AF-P DX NIKKOR 18-55mm 早すぎた引退

2016年の販売開始から、わずか数年で生産完了となってしまったAF-P DX NIKKOR 18-55mm f/3.5-5.6G VRD3400のキットレンズとして、Fマウントレンズでは初めてステッピングモータを採用したレンズです。

AF-P DX NIKKOR 18-55mm f/3.5-5.6G VR ブラック
AF-P DX NIKKOR 18-55mm f/3.5-5.6G VR

Fマウント初のステッピングモータ搭載レンズ

ステッピングモータ(STM)は、1パルス毎の回転角が決まっているため、パルス数に応じた正確な回転角度出しが可能、パルスの周波数(パルスを発生させる間隔)を変えることで、回転速度も自由に変更可能なので、特に動画撮影のように、ゆっくりフォーカシングさせる場合にも適しています。
AF-Sのような超音波モータは、高トルクで素早く動かすのに向いている反面、速度の連続的な加減速や正転反転の繰り返し動作は苦手です(これを克服したCanonのナノUSMも存在します)。
特にコントラストAFのような動作に、ステッピングモータは適しているとされています。2011年から発売されたミラーレスのNikon 1は、全てのレンズがSTMでした。
NikonのZマウントレンズも、今のところ全てSTMを採用していますが、これは構造がシンプルで耐久性が高く、比較的大きな望遠レンズもマルチフォーカスを採用することで、フォーカシングユニットを分散させて、小型化しているのも大きいのでしょうね。

STMはパルス毎の回転角が決まっているため、エンコーダ(回転角の位置を検出する)が不要ですが、二次側から外力を加えてモータを回すと、現在位置がわからなくなるため、従来のAF-Sレンズのように、フォーカスリングを回すことでMFに移行できる、機械式でのフルタイムマニュアルフォーカス機構の組み込みは難しいです。
このため、AF-Pレンズは全て、フルタイムマニュアルフォーカスはフォーカスバイワイヤ、つまりフォーカスリングは機械的にはレンズユニットにつながっておらず、フォーカスリングはエンコーダを内蔵したバイワイヤ駆動となっています。

こうした特性のため、従来のAF-Sレンズのように、レンズ単体ではフォーカシングできず、通電させなければなりません。また、電源ON時に、本レンズは必ずフォーカスが無限遠に移動しますが、これはエンコーダを持たないモータの現在位置検出のための動作と思われます。電源を切ってしまうと、レンズが現在のフォーカス位置が分からなくなってしまうためです。

茨城空港、百里基地の風景 Nikon D3400 + AF-P DX NIKKOR 18-55mm f/3.5-5.6G VR

従来のAF-S DX NIKKOR 18-55mm系は、安価な筒型超音波モータでギア駆動のため、フルタイムマニュアルフォーカスは、機構が複雑になるために使用できませんでしたが、AF-Pレンズは、構造上フォーカシングユニットもフォーカスリングと機械結合できないためにバイワイヤとなるため、安価なレンズでもフルタイムマニュアルフォーカスが可能となりました。フォーカスも速くなりました。

2021年5月旧製品に

しかし、ミラーレス一眼の急速な普及、そしてNikonの一眼カメラは中上級機の販売にシフトしていく過程で、従来のエントリークラスの一眼レフ、D5x00とD3x00系は、それぞれD5600,D3500を最後に、2021年早々にに旧製品化し、そのキットレンズであった AF-P DX NIKKOR 18-55mm f/3.5-5.6G VRも2021年5月に旧製品となってしまいました。
ことのことは、もうD5x00/D3x00系の一眼レフは出さないことを意味します。他にも、次々とFマウントのDXレンズは旧製品化、またFX用も少しずつ旧製品化されており、一眼レフの新製品が今後出る可能性は極めて低いと思われます。

Fマウント最後の廉価ズームとしては中々の描写

さて、本レンズが、事実上DXフォーマットの廉価ズーム最後となってしまいましたが、描写は中々良いですよ。もちろん、値段に対して、という断り入れなければなりませんが。
AF-Pレンズということで、やっと普及価格帯でCanonに並ぶことが出来た爆速AFの話に傾きがちですが、描写もこのクラスとして優れています。

Nikon D3400 + AF-P DX NIKKOR 18-55mm f/3.5-5.6G VR

絞り開放では、中心部は解像力が高く、周辺はやや流れますが、少し絞れば周辺までしっかり解像します。手ブレ補正も4段で十分よく効きます。軽量コンパクトで使い勝手も良いですね。
色乗りもよく、センサのカバーガラスの性能差からなのか、ややレンズを選びがちなD3400との相性もバッチリです。さすがキットレンズです。
このレンズは、D3400とともに、妻のカメラですが、時々サブカメラとして借りて使っています。システム全体で軽量なのが魅力です。
以前は、このクラスのレンズの描写は、悪くはないけど良いと思わなかっただけに、本レンズは安価ながら、中々優れている1本です。
タラレバになってしまいますが、後3,4年早く出ていたらなぁと思います。出るのが遅かっただけに、引退も早すぎましたね。

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