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普通の広角レンズとしても、アオリ撮影も優秀なPC-Nikkor 28mm F3.5

Nikonは2020年、MFレンズ、Dタイプレンズ、一部のDXレンズの生産を終了させましたが、そうなると何故か欲しくなってしまうのは、ちょっとコレクターになってきているのか?

まだまだ知らないFマウントレンズはたくさんあり、Zマウントの導入はまだ先になりそう。もちろん、Zマウント機を導入すれば、Fマウントも使えるわけですが、一眼レフで使いたいのですよね…。何故なんだか。

今回は、アオリ撮影可能なMF時代のレンズ、PC-Nikkor 28mm F3.5です。

Nikon D850 + PC-Nikkor 28mm F3.5

ついつい見上げて撮りたくなるレンズ

PC-NIKKORは、アオリ撮影可能なレンズです。現行のPCレンズでは、電子マウント化され、電磁絞り対応となっています。ただし、構造上、現行品も全てMFレンズです。

PC 28mmは、フィルム時代の1981年発売のレンズで、2005年頃まで販売されていた、息の長いレンズの1つでした。
私の持っている個体は、中古ですがかなり程度はよく、製造番号的に90年代の製造と思われ、スーパーインテグレーテッドコーティングSIC)化されたレンズかもしれません。

このレンズは、現行のPCレンズのようにピント面と撮像面の角度を変えられるティルトは出来ず、シフトのみです。が、もちろんこれらアオリ機構を使わなければ、普通に広角レンズとしても使用できます。

アオリを使用せず撮影した写真がこちら。

太陽光を入れても、フレアやゴーストが出にくい、80年代設計のレンズとしては、なかなか優秀です。恐らくSIC化されたレンズではないか? と思うのも、この優秀な逆光耐性からです。

絞りは1枚めと3枚目は開放、2枚めのみf8です。
電磁絞り採用以前のPCレンズは、絞りはFマウントの構造的にメカリンクで絞り操作できないため、プリセット絞りとなり、一般の写真レンズのような自動絞り(シャッターを切る瞬間のみ設定した絞りに絞り込まれる)には非対応です。
このため、絞りを絞るには、予めピントを開放で合わせて、設定した絞りに絞りリングを回してからの撮影となります。これが結構面倒で、絞り開放で撮ることも多いのですが、このレンズは解像力は開放、コントラストとも高く、やや線は太いながらもしっかりとした描写です。
PCレンズは、シフト機構のためイメージサークルが一般のレンズより大きく、中判レンズ並にイメージサークルを確保しているようですが、シフトさせなければ、その美味しい中心部を使うことになるため、広角レンズとしても、画像周辺まで優秀な解像力を確保できるわけです。

シフト機構を使ってみる

わかりやすい作例は、ビルディングのような直線基調の建物ですが、今回は鉄塔です。

Nikon D850 + PC-Nikkor 28mmF3.5(シフト使用)

シフトを使用した作例。シフトレンズの場合、直線をきちんと出したければ、カメラを水平に構え(D850には水準器があるので、水平出しは簡単)、シフトノブを回して被写体が入るように調整します。

水平にカメラを構えた場合、シフトなしでは鉄塔の上に部分が欠けてしまいますが、シフトすることで、カメラを上に向けたときのように撮影でき、かつ、水平に構えたままなので直線の歪みを少なく出来ます。
流石にシフトを大きく使うと、レンズ周辺を使うことになるため、作例では周辺減光が写真上の方で発生しているのがわかります。
レンズのイメージサークルの上の方を使っているからですね。

次の作例は、シフトのさせ方による変化を見てみましょう。色調が変わっているのはご愛嬌。シフトにより色味も変わってくるので、カメラのAWBに影響あるようです。今回はRAWではなくJPG撮って出しのため、そのまま使っています。

「シフト逆方向」は、カメラを被写体より更に上に向けて、逆側にシフトした撮影で、通常の広角レンズよりさらに歪を発生させることで、超広角レンズで撮ったような遠近感(の強調を行っています。写真の下側隅が暗くなっているのが、レンズの周辺減光で、逆シフトしたことにより、イメージサークルの下側を使っているからですね。

「シフト正方向」では、カメラを水平近くに構えで、上方向にシフトしています。これにより、遠近感を抑えて、被写体の歪を少なくしています。

どちらの使い方もでき、もちろんシフトさせず通常の28mm広角レンズとしても使える、使いこなしは少々難しいけど、色々と遊べるレンズです。
現行のPCレンズは、いずれも30万円前後する高価なレンズですが、中古では古いPCレンズも多く出回っています。以前はPC-Nikkor 35mmも持っていましたが、PCレンズとしては画角が中途半端で手放しました。28mmなら、広角レンズとしても使いやすい画角、かつシフトの効果もわかりやすいレンズと思います。

