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【カセットテープ豆知識】オートテープセレクターの検出孔

80年代生まれまでの世代であれば、大抵の人が使ったことがあるであろうカセットテープも、生まれたとき既にMDの時代でした、CD-Rがありました、という世代には、大昔のメディアという印象が強いであろうカセットテープ。

最近リバイバルしてちょっと人気みたいなので、あの頃オーディオをやっていたオッサン連中なら知っているであろう知識も、若い世代には新鮮? というカセットテープネタです。

カセットテープの種類をデッキが自動判別するための穴

カセットテープには、大きく分けて4種類の磁気特性の種類があり、ノーマルポジション(Type I)、ハイポジション/クロームポジション(Type II)、フェリクロームポジション(Type III)、メタルポジション(Type IV)がありました。
このうち、今でも売られているのは、当初から販売されていたノーマルポジションのみです。また、フェリクロームポジションテープは、ノーマルとハイポジの良いとこ取りでしたが、製造コストがかかることと、その後すぐメタルポジションテープが登場したことから、80年代半ばほぼ死滅しました。Yamaroも使ったことはありません(当時使っていたSONY TC-FX5にはテープポジションセレクタに存在していた)。

カセットデッキは、これらテープの磁気特性の違いから、録音時にはバイアス量、再生時にはイコライザー時定数の違いから、テープの種類(ポジション)を切り替える必要があります。

80年代半ばまでは手動切替だったものが、徐々に自動切替になっていきました。
では自動でどうやって判別したかというと、カセットテープ側に検出孔と呼ばれる穴の有無で判別していました。

テープの種類により穴の数が違う

フェリクロームテープ(Type III)は、前述の通り80年代なかばに消えてしまったことから、こうした検出孔はなく、オートテープセレクターのカセットデッキでは、ノーマルポジションテープとして検出されてしまいましたが、あまり普及しなかったテープなので、実質的に問題はなかったようです。

カセットデッキ側にも、検出孔の穴の有無を検知するための検出スイッチ(テープの誤消去防止爪の検知も含む)が存在しました。

誤消去防止爪とテープポジション検出スイッチ
左から誤消去防止爪検出、メタルポジション検出、テープの存在検出(検出されないとデッキの操作ができない)、ハイポジ/メタルの検出スイッチ、誤消去防止爪検出スイッチ(PIONEER T-03SR)

カセットデッキ側は、写真のデッキはオートリバースデッキのため、誤消去防止爪検出スイッチがテープのA面B面用に左右それぞれ存在します。

ウォークマンなど再生専用機の場合は、イコライザーの再生時定数(ノーマルは120μs、ハイポジとメタルは70μs)のみ検出すれば良いため、メタルポジション検出スイッチが存在しませんでした。

今となっては懐かしい話ですね。

カセットデッキ PIONEER T-03SRのベルトを交換してみた

カセットデッキネタです。
前回、B’z Highway Xのミュージックテープを、手持ちのカセットデッキ、PIONEER T-03SRで再生してみたのですが、その過程で再生は問題ないものの、テープの早送りの回転が不安定であることがわかりました。

早送りが不安定になったカセットデッキ PIONEER T-03SR

せっかくの有休日なのに天気も悪いので、内部のベルトが伸びているのだろうと思い、交換することにしました。

ペナペナの安い筐体のデッキですが、MADE IN JAPANだったりします

まだPIONEERの本体がオーディオ部門を手放していなかった90年代の製品です。きちんとMADE IN JAPANです。今なら間違いなくMADE IN CHINAになっていることでしょう。PIONEERも、本体はオーディオ部門を切り離し、最近そのオーディオ部門を持っていたオンキヨーホームエンターテイメントが破綻、しかし何とかアメリカ企業のPremium Audio Companyにブランドを拾われ、日本国内ではTEACが代理店となることとなりました。
PIONEERブランドのオーディオ、好きなので、これからも良い商品を生み出して欲しいですね。

廉価デッキらしく中はスカスカ

販売当時の定価は¥39.800、購入価格は、確か当時エイプランというオーディオ雑誌によく載っていた通販の会社で、¥26,800と大幅割引されていました。高校生のお年玉でも手が出しやすい価格でしたね。
今ではありえない廉価なのも、カセットデッキの末期で作り手もコストダウンしても性能を維持できた時代です。

中身はスカスカ

廉価デッキらしく、鉄板もペナペナですし、中身もスカスカです。それでも、こうすることで低価格化していたのですから、アナログ末期のコストダウン技術はすごいです。

電源小さい! 大した消費電力はなく、アナログ回路も小規模なので、こんなものでしょうね。ヘッドやキャプスタン・ピンチローラーは、いつでもメンテ出来るので、今回は簡単に清掃するに留めました。
そして内部のメカを見てみると…おお、これまた安っぽいね。

写真中央奥の細いベルトが伸びていました

今回ダメだったのは、上の写真の中央奥にある細い方のベルトです。これが経年で伸びてしまい、回転時にたわんで回転トルクがしっかり伝わらず、早送りのスピードが不安定になっていました。

