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2本の高倍率ズーム AF-S 18-200mm II型とTamron 18-270mmを比較してみた2

前回の記事では、遠景を試したので、今回は近接撮影してみました。

高倍率ズームの歴史は、近接撮影との戦いの歴史でもあったりします。

71D
AF 28-200mm F/3.8-5.6 Aspherical (Model 71D)


AF一眼レフ用の高倍率ズームとして、世界で初めて28-200mmを達成したのは1992年発売のTamronのModel 71Dでしたが、このレンズは最短撮影距離が、何と2.1m!、最大撮影倍率はわずか0.1倍で、標準ズームの望遠を伸ばしたというよりは、望遠ズームの広角側を広げたというイメージでした。遠景撮影だけなら何とかなりますが、スナップには使いづらかったでしょう。

【製品画像】AI AF Zoom Nikkor 28~200mm F3.5~5.6D(IF)
AI AF Zoom Nikkor 28~200mm F3.5~5.6D(IF)

その後、Nikonも同様のレンズを出しましたが、初代はやはり最短撮影距離2m(28mmマクロ設定時0.85m)と、これ1本で全てをこなすには、最短撮影距離は物足りない感じでした。
MF時代にも、NikonではAI Zoom Nikkor 35~200mm F3.5~4.5Sなど、高倍率ズームはあったのですが、やはり最短撮影距離は長く、特定の焦点距離でのみ、マクロモードでそれなりの近接撮影が可能、といった具合でした。

しかし21世紀になって、高倍率ズームレンズは急速に進化し、最短撮影距離は0.5m程度(フルサイズ/APS-C用)まで向上し、ほとんどの撮影をこなせるようになりました。

とは言え、高倍率ではない標準ズームは、更に最短撮影距離を短く、撮影倍率を大きく出来ているのも事実ですが。

まずはスナップで多く使うであろう焦点距離50mm、どちらも最短撮影距離で両者を比べてみました。

50mmでの最短撮影距離比較

両者、露出の違いはあれど、画質や撮影倍率、インターナルフォーカス式レンズで発生する最短撮影距離付近の焦点距離の目減りなどは、ほとんど差がない感じです。

個人的には、画質は僅かですがTamronのほうがボケ味、解像力、コントラストで良いように感じました。

それでは、今度は望遠端の最短撮影距離を見てみましょう。

望遠端での最短撮影距離比較

Tamronが270mm、Nikonが200mmなので、単純に比較はできないものの、Tamronが270mmでの最短撮影距離0.49m、最大撮影倍率約0.26倍なのに対し、Nikonは最短撮影距離0.5m、最大撮影倍率0.22倍なので、寄れるという面では、写真の比較でも明らかにTamronです。
が、大差はないとも言えます。

また、Tamronは、開放から解像力が高く、f11まで絞ると収差もほとんどなく、コントラストもよいです。
対して、Nikonは開放では解像力が甘く、さらにf11では後ピン気味になっています。

ただし、AF速度に関してはNikonが圧勝で、無限遠から最短撮影距離まではほぼ1秒以内にAFが合焦するのに対し、TamronのAFはかなり遅く、無限遠からだと合焦に2,3秒かかりました。また、時にAFが全く合わなくなることもありました。これは、望遠端の開放f値がf6.3と少し暗いのも影響しているでしょう。

ちなみに、標準ズームではどうか?
代表例として、AF-P DX NIKKOR 18-55mm f/3.5-5.6G VRの望遠端55mmの最短撮影距離を載せます。

最短撮影距離0.25m、最大撮影倍率0.38倍で、かなり寄れるレンズであることがわかります。寄れるだけではなく、撮影倍率が高いので、ここまで被写体に迫れます。
画質で見ると、このレンズは最短撮影距離では、収差がやや多めで、ふわっとした描写です。

