲より手前の雨粒にフォーカスが合うことも→素早くMF操作して撮影

戦闘機が十分追えるので、旅客機や大型軍用機程度の速度は何ら問題なく撮影出来ます。

大型機なら80年代のAF機とレンズでもAFで追えますからね

息子のサッカー撮影は、まだ小学校低学年なのでスピードはさほどではないですが、少なくともAFの遅さは感じず、3Dトラッキングでしっかり追いかけられていて、フォーカスが追い付かないことはないですね。

息子が始めたばかりのサッカーでもZ 180-600mmは大活躍!

このクラスのレンズとしては十分速いと言えます。モータの種類だけでなく、フォーカス群のメカ構成やカメラボディ側の性能で、AF速度は変わりますので、STMだから遅いという先入観は持たないほうが良いですね。

●総評

ポートレイトや風景、野鳥撮影では評価が変わるかもしれませんが、少なくとも私が良く撮る動態撮影の航空機、そして息子のサッカー撮影に於いては、なかなかのパフォーマンスで、このクラスの望遠レンズとしてコストパフォーマンスが高いレンズと言えます。
Nikon Zユーザーの超望遠レンズ入門として、広くお勧めできるレンズです。そしてさらに重箱の隅をつつきたくなったら、単焦点レンズの世界へどうぞ!
執筆時点(24年1月)でもまだ品薄なのが残念なところです。


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