なぜ突如新品が出てきたの?AI AF Nikkor 50mm f/1.8Dとはどんなレンズ?

2026年7月、」シリアルナンバーが2020年最後に製造されたものではない370xxxxのAI AF Nikkor 50mm f/1.8Dが大量にフジヤカメラに入荷。
運よく購入できたわけですが、NikonのFマントでも最も安価な部類に入る本レンズ、AFレンズでも僅か155gとコンパクトなレンズで、光学設計自体は70年代末から長きにわたり使われてきた伝統のレンズでもあります。

大きなボディに小さなレンズ、ということでバッテリグリップを着けたD850に装着すると、これはこれで良いたたずまいに見えます。


こういうコンパクトなレンズはFマウントの真骨頂、小さなマウントで精一杯頑張っている感じがしますね。

マニュアルフォーカスのAI Nikkor時代から長く販売されたレンズ

AI AF Nikkor 50mm f/1.8Dのご先祖にあたるにAI Nikkor 50mm f/1.8が1978年に発売、そして廉価ラインアップのシリーズE用のNikkor銘ではないレンズとして絞りリングの通称”カニ爪”機構を省略したものが1979年にNikon Lens Series E 50mm F1.8として発売、同じ光学系のままマウントをSタイプ化、コーティングを改めたものがAI Nikkor 50mm f/1.8Sとして1980年に発売されました。
Sタイプもカニ爪は省略されていて、コストダウンが図られていたようです。なお、発売当時はカニ爪付絞りリングに交換することもできました。
レンズ構成は5群6枚のガウスタイプ、70年代に生まれた光学系はそのままに、1986年にAI AF Nikkor 50mm f/1.8SとしてAFレンズ化し、1990年に外装を一新したAI AF Nikkor 50mm f/1.8S(New)が長らく販売されていました。

90年代、NikonはAFレンズに距離エンコーダを組み込み、フォーカスの位置(被写体の距離)をカメラボディ側に伝達することで、測光精度と調光精度を高めるDタイプレンズと共にそれに対応するボディ(F90など)を発売。
多くのレンズはSタイプから距離エンコーダ内蔵のDタイプにマイナーチェンジしたのですが、中には長い間Dタイプ化されずに放置されているレンズもあり、例えばAi AF Zoom Nikkor 28-85mm F3.5-4.5SはDタイプ化されずに1999年には消えてしましましたし、AI AF ED Nikkor 300mm F4S(IF)なんかもDタイプ化されず2000年に販売終了しました。
AF化し、外装がチェンジされたAI AF Nikkor 50mm f/1.8Sも長らくSタイプのままでした。
90年代後半にNikonの一眼レフF90Xを手に入れ、レンズのカタログを穴が開くほど見ていたYamaroですが、当時ほぼNikonのAFレンズの末尾にDと記載されていたのに、わずかにSのままのレンズが残されているのを不思議に思っていました。
まあ元々単価の安い50mm f/1.8なので、距離エンコーダを入れる改良は後回しにされたのでしょうね。

そして21世紀に入った2002年に、突如AI AF Nikkor 50mm f/1.8DへとDタイプ化されました。なぜこの期に及んでDタイプ化されたのかが不明ですが、この当時、RoHS指令がらみでのレンズの硝材変更など小改良が入った際に、ついでにエンコーダを入れてDタイプ化したのかもしれませんね。また生産も日本から中国に変更されています。

最終型となったDタイプでは、コーティングはスーパーインテグレーテッドコーティングSICも採用されていますし(Sタイプ時代から採用されていたようです)、硝材も恐らくは有害6物質を含有しないRoHS指令対応になった可能性があり、光学設計は同一ながら、これが最終進化系と言えます。

光学系の解説などはニッコール千夜一夜物語のAI Nikkor 50mm f/1.8Sの記事をご確認ください。

長期在庫? 2024年以降に新規製造された?

公式には2020年に旧製品リストに入ったAI AF Nikkor 50mm f/1.8D、ですが今回入荷したシリアルナンバー370xxxxはいつ頃製造されたものなのか?