これだけ見るとTamronは優秀、だが…

遠景と最短撮影距離、2つのアプローチで、TamronとNikonの高倍率ズーム2本のレンズを比較してみました。

今比較だけで見ると、Tamronはかなり検討しているかと思います。実際、ちゃんと撮れた場合、画質に大きな不満はありません。

が、この「ちゃんと撮れた」という歩留まりの面で行くと、Nikonに軍配が上がります。
というのも、Tamron、AFがかなり曲者で、AFが遅く、AF-Cではかなり厳しい結果となります。これは、例えば動き回る子供を撮る場合には致命的です。

Tamronの場合、VCのシャッター半押し直後の不安定さで、かえって被写体がブレてしまうという現象も発生しました。基本、私はシャッター一気押しはしません。が、とっさに撮りたいときは、一期押しせざるを得ない場合もあります。そんな時、一瞬画面がガコッと揺れてしまうことのあるTamronでは、歩留まりが下がってしまいます。

光学的に優秀なのはTamronかもしれません。が、トータルでミていくと、すべての面で安定し、無難にそつなくこなすNikonに軍配が上がります。Tamronは、私の個体の問題ですが、買って直後にレンズエラーが発生するという事象もあり、これが撮影中に発生すると、シャッターが切れなくなります。画質だけの問題ではないのです。

安定性、信頼性だと純正に軍配

結局、こういう結論に達します。200mmか270mmかの差は大きいです。さらに望遠端300mmや400mmなんてレンズも存在しますが、大きく重くなるので、200mmは妥協点、ただもう少しあると嬉しいな、というTamronの270mmは、中途半端だけど使いやすいですね。
そして、ちゃんと撮れている限り、画質もTamronは遜色ないし、むしろ良い部分もあります。

反面、やっぱりVCの初動の不安定さによる微ブレ多発、AFの遅さと精度の不安定さによる歩留まりの悪さは、写真を撮る上では致命的だったりします。これらは、シャッター半押しからしっかりワンテンポ置く、AFポイントを手動設定し、中央で合わせることで解決できます。
ただ、ワンテンポ置く、というのはシャッターチャンスを逃しやすいのですよね。
Tamronが評価が二分されているのも、こういった「癖」をうまく理解して付き合えるかどうかな気もします。

ということで、Tamronはドナドナかな…。いやこのレンズ、光学系はそのままで、AFとVCを改良してくれたら、と思うんですよね。




それにしても、純正も11年前のモデルだからか、発売当初よりずいぶん安くなりましたね。
そろそろ、AF-Pでリニューアルしてほしいレンズです。Zマウントとの絡みもあるから、難しいかな?

2本の高倍率ズーム AF-S 18-200mm II型とTamron 18-270mmを比較してみた1

ここに2本のレンズがあります。

Tamron 18-270mm F/3.5-6.3 DiII VC PZD (B008TSN) とAF-S DX NIKKOR 18-200mm f/3.5-5.6G ED VR II

Nikon D300がメインだった頃、DXレンズはもう買わない、なんて宣言していた気がしますが、嫁さんのD3400導入後、DXフォーマットを少し見直していて、これはこれで良いね、と思い始めている今日この頃。

やっぱり軽いカメラって軽快なんですよね。家族を連れている時、カメラ以外の荷物も多いですから。
もちろん、もっと軽いM4/3も良いのですが、M4/3の高倍率ズームは、写りはややコンデジに近いきらいがあります。いや、コンデジよりは断然良いのですが、操作性など含めてですね。小さすぎても操作性が損なわれます。あと、やっぱりM4/3の小さいセンサは、写真をメインとすると、少々不満があるのも事実でして。

ということで、D3400と便利ズームという組合せも、画質と操作性と利便性の両立で良いかなと思った次第。

レンズが2本ある理由は、先に買ったTamron、使い込んでいくうちにある不満が出たからです。

AF-S DX NIKKOR 18-200mm f/3.5-5.6G ED VR IIは、ヤフオクで動作未確認が安く出ていたので、博打で購入したものですが、結果的には殆ど使用感のないレンズで、動作も問題ありませんでした。

Tamron 18-270mm、AFが不安定では?

