NikonはDタイプレンズやMFレンズを販売終了にした際に、多くのレンズアクセサリ類も販売終了になってしまいました。 その中で数少ない現行品(2022年6月執筆時点)がアダプターリングBR-2A です。これは通称リバースアダプタとも呼ばれ、レンズをカメラに逆付けするためのアダプタ です。
そして、販売終了してしまったBR-5リング は、BR-2Aリングにフィルタ径62mmのレンズを取り付けるアダプタになります。
リバースリング? ナニソレ? ナンノコッチャ?となる前に、写真でご紹介しましょう。
アダプターリングBR-2AとBR-5 AF Nikkor 20mm f/2.8D
AI AF Nikkor 20mm f/2.8D も、多くのアクセサリと一緒に販売終了となっているレンズです。この3つを使って遊んでみます。特にBR-5リングは、手持ちのレンズではこのレンズのためだけに持っているようなもので、こういう遊びのために、未だにAI AF Nikkor 20mm f/2.8Dを修理してまで使っています 。
AF Nikkor 20mmのフィルタ枠にBR-5リングを装着
BR-5リングにBR-2Aを装着
非常に精巧な作り
まずはBR-5リングを、AF Nikkor 20mmのフィルタ枠に取り付けます。と言うのも、BR-2Aリングは、フィルタ径52mmのレンズを直接取り付けできますが、AF Nikkor 20mmのフィルタ径は62mmなので、直接取り付けできません。そこで、BR-5リングを使うことで、フィルタ径を52mmに変換しします。 52mmに変換したら、BR-2Aをねじ込みます。すると、レンズの前玉にFマウントができるわけです。 このBR-2Aは、精巧で美しい墨入れ刻印が入っているにも関わらず、定価はたったの2,200円です。多くの接写用アクセサリが廃番になる中、このアクセサリだけ作り続ける理由もないので、恐らくは在庫限りなのだと思っています。ですから、買うなら今のうちです 。
実際には先にカメラ側にBR-2Aリングを付けたほうが装着しやすい
カメラにAF Nikkor 20mmを逆付けした図
BR-2Aリングは、先にレンズに付けるよりも、ボディ側に装着したほうが取り付けしやすいです。 実際にリバースしてレンズを取り付けた写真が右上です。本来マウント側になる後玉が前を向いているのがわかります。 さてこんなことをするメリットって何なのでしょう?
広角レンズをリバースして取り付けるとマクロ撮影が可能となる
そういうことなのです。レンズをリバースして取り付けると、等倍を超えるようなマクロ撮影が可能となります。特に広角レンズになればなるほど、撮影倍率は上がります。 AI AF Nikkor 20mm f/2.8Dの場合、リバースすることで、一般的なマクロレンズの等倍(1倍)を超える、3.4倍もの倍率で撮影可能となるのです。
リバースして蕾を撮影。ワーキングディスタンスもそれなりに稼げる。
まずAI AF Nikkor 20mm f/2.8Dをそのまま装着して、最短撮影距離25cmで撮影してみました。この時の撮影倍率は0.12倍です。
AI AF Nikkor 20mm f/2.8Dの通常撮影の最短撮影距離ではこんな感じ
広角レンズゆえ、寄ったところで限界がありますね。主体が何だかよくわからない写真です。
次に、AF-S Micro NIKKOR 60mm f/2.8G ED で撮影してみました。
AF-S Micro NIKKOR 60mm f/2.8G EDで等倍撮影
等倍だと、いきなりここまで接写できるようになりました。一般にはこれでも十分接写できていますが、人間欲張りなもので、更に寄って撮影してみたくなるものです。 ここで広角レンズをリバースして撮影した写真をお見せしましょう。
AI AF Nikkor 20mm f/2.8D + BR-2A +BR-5で3.4倍撮影 絞りf11
どうでしょう? ここまで接写が可能となります。撮影倍率3.4倍は伊達じゃないですね。 なお、ここまで接写すると、絞り開放では被写界深度が浅くなりすぎるため、上の写真はf11に絞っています。一眼レフでは、光学ファインダ上ではかなり真っ暗になりますが、ライブビューではピント合わせできるくらいには明るく表示できます。もちろんミラーレスなら、何ら問題なく見えるでしょう。 この撮影では、スピードライトも用いていますが、かなり離した場所の横からワイヤレス発光させています。 ここではそうしていませんが、背景を暗くして被写体だけを明るくするには、シャッタースピードを上げて絞り込むのが良いでしょう。
こういった撮影は、絞りリングで絞り設定ができるからこそで、Gタイプ以降の絞りリングレスのレンズでは、絞り設定ができなくなりました。 もっとも、Gタイプレンズであれば、絞り連動レバーがマウント側に残されているので、市販のGタイプ用レンズアダプタを噛ませて、絞りを設定する、あるいはレバーを手で動かして絞りを設定することもできなくはないです。 完全電子マウント化したEタイプレンズやミラーレス用の多くのレンズでは、機械的な絞り設定ができなくなったため、こうしたリバース遊びは事実上できません(絞りを制御できないだけで、撮影自体はできなくはないけど)。
どんなに電子化されても、1,2本はこうしたマニュアル、あるいはAFでも古いレンズがあれば、色々遊べるので、興味があればぜひ。
AI AF Nikkor 20mm f/2.8D + BR-2A +BR-5で3.4倍撮影 絞りf22
上は更に絞り込んだf22で、それでもこれだけ被写界深度は浅いのです。これは自然光のみで撮ってみました。