ニコンミュージアムで企画展 一ノ瀬泰造「戦場の真実、硝煙の中に生きる人々」を見てきた

COVID-19の影響でしばらく閉館していたニコンミュージアムが、6月30日より再開されました。
ただし、しばらくの間は入館予約制となり、入館3日前までに予約をしないと入場できません。
ということで、先週予約をし、仕事もお休みを取って品川へ行ってきました。

ニコン赤外線CCDカメラ サーマルビジョン LAIRD 3Aがお出迎え

入口では、予約時間に合わせてスタッフが待機、近づくと本名で呼ばれてびっくりしましたが、予約時に本名入れているからか…。同じ時間に入館したもう1人は海外の方でした。

入口には、最近良く見かけるようになったサーマルカメラが設置されていましたが、これがなんと1996年にNikonが販売した赤外線CCDカメラ、LAIRD 3Aでした。既に四半世紀近く前に、Nikonはこのようなものを販売していたようです。残念ながら、公式を含めて、日本語でのこの製品の情報はほとんど無く、英語のページに紹介がありました。
公式ページでは、2008年に、アフターサービス終了の告知がされています。
とは言え、こうして2020年にもちゃんと実用として稼働させているところが、博物館として素晴らしいことですね。

タッチパネルはタッチペンで操作

タッチパネルは直接手で触れないよう、タッチペンを入口で渡されました。

ニコンキャンディーのプレゼント

今だけ限定? 入館時のプレゼントで、ニコンキャンディーを頂きました。おしゃれなドロップス缶ですね。紙袋は、別途ニコンようかんを買った際に入れてもらったものです。ニコンようかんも、ミュージアム限定で復活しているようですね。

一ノ瀬泰造の写真は若さにあふれていた

一ノ瀬泰造氏 ※NikonのHPより引用

企画展 一ノ瀬泰造「戦場の真実、硝煙の中に生きる人々」は、COVID-19の影響で長期間ミュージアムが閉館していたため、公開が延長されて、9月26日(土)までの開催となっています。

バングラデシュ、ベトナム、カンボジアの激動地帯を撮影し、26歳の若さでこの世を去った報道写真家の、純粋かつ若々しさを感じさせる写真が印象的でした。
友人や家族に当てた手紙も公開されていましたが、防水カメラのニコノスが好きだったと思わせる文章もありました。

すべての展示物は撮影NGでしたが、被弾したNikon Fがひときわ印象的でした。頑丈なカメラが、あんなにひしゃげるものなんですね。

ミュージアムの常設展示も撮影

常設展示は、手で触れられる実演機材は撤去され、観覧のみの展示となっていましたが、基本的には以前と大きく変わるところはありません。

絵になるんですよねぇ、ここの常設展示品たち。
PC-Nikkor 28mm F3.5で撮影しました。

今回は滞在時間が1時間以内ということで、あまりじっくりは見れませんでしたが、久しぶりに行けて楽しかったな。

PC-Nikkor 28mm用にHAKUBAのフードを買ってみた

レンズを仕入れたら、フードは必ず手に入れたい。

PC-Nikkor 28mm F3.5の純正フードの型式は、HN-9という型番になっています。レンズが廃番になっても、比較的レンズフードは廃番にせずに現行で買えたりするのがNikonの偉いところですが、残念ながらHN-9は廃番になってしまっています。

このHN-9はフィルタ径が72mmのねじ込み式となっていて、適合するレンズは

  • Nikkor-UD Auto 20mm F3.5
  • PC-Nikkor 28mm F4
  • PC-Nikkor 28mm F3.5

となっています。最後まで発売されていたPC-Nikkor 28mm F3.5が販売終了してから十数年が経過していますから、致し方ないところです。

ではヤフオクなど中古で探してみると、これがなんとびっくりのお値段! ヤフオクも安いものでも5千円台からです。

レンズフード、昔はNikonは別売りだったので、レンズを買っても必ずしも、みんながみんなフードを買っていたわけではなく、レンズより流通量は少ない。ましてバラで売るってことも少ないですし、元々が流通量の少ないレンズですしね。

というわけで、代用として買ってみたのがこちら。

HAKUBA ワイドメタルレンズフード 72mm

HAKUBAのワイドメタルレンズフードで、28mmレンズに適合ということで買ってみました。千円ちょいです。

早速装着してみましょう。

おおっ、まるでNikon純正かのような塗装の質感です。これ、HAKUBAのロゴが入っていなければ、純正品みたいですね。ウンウン、これはいいですね。ところが、このレンズフードには、落とし穴が2つあったのです…。