ズバリ、Tamron 18-270mmを使ってみて出てきたのは、このAFです。
過去記事では、手ブレ補正機構VCの初期動作の不満を指摘しましたが、AFも少し不安定です。というのも、三脚にカメラを据えての定点撮影テストで、同じ遠景の被写体を撮っていても、フォーカスリングの位置が毎回ずれる、というのがありまして。

テストでは、どちらのレンズも、MFでデフォーカスさせて、AFを動作させて撮影(フォーカスポイントは中央)しましたが、Tamronは遠景にも関わらず、毎回少しフォーカスリングの位置が変わるんですよね…

Tamronは、ピントが大幅にズレてしまうと、その後MFである程度近いピントに持っていかないと、AFがいつまでも合焦しない、という事象も発生しました。この辺り、AFは速くはないけど、スパッと合焦してくれる純正のAF-S 18-200mmの方に、安定性の軍配が上がります。

Tamronは、PZD(ピエゾ素子を使用した定在波型超音波モーター)を搭載していますが、AF時にフォーカスリングが動くタイプで、フォーカスリングの回転角も、最短から無限遠までは30°程度しか動かないタイプです。この手のタイプは、シビアなフォーカス動作が苦手な印象があります。フルタイムMFも出来ません。

対してNIKKORは、リング型超音波モーターを採用していると思われ、AF時にフォーカスリングは回転せず、フルタイムMFが可能となっています。MF時は、フォーカスリング自体は90°で最短から無限遠まで動かせますが、フォーカス指針的にはもう少し回転角は狭い印象です。MF操作しやすいように、メカ的に減速させている感じですかね。
AFは速くはないけど、スーッと合う印象で、迷うこともあまりないです。精度については問題ないですね。

100/105mmでの比較(遠景)

マンションのベランダからの遠景テスト、焦点距離100/105mmからの掲載としたのは、広角側だと周辺が映り込みすぎて、撮影地点がピンポイントで特定できてしまうので、100mmからの掲載とさせていただきます。

絞り開放から、f11までを掲載しています。f16以上は回折の影響もあって使うこともないので、テストしていません。また、撮影はJPGの撮って出しで、Web掲載用に解像度は落としています。

なお、ズームリングを微調整しても、Tamronは100mmとなりますが、NIKKORは105mmとExifでは記録されます。この辺りはExifのへの表示させ方の、メーカーの考え方の違いでしょうか。

NIKKORのほうが開放は明るいですね。大きな差は両者でないですが、Tamronのほうが僅かに周辺の解像力は高い印象です。反面、電子歪補正が効かないTamronは、糸巻き歪が発生している印象です。サードのレンズを使う場合、こうした歪補正が効かない、ということも頭に入れておいたほうが良いかも知れません。

200mmでの比較(遠景)

この手のレンズで使用頻度が高い望遠側の比較です。

中心部はどちらも開放では少し甘く、f11まで絞ると解像力は高くなる印象です。一方、周辺は、建物の解像力はTamronがわずかに高い印象です。そしてやはりTamronは歪補正が効かない分、糸巻き歪が出ている感じです。

Tamronのみ270mm(遠景)

Tamron、NIKKORより軽量で少しコンパクトにも関わらず、270mmまで使えるのはありがたいです。比較すれば、200mmより270mmまで撮れたほうが、撮影範囲もぐんと広がります。
さすがに周辺は、絞ってもやや解像感が無くなるものの、中心部は高倍率ズームと考えると、解像力はなかなか良いです。


こうして三脚に据えての固定被写体の遠景撮影では、どちらも大きな不満はなく、TamronもAFがしっかり合えば、NIKKORより高倍率なのに、むしろ僅かに解像力が高く、良い結果が得られます。

しかし、こうした高倍率便利ズームは、スナップなど様々なシチュエーションで使われることが想定され、そういった撮影で、TamronはAFの精度とVCの初期揺れによる歩留まりが、実際の撮影では影響している感じです。

次回は、近接撮影を比較してみたいと思います。