中間リングを使ったマクロ撮影も気軽にできますが、広角レンズをリバースさせる、と言うのも一つの手法です。
BR-2Aリングの豆知識
中古で型番末尾にAがつかないBR-2があります。現行のBR-2Aの違いは、前者が電子接点のないMF一眼レフ用(というよりBR-2発売当時はそれが当たり前でした)となっているのに対し、BR-2Aは電子接点を持つ一眼レフ用(電子接点のない一眼レフでも使用可能)となっています。 古いBR-2を電子接点を持つ一眼レフ(AF一眼レフ全般及びF-601M)に装着すると、電子接点と干渉し破損につながる可能性があるため、必ずBR-2Aを使用してください。
また、FTZ /FTZ II とBR-2Aの装着は可能なので、一眼レフだけでなく、Zマウントミラーレス、あるいは他社製ミラーレスにFマウントアダプタ経由でも使用可能です。
以下は、BR-2Aリングを使用してリバース取付した場合の、Fマウントニッコールレンズの撮影倍率となります。 なお、BR-2A単体の場合、フィルタ径は52mmのレンズ、BR-5リング併用の場合はフィルタ径62mmのレンズが対応します。 18mm以下の広角レンズ、およびGタイプ、Eタイプレンズは非対応となります。 実際には、取付さえ何とかすればできなくはないですが、あまり実用的ではないでしょう。
下記の表を見ると、リバース取付で最も撮影倍率が高いのは、AI AF Nikkor 20mm f/2.8D/SとAI Nikkor 20mm f/2.8Sの3.4倍となります。いずれもAFかMFかの違いはありますが、基本的に同じ光学系のレンズです。 また、ズームレンズの広角の方が、同じ焦点距離の単焦点レンズより高倍率になることが多いようです。 こういったリバース取付のマクロ遊びをするなら、高倍率撮影を楽しめる、Nikkor 20mm f/2.8が最適と言えますね。
レンズ名 BR-5リング 併用 撮影倍率 AI AF Nikkor 20mm f/2.8D/S 〇 3.4X AI AF Nikkor 24mm f/2.8D/S 2.5X AI AF Nikkor 28mm f/2.8D/S 2.0X AI AF Nikkor 35mm f/2D/S 1.4X AI AF Nikkor 50mm f/1.4D/S 1/1.1X AI AF Nikkor 50mm f/1.8S(New) 1/1.4X AI AF Micro-Nikkor 55mm f/2.8S 〇 1.2X AI AF Micro-Nikkor 60mm f/2.8D/S 〇 1/1.2X AI AF Zoom-Nikkor 24-50mm f/3.3-4.5D/S 〇 3.0-1.0X AI AF Zoom-Nikkor 28-70mm f/3.5-4.5D/S 2.2-1/5.6X AI AF Zoom-Nikkor 28-85mm f/3.5-4.5S(New) 〇 3.0-1/27.5X AI AF Zoom-Nikkor 28-105mm f/3.5-4.5D(IF) 〇 2.8-1/1.8X AI AF Zoom-Nikkor 35-70mm f/3.3-4.5S(New) 2.1-1/6.1X AI AF Zoom-Nikkor 35-80mm f/4-5.6D 1.5-1/1.4X AI AF Zoom-Nikkor 35-70mm f/2.8D/S 〇 2.3-1/1.9X AI AF Zoom-Nikkor 35-105mm f/3.5-4.5D(IF) 1.8-1/33.62X AI AF Zoom-Nikkor 35-105mm f/3.5-4.5S 1.8-1/6.1X AI AF Zoom-Nikkor 35-135mm f/3.5-4.5S(New) 〇 2.2-31.7X AI Nikkor 20mm f/2.8S 〇 3.4X AI Nikkor 24mm f/2S 2.6X AI Nikkor 24mm f/2.8S 2.5X AI Nikkor 28mm f/2S 2.2X AI Nikkor 28mm f/2.8S 2.1X AI Nikkor 35mm f/1.4S 1.8X AI Nikkor 35mm f/2S 1.6X AI Nikkor 35mm f/2.8S 1.5X PC-Nikkor 35mm f/2.8 1.6X AI Nikkor 50mm f/1.2S 1.1X AI Nikkor 50mm f/1.4S 1/1.1X AI Nikkor 50mm f/1.8S 1/2X AI Micro-Nikkor 55mm f/2.8S 1/1.1X AI Noct Nikkor 58mm f/1.2S 1/1.2X AI Zoom-Nikkor 25-70mm f/3.3-4.5S 2.1-1/6.1X AI Zoom-Nikkor 28-85mm f/3.5-4.5S 〇 2.9-1/35.8X AI Zooom-Nikkor 35-105mm f/3.5-4.5S 1.8-1/6X AI Zoom-Nikkor 35-135mm f/3.5-4.5S 〇 2.2-1/14.9X AI Zoom-Nikkor 35-200mm f/3.5-4.5S 〇 2.2-1/∞X
BR-2A取付時の各レンズの撮影倍率表
さて、この撮影倍率は、BR-2Aリング単体使用の場合ですが、中間リングやベローズを介すことで、さらなる高倍率撮影も可能です。 それについてはまた機会を見て試してみたいと思います。