レンズキャップが着けられない

レンズキャップは取付不可(写真は載せているだけ)

はい、レンズキャップ、取り付けできません。

一般にねじ込み式フードの場合、フードを装着した状態でもフード前面にもネジがあるので、一般的なフィルタ枠を使うレンズキャップがそのまま使えるものが多いのですが、本フードはネジ枠がありませんでした…。

シフトするとケラれます

最大限シフトするとご覧の通りケラれる

考えてみたら、PC-Nikkorはシフトレンズ、20mmレンズと共通のフードなのだから、28mm用のフード、シフトしなければ問題ないですが、シフトするとこんな感じでケラれます。シフトするときだけ外す…んー面倒ですな。

サード品でより広角用のフード、探すしかないないな。

PC-Nikkor 28mm F3.5の遠景テスト

【製品画像】PC Nikkor 28mm F3.5
PC Nikkor 28mm F3.5

PC-Nikkor 35mm F2.8(New)から置き換えたPC-Nikkor 28mm F3.5ですが、今回これを遠景撮影テストしてみました。

個人的に、シフトレンズとしては画角が中途半端と感じた35mmに対し、パースが付きやすい広角で、シフト機構は真価を発揮するのかなと思います。そういや現行のPCレンズ、広角は19mm24mmですからね。

シフトせずそのまま撮影、シフトしての撮影、絞りは開放とf11で比較してみました。RAWで撮影、ホワイトバランスは晴天に固定、明るはさなるべく揃えています。
三脚を使用せず横着して撮ったので、微妙にずれていますが、そこはご勘弁を。

シフトせず撮影

1980年代に発売開始された設計の古いレンズですが、さすがPCレンズ、元々シフトさせることが前提ですから、イメージサークルが極めて大きいため、シフトさせない状態では余裕があります。

まず、絞り開放ですが、中央は解像力が高いですし、色乗りもよい。
左下の等倍切り抜きの画像を見てもらうと、一見ぼやっとしていますが、これは収差による影響で、ピントの芯自体は出ています。ゴルフ練習場のネット用の鉄塔も、線がきちんと描けているのがわかります。絵的には、開放から十分使えるレンズだと思います。

一方、f11まで絞ると、隅までしっかりコントラストが出てきます。よりカリッとした描写になりますが、やや硬めの描写とも言えます。
個人的には、開放のコマ収差が若干出ている描写も嫌いではないですけどね。つまり、このレンズはシフトさせずに使うということは、レンズの美味しい部分を使っているという意味で、絞り開放から安心して使えるレンズです。

普段の撮影は、絞り開放だけで十分よい描写が得られそうです。
フルマニュアルのPCレンズは、絞りは実絞り、プリセット絞りとなり、絞って撮る場合、絞るほどファインダも暗くなります(一眼レフの場合)。これがミラーレスなら、あるいは一眼レフでもライブビューなら、ある程度絞っても同じ明るさになるので、利便性は高いでしょう。マニュアルレンズは、今の時代になって再び脚光を浴びているのもうなずけますね。

ところで、マニュアルのPC-Nikkorの場合、ボディに絞り値は伝達できないため、ボディ側でレンズの焦点距離と開放f値を指定しても、ボディは常に絞り開放と認識します。Exifには実絞り値は反映されないのでご注意を。

シフトして撮影

上方にシフトしてみました。

まず全体としては、シフトしたことにより、周辺減光低下、上方にシフトなので、作例では画像の上方が減光しているのがわかります。これを逆手に取って、部分NDフィルタにように撮ることも可能でしょう。

左下の等倍切り抜きでは、ゴルフ練習場の鉄塔が真っ直ぐに立っているのがわかります。これがシフトレンズの効果です。シフトさせないで水平にすると、本当は画面下にはご近所さんが写ってしまうところです。
そして、ここでも絞りの違いは、主にコマ収差の出方とコントラストので方で差が出てきます。

高画素なD850でここまでわかりますが、1600~2400万画素クラスであれば、この作例の撮り方だと、ここまでの違いは出ないでしょうか?


というわけで、個人的な見解としては、絞り開放から安心して使えるレンズ、ちょっと絞ればコントラストも高く、十分高い解像力を得られる、しかも逆光にも結構強い、という評価になります。

プリセット絞りが面倒なマニュアルPCレンズですが、絞り開放でガンガン撮るなら、普通のマニュアルレンズと変わらないですかね。

昔は28mmの画角な苦手でしたが、最近は慣れてきたというか、この画角も苦手ではなくなってきました。ピントも広角なのでそこまでシビアでもないですし、積極的にスナップで持ち出したいですね。