ちなみに、T-03SRはカセットテープを巻き取るモータはたったの1つ。1つのモータでテープの巻取、キャプスタンの回転を行っているのです。手前にある大きなプーリーが、テープを安定して送り出すためのキャプスタンの軸を動かしています。中級機以上であれば、個々の部分が独立したモータになっています。廉価機故に、1つのDCサーボモータで全てをこなしているのです。
このため、テープの回転ムラを示す、ワウ・フラッターは0.08%WRMSと、単体オーディオデッキとしては、あまり良くはありません。
それでも、実用上何とか問題ないレベルにはなっていますが。

早速ベルトを交換することに。

手持ちの汎用ベルトで近い長さのものを選択

以前買っていた汎用ベルトを使って交換します。
交換は取り外して入れ替えるだけなので簡単ですが、分解しないでやると、案外奥にあるプーリーにベルトを引っ掛けるのが大変でした。

こんな感じで、早送り・巻き戻しでもベルトがたわまなくなり、回転が安定しました。
メインのベルトも交換したいところですが、幅が太く長いため、これはまた次回ですね。今のところ再生は問題ないです。

DOLBY S NR基板

おまけです。せっかく開けたので、DOLBY S NR(ドルビーノイズリダクション)基板とやらを見てみました。

縦に基板が刺さっていますね。DOLBY S NRは、業務用のDOLBY SRを民生化した、最後のドルビーノイズリダクションシステムで、ノイズの低減効果は低音域まで及び、おおよそ24dB程度のノイズ改善が可能です。
ただし、1991年に登場したため、時代は徐々にデジタルオーディオに移行しつつあり、単体オーディオデッキでしか採用されることはありませんでした。
特に、初期のものは回路構成が大きいため、コストが掛かり高級機のみに採用、またナカミチなど高級カセットデッキメーカーの一部は最後まで採用しませんでした。
PIONEERのT-03SRは、このDOLBY S NRのICに、SONYのCXA1417Qを採用することで、回路をシンプルコンパクト化することが出来たためコストが下がり、定価¥39,800のデッキながら、DOLBY S NRを搭載するに至りました。
このT-03SRが、DOLBY S NRを搭載した最も安価なデッキでした。

でも見ての通り、SONY CXA1417Qで小型化出来たと言っても、あくまでもそれは単体デッキでの話で、DOLBY B/C NRのように、ICがワンチップ化されポータブルオーディオ、ラジカセ、カーステレオにも採用されたのと違い、IC1つで構成できたわけではないようで、これもDOLBY S NRが普及しなかった要因の1つです。

90年代は既にDAT(デジタルオーディオテープ)、MD(ミニディスク)と言ったデジタル録音メディアが登場、YamaroもT-03SR購入当時にDATデッキもMDも持っていたため、カセットデッキはこの廉価機で妥協していました。
90年代後半は既にカセットデッキは技術的ピークを迎え、デジタルと久遠メディアの登場と共に衰退が始まりつつありました。

あれから四半世紀、カセットデッキやカセットテープの技術が失われてしまったのも、無理はないですね。
今あるデッキやテープは末永く使えるようにメンテナンスしないとですね。

B’zのHighway Xの特典カセットを聴いて、カセットテープの技術の衰退を感じた

音楽を聞き始めたきっかけはB’zでした。
久しぶりに買ったB’zのアルバム、Highway Xには初回限定生産の特典として、カセットテープがついてくるので、予約注文して、CDはもう聴いているのですが、カセットはちょっと遅れて先日やっと封を開けてみました。

初回特典のカセットテープ付き

自分の子供達を含めて、もはやカセットテープを見たことのない若い世代が増えてきましたが、最近若者の間でにわかにブームになっているとか。
レコードといい、フィルムカメラといい、実体のないデジタルに慣れてしまった世代には、物理的な媒体は新鮮なわけですね。
アメリカではい今やCDよりレコードの生産量のほうが多いとか。
配信サブスクで、ハイレゾ音源を聞ける時代になりましたが、まだ配信されていない楽曲が世にあるので、CDも立派なメディアなんですけどね。

ただ、個人的にはカセットテープの音源、いわゆるミュージックテープを買うのは初めてです。
自分が子供の頃、語学学習用などはカセットテープでしたが、既にCDの時代になっていて、ミュージックテープは、一部の演歌など、CDプレーヤーを持っていない、ラジカセでかけられる用途として高齢者向けくらいにしか販売されていませんでした。

今こういうミュージックテープを生産する会社は殆どないので、作成用のカセットデッキも同メンテしているのか気になるところです。既に大手音響メーカーでカセットデッキを作らなくなって久しいですが、最近またラジカセなんかで少数生産されていたりします。磁気ヘッドとか、もう国産ではないのかな?

では再生してみます。

前回のブログでカセットデッキを紹介したのは、これを再生するため。久しぶりの再生で、いきなりテープ食われちゃったら嫌だったので、まずは手持ちのテープで動くのを確かめてからの再生。

音質、悪っ!

