Ai AF Nikkor ED 300mm F2.8S(IF) の描写

2009年1月に撮影したフクロウの写真。

Nikon D300 + Ai AF Nikkor ED 300mm F2.8S(IF) 

当時のカメラはNikon D300、レンズは親父に借りたAi AF Nikkor ED 300mm F2.8S(IF) です。

Ai AF Nikkor ED 300mm F2.8S(IF) は、1986年10月に発売開始された、Nikonの300mm F2.8レンズ、いわゆる「サンニッパ」レンズとしては、初めてのAFレンズとなります。

1980年代は、カメラへのオートフォーカスが搭載されだした年代です。F3AFという、マニュアルフォーカスのF3に後付でAF機構を搭載したカメラもありましたが、専用レンズでのみのAFという異端カメラで、本当の意味で最初からAF一眼レフとして発売されたのは、Nikonでは1986年4月に発売開始したF-501となります。

この当時のNikonのAF機構は、Fマウントの互換性に配慮したせいか、あるいはレンズ側へのAFモータ搭載を嫌ったのか定かではありませんが、AF駆動用モータをボディ側に持たせ、レンズ自体にはボディ側のモーターの駆動を機械伝達させるAFカップリングが採用されていました。

この方式の欠点は、AF機構をボディ側モータからレンズのフォーカス機構に機械伝達させるさせるがゆえ、MFとの併用でAF時もフォーカスリングが回ってしまうというのがあり、そのため多くのAFのFマウントレンズは、MF時のフォーカスがスカスカになってしまいました。これは、MFレンズのようにねっとりとしたグリスの抵抗があると、摺動抵抗でAFでフォーカシングが難しいからです。

このため、Ai AF Nikkor ED 300mm F2.8S(IF) では、A-M切り替えリングを搭載し、A側に切り替えればAF時もフォーカスリングが動かず、M側にすれば、ボディ側のAFレバーの位置に関わらず、MFレンズのように操作ができました。恐らくは、そうしないと、レンズのフォーカシングユニットまでが遠くなってしまう大口径望遠レンズでは、機械伝達では抵抗が大きすぎるからでしょうね。

ライバルのCanonが、AF一眼レフのEOSシリーズで、FDマウントの互換性を断ち切って、最初から完全電子マウントで、レンズ側にAFモータを、絞りは電磁絞り化させたのとは対象的でした。
おかげで、NikonはFマウントの互換性と言いつつ機構を複雑化させ、100%の互換性は保てないばかりか、後に超望遠レンズはレンズ側にAFモータを持たせた、コアレスモータ内臓のAF-Iレンズ、そして超音波モータのAF-Sへと移行していきます。
今では、Fマウントレンズは多くがAF-S、またはAF-P(ステッピングモータ搭載)、一部レンズは電磁絞りのEタイプになっています。

Fマウントに固執したばかりに、最終的に100%互換性があるとは言えないレンズ群となってしまいました。

Nikon D300 + Ai AF Nikkor ED 300mm F2.8S(IF) 

初期のFマウントレンズでは、機械伝達でAFさせるレンズでは、このサンニッパと、開放f値がF4のAi AF Nikkor ED 300mm F4S(IF) (通称サンヨン)が唯一であり、当初アナウンスされていた600mmは結局発売されませんでした。
恐らく、ボディ側のAFモータで、600mmクラスの超望遠レンズのAFを駆動させることには無理があったのでしょう。

レンズ側にAFモータを持たせたAF-Iレンズが発売されたのは、6年後の1992年となってしまい、またこのAF-Iレンズに対応したボディも限られていました。
面白いことに、その4年前の1988年に発売されたNikon初の一桁機のAF搭載のフラッグシップ、F4は、このAF-Iレンズに対応していて、F4開発時点で、既に大口径望遠レンズでボディ側AFモータでフォーカシングすることは無理で、Canonと同様レンズ側にAFモータを持たせるという考えがあったのでしょう。
当初から全てのレンズ側にAFモータを載せていれば、ここまで互換性やAFスピードで悩まなくて済んだのになぁと思いますが、当時のNikonのAFの考え方と互換性の点で、そうなってしまったのでしょうね。大型の望遠レンズならともかく、コンパクトな標準レンズにAFモータを組み込むことは、当時のNikonには難しかったのでしょう。

さてAi AF Nikkor ED 300mm F2.8S(IF)ですが、Yamaroのオヤジの所有で、それを借りて撮影していました。
AFは速くはないですが、想像しているよりは遅くなかった、と言う感じです。ただし、やはり後のAF-IやAF-Sレンズと比べると、ずっと遅いのは言うまでもなく、特にランダムに動く被写体は苦手です。作例のように留まっているフクロウなら問題ないですけどね。

その点、最初からレンズにAFモータを持たせ、更に超音波モータも80年代に搭載させていたCanonは先見の明とAFの技術力、モータの小型化の技術があったと思います。スポーツフォトのカメラマンを中心に、それまでNikon優勢だったプロの世界で、Canonがごっそりシェアを奪ったのも頷けますね…。

描写はさすがサンニッパ

AFスピードがいらないのであれば、今でも十分第一線で活躍できるレンズです。
ボケ味も良いですし、シャープネス、コントラスト、デジタルで撮っても問題ありません。
じっくり風景を撮る、とまっている鳥を撮るのには、今でも十分通用するでしょう。中古流通は多くもないですが、珍しくもないと言ったところです。
望遠単焦点の入門としてもおすすめです。

 Ai AF Nikkor ED 300mm F2.8S(IF)
 発売年 1986年10月
 レンズ構成 6群8枚
 焦点距離 300mm
 最小絞り f16
 絞りバネ枚数 9枚
 最短撮影距離 3.0m
 絞りリング あり
 絞り方式 自動絞り
 最大撮影倍率 ?
 フィルターサイズ 52mm(ビルドインフィルタ)
 質量 2,700g
 全長 ?mm