バッテリ電圧で見る、Z 9からZ 8への内部電源の進化

Nikon Z 8では、バッテリはこれまでの多くのNikon Zフルサイズミラーレスや、ミドル級一眼レフで使用されているものと同じ、EN-EL15系のEN-EL15cが採用されています。

Nikon Z 9EN-EL18dバッテリと比較して、電圧、容量とも小さいのですが、最も多くの機種で使われているだけあって、汎用性が高く、価格もEN-EL18dの1/3以下と購入しやすくなっています。

EN-EL15cEN-EL18d
価格(2023年5月中旬Amazon)¥5,700¥21,600
電圧7.0V10.8V
容量2,280mAh 16Wh3,300mAh 36Wh

EN-EL15cは18dに対して容量は半分以下となっています。
これは撮影枚数のスペックに現れていて、静止画の連続撮影枚数がZ 9では5310コマに対し、Z 8は2280コマとなっています。これは、バッテリ容量的に見ても、EL18dの36Whに対して、EL15cの16Whですから、比率的にもそのくらいだろうな、という計算ができますね。

Z 8の電装は省電力化されている?

上のバッテリ容量の話だけで見ると、電装品の電力消費はトータルでは大きくは変わっていないのかな、と言えなくもない。
ただ、Nikonの中の人が言うには、電装系は改良されて省電力化されているとのことです。カタログスペックの撮影枚数と実際の撮影は違うので、実用として、どの程度撮影可能化は気になるところです。
Z 9は、私の使い方では航空祭レベルの5千枚ほど撮影、ほぼ1日、バッテリ1本で撮ることが出来、残量も1/3ほどありました。果たしてZ 8はその半分は使えるのか、それとも実際はもっと使えるのか。

使用するバッテリの電圧が変わりますから、Z 9と全く同じ回路を使い回すことは出来ません。一般に、電装品に使われている駆動電圧は、12V, 5V, 3.3Vといったように決まっている事が多いので、内部で電圧を変換するDC/DCコンバーター(いわゆるデコデコ)が入っています。
特に電装品は回路の引き回しの距離が長くなるほど、電圧低下やノイズの影響が無視できなくなるのと、電源電圧が低いということは、流す電流は多くなるため、回路はそれなりに改良が入っているはずです。
電源的には電圧が高いほうが有利です。最終的には、基盤回路内で、それぞれの半導体など電装品に対して適切な電圧に減圧(場合により昇圧)しますが、いずれにしろバッテリの電圧が高いほうが効率が良くなります。
特に、ドッと一気に大電流が流れた際の電圧変動は、バッテリ電圧が高いほうが変動耐性は高いです。
つまり、搭載バッテリの電圧が低いということは、それだけ電装品にとっては不利になる要素が増えるのですが、Z 9と同等の性能をZ 8で実現しているのですから、安定して動作できる回路設計が出来た、と言うのは意味のあることだと思います。

後は実用上どうなのかが気になるところです。

電源の観点で見ると、EOS R5やSONY α1ってすごいなと思う

とは言え、同価格ではライバルとなるCanon EOS R5も、Z 8より小型の筐体で、バッテリもLP-E6NH(7.2V 2,130mAh)を採用しているので、Z 8が特段優れているわけでもないですね。ただ、動画の撮影時間は、筐体が大きい分Z 8に余裕があるようで、ここは放熱にはある程度サイズが必要、というのも分かります。R5ももう3年前の機種で、MarkIIの話もチラホラ出ているので、このサイズのまま、より高性能化していくはずです。

そして、価格は違いますが、SONYのフラッグシップ機、α1もまた、Z 8より小型の筐体ながら、8K30p動画(この点は8.3K60p RAW内部記録できるZ 8に部があるけど)、30コマ/秒の高速撮影、LAN端子も搭載し、バッテリは小型のNP-FZ100(7.2V 2,280mAh)を使用しています。小型化に関してはさすが、ウォークマンやハンディカムで培った小型化省電力技術が優れていますね。


さてNikon Z 8の実際のバッテリの持ち、発熱は気になるところですね。熱の話は、先行ユーザーの話を聞く限り、特に動画ではZ 9より厳しいような話もチラホラ見かけますが、それでもZ 9に対しての話で、実用上は結構長回しはできそうな感触。
去年9月の運動会では、Z 9で4K60p動画を1時間長回しして、熱など何ら問題なかったので、Z 8でどこまでそこに迫れるかですね。