再生してびっくりです。音質が悪いのです。HiFiという言葉からは程遠い印象。わざとこういう音なのか、これがテープ自体の実力なのか?
手持ちのテープは、録音当時とほとんど変わらない良い音質で再生されたのに対して(メタルテープなので当然音質も良いのですが)、ノーマルテープのミュージックテープとは言え、業務用デッキで録音したはずでデッキの品質もそれなりに良いはずなのですが、まるで語学学習用テープ並みに音がこもっています。

再生したPIONEERのT-03SRは、高音域が減衰したテープの音を補正する、FLEX SYSTEMがあるため、これをONにしてみたものの、もともとの音質が悪いため、あまり変化なし。
自分が80年代から90年代に録音したカセットテープ、ノーマルポジションテープでも、ここまで音質の悪いテープは存在しませんでした。
当時はTDKのカセットを好んで使っていましたが、比較的廉価なTDKのAD(音楽用ノーマルポジションでは下のグレードでした)でも、ここまで悪くはなかったですね。
TDKでは、ADのさらに下のグレードとして、音楽用途向けではない記録用のノーマルポジションテープとして、AEというグレードが存在しましたが、多分そういったグレードのテープよりも音質が悪いのではないかと思います。

今国内で流通しているカセットテープは、国内ブランドではmaxellブランドのテープが唯一のようです。最も製造国は韓国・インドネシアみたいですが。

TDKもSONYもAXIA(富士フィルム)も太陽誘電も、カセットテープの生産は辞めて久しく、磁気テープそのものは業務用のストレージバックアップ用途として富士フィルムなどが製造していますが、音楽用途については既に技術的に衰退していますね。

B’zの楽曲としては、そこまでもB’zっぽいくて大好きなのですが、まるでオーディオに興味のない友達が安物ラジカセで適当に録音したテープを聞かされているような音質(例えが分かりづらいw)なのが残念でした。

カセットテープは本来こんな音質ではない

今若い人にフィルムカメラ、レコード、カセットテープが注目されていますが、これらが全盛期だった時代の品質よりだいぶ劣るものが現在流通しています。

フィルムは、なんだかレトロな絵を得られると人気のようですし、意図的にカラーバランスを崩したフィルムも出ている始末ですが、本来は今のデジタル写真と同様、現実に忠実に、きれいに撮れるように進歩してきた歴史があります。本来カラーフィルムなら、正確な色調が求められるはずが、今やちょっと変わった色調のためにフィルムが映(ばえ)アイテムとして用いられているケースもあります。

カセットテープも、こもった音がレトロな感じを出しているのかもしれませんが、本来はレコードやCDを録音しても、それに近い音質が得られるよう技術者が苦心してきた歴史があります。カセットテープの音質のピークは90年代でしょう。ハイポジションやメタルポジションのテープも大量生産で安価になり、レンタルCDショップの登場と共に、80~90年代の音楽再生を支えてきたメディアです。

せっかくカセットテープの話題を書いたので、またカセットテープについてはボチボチ書いていこうかなと思います。
まずはカセットデッキのベルト交換しないとね。

PIONEERの廉価カセットデッキ T-03SRを数年ぶりに動かしてみた

自分が高校生の時に購入したPIONEERのカセットデッキ、T-03SR。購入当時、既にDATとMDも持っていたので、カセットデッキには金をかけたくない(高校生ですしね)ということと、ノイズリダクションの最先端だったDOLBY S NRを搭載したカセットデッキでは最安値というのもあって、あえてこれを選択しました。

メカなんかは、同じ廉価機でもSONYのほうが優れていたように思います。もうちょっとお金を出せば3HEAD機(再生と録音が独立ヘッド)も当時は手に入りましたが、120分テープでラジオの録音もしたく、オートリバースの2HEADデッキにしました。

PIONEER T-03SRを久しぶりに動かしてみた

数年ぶりに動作させてみましたが、再生は問題なく出来ていますね。
メカ物は動かさないと、特に回転系は固着したり、ゴム類が劣化したり、ベルトが伸びてしまいますから。適度にメンテしていたので、キャプスタンもピンチローラーもきれいなままで良かったです。

TDKのメタルテープ、MAに録音した楽曲を再生してみましたが、音の鮮鋭度は当時のままです。ダイナミックレンジや解像感は、廉価機故に高級機ほどの緻密さはないもの、安物メカの割に、四半世紀経過してなお、それなりに安定して再生できているのは、さすが国産デッキです。そう、廉価機でもMADE IN JAPANなんですよねこのデッキ。

さて再生は問題ありませんが、早送りと巻き戻しは…やはりベルトが伸びているのか、速度が不安定でした。

カウンターの動きが不安定=早送り・巻き戻しの速度が不安定ということです

カウンターを見ると、早送りはかなり遅く、巻き戻しは最初不安定でしたが、後半スピードが出てきました。
これは明らかにベルトが滑っていますね。今度開けて交換してみます。

さて数年ぶりにカセットデッキを動かしたのは理由がありまして。
次回に続きます。