新旧NIKKOR 35mm撮り比べシリーズラストです。
撮り比べてわかったのは、35mmレンズというのは50mmレンズより実は安定した描写のものが多いんじゃないかな、と。
NIKKOR-S Auto 35mm F2.8後期型ですら、描写の安定性が高いんですよね。50mmだとこの時代のレンズは、開放では収差が多く、絞るほどに収差が改善されキリッと描写するものが多かったですが、このAuto 35mmレンズは確かにその傾向は見られるけど、50mmほどではないんですよね。もちろんF2.8という開放を欲張っていないのも大きいですが。
さてこの最後の比較ですが、最も各レンズの描写の違いが出ているように感じます。
特に今回は順光で被写体の自転車の距離が2.5m程度、背景も複数の距離を取り混ぜてみました。
良い悪いではなく、同じレンズでもこんなに特徴が違うんだなとわかりやすい作例になったかなと思います。撮影タイミングで光の状況が変わったり厳密な同じ条件ではないですが、傾向を感じていただければと思います。
NIKKOR-S Auto 35mm F2.8
この作例では最も絞りによる描写の変化を感じられたのがこのレンズです。
絞り開放では球面収差や非点収差と思われるふわっとした描写が感じられますが、いい塩梅に柔らかさを出していて、独特な立体感を感じさせる描写です。ですが解像力はしっかり出ていて、ピントの芯があるので、収差だらけで見るに耐えない、ということがまったくなく、これはポートレイトに積極的に使いたいですね。
f2.8という決して明るくはない開放ですが、むしろ被写界深度が適度にあることもこの手の撮影では好ましいですね。






開放では周辺減光がむしろ独特の立体感に寄与している感じがしますね、1段絞れは収差の影響もぐっと減り、安定した描写です。これはf16まで変わらず。ハイライトのパープルフリンジはむしろ新しいAIAFよりも出ていないくらいです。
解像力は確かに新しいレンズよりはないかもしれませんが、あくまで比較した場合であって、今時の4500万画素のデジタルでも十分と感じます。
よく高画素機が登場した頃には、古いレンズは解像力が追いつかないので意味がないなんて話も聞かれましたが、そんなことはないです。
AI AF Nikkor 35mm f/2D
Autoと比べると、80年代の光学設計も新しさを感じます。このレンズはAutoよりも1段明るいですが、絞り開放の球面収差はAutoのf2.8よりもむしろ少ない、もちろんまったくないわけではないのですが。
Autoよりより端正な描写担っていると思います。ただ、ハイライトのパープルフリンジがAutoでは感じなかったのが、このレンズでは少し出ているんですよね。







絞るほどにキリッと描写していきます。f16でも回折の影響はあまり感じないですね。
今回の作例ではないのですが、このレンズは円形絞りではないために、夜景撮影では光芒がきれいに出るんですよね。
そしてこの撮影では円形絞りではないことによる影響はあまり感じませんね。
AF-S NIKKOR 35mm f/1.8G ED
AIAFよりさらに30年近く新しくなると、もはや絞り開放でも収差の影響はほぼないです。
中心部の解像力も高く、ここまで写れば文句のつけようがないですね。少し気になる点は、開放では背景の木の葉のボケが少し二線ボケの傾向が見られるところでしょうか。
絞りを変えても全体として安定性は高いですね。ただ開放時にハイライトの縁にパープルフリンジが少し出ています。AutoやAI AFでは出ていないんですよね。ピントが良すぎるから?








解像力のピークはf8~11辺りと感じますが、f16でもほとんど回折の影響は感じられないですね。さすが新しいレンズだけあります。
NIKKOR Z 35mm f/1.8 S
完璧です。描写の傾向はAF-Sと似ていますが、違いは二線ボケの傾向が少なくなっていること。お陰でより立体感のあるボケが出ています。
また解像力はさらに一歩高いですね。AF-Sよりも中心から解像力の高い範囲が広がっています。像面湾曲がより少ないのでしょうね。
ただAF-Sと同様、絞り開放でハイライトのパープルフリンジが少し出ています。気になるほどではないのですが。








とはいえ気になる点はほぼなく完璧に近い描写です。これが逆に写りすぎて…なんて言われる所以なのかもしれませんが。人間ってないものねだりで贅沢ですね。
でもこれだけしっかり写るからこそ、写真に集中できるとも言えますね。レンズのクセに頼りすぎないってのも撮り方の1つです。
シリーズで掲載してきた本記事も一旦これで終了。
実はこの後、各レンズで簡単にスナップしてきたので、その写真もいずれまた掲載しましょう。
35mmレンズはスナップの王者です。使いやすいし、描写は間違いないですから。