まずは筐体に表記されている各種マーキングの中にUKCAマーキングが入っています。UKCAはUnited Kingdom Conformity Assessed markingの意味で、元々欧州のCEマーキングに対し、イギリスがEU離脱したため、イギリス内で販売するにはCEマーキング以外にUKCAマーキングの表示義務を2021年より施行されました。
2020年に発売終了した製品の長期在庫だった場合、このUKCAマーキングは入っていないのではないかと思います
2023年8月以降、イギリスではCEマーキングを無期限認可したため、UKCAマーキングではなくCEマーキングのみの表示でも販売可能となりました。
このマーキングがあるということは、少なくとも製造は2020年以降(2021年以降に販売するために2020年製造でもマーキングを入れていた可能性あり)、そして表示義務は現在事実上無くなったので、最近製造したとしたらこのマーキングは入れないはず。でも印刷コストの関係であえて残しているかもしれませんが。

ササッと中古やオークションで画像を見た限り、最後の方に製造された個体にはCEマーキング、チャイナRoHSマークは入っていますが、UKCAマーキングの入った個体は観測できませんでした。
元々2020年にAFモータ非内蔵AFレンズはまとめてディスコンになっていて、本レンズもその対象だったので、最後の最後にUKCAマーキングを入れるとかはちょっと考えられないかなと。

保証書の住所が2024年7月以降のNikon本社の住所になっています。もっとも保証書は後から差し替えも出来るので、製造自体が2024年以降であるとは必ずしも言い切れないです。ただ、差し替えてまで売るのかなと言う気がしないでもないですが。

そしてフジヤカメラでは、執筆時点の2026年7月18日現在、購入可能ですが「お取り寄せ」となっていて、「8月上旬以降のお届け」としています。

2026年7月18日時点で注文できるが、8月上旬以降のお届けとなっている

元々7月14日に発売開始した時点で、10本20本レベルではなく、桁違いに入荷したとXでポストしていました。

個数は明言していないものの、桁違いという言葉が出ていること、Xだけでも相当数購入したとの報告が上がっているため、100本以上入荷した可能性が高いです。
同梱の保証書が2024年以降のニコン本社住所で、間違いなくニコンから2024年以降に出荷されたもの(製造ではなく出荷ですね)であることがわかります。

そしてフジヤカメラがお取り寄せとしているため、実はまだ製造されていて、中国から日本への輸出待ちである可能性もあります。
ちなみにこのレンズの製造は、Made in Chinaですが、ニコン自体は中国の自社製造拠点を2017年に閉鎖しているため、委託先であるTamronの中国工場で製造されたものでしょうね。

以上を踏まえると、やはり2024年以降何らかの理由で製造された可能性があると考えられますし、実はまだ生産されている可能性もあります。

ただ、なぜフジヤカメラだけに入荷しているのか、公式には既にディスコンになって6年経ったものなので、販売ルートを絞った可能性はありそうですね。

ではなぜディスコンになったのに再生産されたのか?

憶測の域を出ないので話半分に読んでください。再生産された可能性として、こんな想像をしてみました。

  • 一般向けは2020年に販売を終了したが、組込み機器などに搭載するためのBtoB向け(業務用産業用向け)に継続して製造は続けられていて、それも需要がなくなりつつあるため最終ロットを市場に流した
  • 官製需要のためどうしても再生産する必要があり、コストを抑えるため必要数以上の一定数を製造し、一般市場に流した

一般販売を2020年で終了している以上、一般向けだけに再生産をする可能性は極めて低く、BtoB向け主体の製造としか考えられないのですよね。しかもあえて古い光学系の本レンズを使うというということは、これでなければならない理由があるんでしょう。新しいレンズのためにシステム全体設計を変えられないとかね…。

AI AF Nikkor 50mm f/1.8Dで撮ってみた

まずは屋内撮影。D850で最短撮影距離付近で撮ってみました。

HPに「近距離性能に優れ、接写リングやリバースリングを併用してのクローズアップ撮影も楽しめます。」とあり
最短撮影距離付近の描写も売りの一つのようです。ただ、最短撮影距離付近の後ボケはニッコール千夜一夜物語で「このレンズでは、近距離になるに従って外方性コマ収差が発生する」とあるように、絞り開放の後ボケは少し不自然な印象がありますね。

逆に前ボケは好みです。

おおお、このフワフワ感がたまらないね。接写リング、リバースリング撮影も試してみたいですね。
こういう遊びは機械式の絞りリング付きレンズの特権ですから。


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