1986年の竣工以来、長年護衛艦としての任務を全うし、その後5年間練習艦となっていた「はたかぜ」が2025年3月17日除籍されました。
練習艦時代を含め、自衛艦としての運用期間は約39年となり、これまでのどの自衛艦よりも長く運用された艦艇となりました。
最後のターターシステム搭載艦
はたかぜ型護衛艦は、艦隊防空のためのスタンダードミサイルSM-1MRを搭載するDDG(ミサイル護衛艦)で、元々は4隻建造する計画でしたが、最終的には2隻の建造に留まりました。というのも、計画時点で画期的な防空戦闘システムであるイージスシステムの導入の算段がついたことから、飽和攻撃への対処限界に達しつつあったターターDシステム搭載艦をこれ以上導入しないという方針になりました。
今回退役する「はたかぜ」、そして1988年竣工の2番艦「しまかぜ」が今後除籍されると、自衛隊からはターターシステム搭載艦は姿を消すことになります。
「はたかぜ」型護衛艦は、ターターDシステムを搭載した護衛艦では初めて、スタンダード対空ミサイルの単装発射機Mk.13 Mod.4を艦橋や主砲よりも前に搭載し、前方射界を重視した設計で、これまでのターターシステム搭載艦よりも艦橋構造は後退しています。
艦橋前方艦首側からMk.13発射機、射界確保のため1階層アップした構造物上に5インチ速射砲、そして艦橋構造物手前にアスロック発射機を搭載していて、これがほかの護衛艦にない独特の重厚感のあるシルエットを形成しています。
また、対艦ミサイルハープーンは従来艦がスタンダードミサイルと併用でMk.13からの発射となっていたのを、専用発射筒とした他、新造時からファランクスCIWSを2基搭載しています。


エンジンはミサイル護衛艦では初めてオールガスタービンとなり、また自衛隊ではガスタービン艦初のCOGAG(COmbined Gas turbine And Gas turbine)の構成で、しかも巡行機と増速機のエンジンの種類が異なる異機種混合の構成となっているのも特徴です。
7年後にはアメリカ海軍以外では初めてとなる高度な防空システムを搭載したイージス艦「こんごう」が導入されたため、「はたかぜ」型は新造時からわずか7年で旧式となってしまい、その後ターターシステムを搭載したアメリカ艦のようにNTU改修など近代化改装を受けることなく長年運用されてきました。この辺りはイージス艦導入に費用が回されたのと、20世紀末以降の不況もあって、予算的も実現が難しかったのでしょうし、ここまで長く運用されることも想定外だったからでしょうね。
搭載しているスタンダード対空ミサイルSM-1MRも陳腐化し、練習艦となってからは防空任務に就くこともないので、実際にスタンダードミサイルを搭載していたかも不明ですが、今やこのシステムをそのまま使用する海軍も少なくなったため、実際に運用能力維持できていたのかは不明です。
ともあれ、恐らく当初想定していた艦齢よりも長く運用され、役目を終えたことは感慨深いものがありますね。
残念ながら、練習艦となってからは呉を母港としていたため、その間コロナ禍もあって、ついに練習艦の時の姿を見ることは叶いませんでした。




残る同型艦は練習艦「しまかぜ」となりますが、こちらもあと1,2年で恐らく退役となるでしょう。
練習艦としての代替は今のところ決まっていないようです。今後は練習艦を割り当てず、練習航海は護衛艦の中から割り当てる運用に変更するのでしょうか?
3月17日に練習艦隊が近海練習航海を終えて呉に戻ったそうですが、このときの艦艇が、掃海母艦「うらが」、護衛艦「てるづき」、護衛艦「うみぎり」、練習艦「しまかぜ」でした。
護衛艦が練習航海にあてがわれるのはよくあることですが、掃海母艦が練習艦隊にあてがわれるとは…。
練習艦「かしま」はメンテナンス中かな?
順当に行くと、「はたかぜ」の代替艦は、護衛艦「あさぎり」型のいずれかになるとは思いますが、さてどうなるのでしょうね?
2014年に当時護衛艦だった「はたかぜ」を見学した様子も以下のブログに記載していますので、合わせてご覧いただけると幸いです