PENTAX K-rのカラバリモック 2011年に100円(笑)で購入
ちょっと前に見た海外のDPREVIEWの記事。RICOHのカメラ事業部のインタビューで、個人的にPENTAXのカメラは所有したことがない(上の写真のK-rはモックです)のですが、仕事が製造業なので、プロダクトに対する想いについて、ちょっと書いてみました。
https://www.dpreview.com/interviews/8811743241/ricoh-pentax-interview-monochrome-gr-kazunobu-saiki
「私たちは、写真撮影の結果だけに焦点を当てたいのではなく、人々に写真撮影のプロセスを楽しんでもらいたいのです」とリコーカメラ事業部のゼネラルマネージャー、斉木一信氏は言う。
Google翻訳そのままの文章ですが、RICOHが目指す写真撮影のプロセスを楽しむとは何か、ふと考えてしまいました。 この記事はRICOHのGRシリーズの焦点を当てていますが、同社が抱えるPENTAXブランドの一眼レフについても言及されています。
まずGRシリーズについては、コンパクトカメラ全体の販売総数が落ち込む中で、GRの需要が高いことを強調していますし、実際そうだと思います。 あのサイズのカメラでさっと撮れて高画質、というのは他にはないもので、長きにわたって需要があるのは、ブランドとして認知され成功している証だと思います。 何よりあの価格のカメラ、高価すぎず安すぎずの絶妙な価格で、長期間継続して売れるカメラはなかなかないでしょう。現在のRICOHのカメラ事業は、GRシリーズで持っていると言っても過言ではないでしょう。
ところがPENTAXのデジタル一眼レフ(DSLR:Digital Single Lens Reflex camera)の話になると、何だかモヤモヤした回答しかしていない のが気になりました。
「DSLR 愛好家の一定のグループがまだ存在すると私たちは信じています。」
希望的観測でしかないですね、“信じています” では。 といういのも、今PENTAXはミラーレス一眼はやらない、一眼レフを続けるとしているのに、現時点で主軸をミラーレスに移したCanonやNikonよりボディのラインナップがさみしい状態 です。
レンズはパッと見た限りCanonの一眼レフ用EFマウントレンズ よりは多いのですが、元々PENTAXはデジタル一眼レフはAPS-Cを主軸に展開していたため、1機種のみのフルサイズ機であるK-1IIのフルサイズ用レンズがNikon と比べても少し寂しい状態、特に望遠レンズはラインナップがもともと少なかっただけに、今や風前の灯火状態です。
300mmを超えるレンズは今やこの1本のみ HD PENTAX-D FA150-450mmF4.5-5.6ED DC AW
Canonは既に一眼レフ用のレンズはかなり整理が進んでいて、単焦点レンズはかなり減ってしまいましたね。Canonももう一眼レフ用の単焦点望遠レンズがなくなってしまいました。つまり、スポーツ報道プロ向けももうミラーレスに軸足があるということです。その点、Nikonはまだ一眼レフ用望遠レンズはフルラインナップですね。(2025年3月現在)
CanonもNikonも、ミラーレスが今後は主体であり、また一眼レフ用レンズもアダプター経由で使えることから、資産も無駄にはならないでしょう。 しかし、ボディもレンズも新しいものが出ないPENTAXは、一眼レフかミラーレスか以前に、このシステムに将来があるのか? となっている状態です。
一眼レフもミラーレスも、レンズ交換式カメラはシステムとして成り立っています 。GRシリーズやPENTAX 17のようなコンパクトカメラは、基本それ1つで完結するので、ユーザーも気軽に購入しやすいのに対し、レンズ交換式の場合は、レンズやアクセサ含めたたシステム上に成り立っていて、PENTAXの新しいボディが出ないからと言って、CanonやNikonなどの他メーカーのボディでPENTAX Kマウントレンズが使えるわけではないし、フラッシュその他のアクセサリも同様です。 今PENTAXユーザー、特に昔から使っていてレンズを多く持っているベテランは、そして望遠レンズ主体で撮影しているユーザーは、もうはっきり言って他に移らざるを得ない状況ではないかと思うんですよね。
「レンズを通して本物の光を見たいと思っているデジタル一眼レフ愛好家のグループがまだいると私たちは考えています。」
この考え方がもう後ろ向きではないかと思うのです。本物の光を見たいユーザーは一定数いるとは思います。が、それはPENTAXというシステムの光が見えない状況で、果たして今後も使いたいと思うでしょうか? 厳しいことを言うと、CanonやNikonにも一眼レフは残っていて、果たしてそれらのカメラと比較して、PENTAXがそれらのメーカーとは違う何かがあるのか? に尽きるのではと思います。 本物の光はCanonやNikonの一眼レフでも見られるし、PENTAXの未来が見えないことにはシステムに投資できない。さらに言うと中古市場でいくらDSLRが賑わったところで、それはPENTAX一眼レフの売り上げにはほとんど貢献しないでしょう。 写真の撮るプロセスを重視していると言う中で、PENTAXの一眼レフに果たしてライバルに対して抜きんでたものがあるのでしょうか?
「市場を注意深く調査し、ユーザーやデジタル一眼レフファンの声に耳を傾けます」と斉木氏は言う。「その後、事業ロードマップを描きます。」
このペースがあまりにも遅いのではないかと思うんですよね。あるいは、もうロードマップを描けないほどに事業縮小をしてしまっているのかもしれません。 動画よりも写真を楽しく撮るプロセスを提供するために動画に注力しないというのも、裏を返せばそんな余裕も能力もないのではと思いますね。
もちろん少ないリソースで動画を捨てて写真に注力するのは理解できます。ただ、それが果たして今のPENTAX一眼レフでなければ出来ないのか?と問われると、それに対する説得力のある物がないと、ただの遠吠えになってしまいます。 全体として、PENTAX一眼レフの話が後ろ向きのことしか発言していないわけで、存続か否かの瀬戸際になっていないでしょうか?
私も製造業の端くれとして、開発に携わっていますが、商品として開発するには何年かが必要で、仮に次の一眼レフの新機種が今年出るとしたら、もう3,4年前から企画としては決まっていて、昨年には試作機が出来ていて、テストとファームウェアなどの改善をしつつ、商品化の目処が立てばまずは小ロット生産に移行する、と言う流れではないかと思うのですが、果たしてそれが出来ているのかですね。
DPREVIEWの記事に対する反応を見ると、確かにカメラそのものが高価になり、もっと撮影するプロセスを楽しめる、何もかもがオートではないカメラを所望するような発言はチラホラ見かけます。でも次に出てくる言葉が「シンプルで安いカメラ」なんですよね。 現実にはシンプルで操作性を楽しめるようなカメラは、M型Leicaのような究極に高価なカメラ なんです。 フィルム時代の末期の90年代、Nikonにはシンプルで安価なMF一眼レフのFM10 が存在しました。が、それは一番売れたカメラかというとそうではなく、現実にはAFエントリー機のF60Dのほうが売れました。 結局、そういう発言をするユーザーは中古を買い、企業に貢献はあまりしない、なので売れないし、物が安価だとよほど数を出さない限り売り上げにつながらないわけです。ニッチなものは高価にならざるを得ない 、大衆向けほど安いし、大衆ほど知識がないから機能を求めるのが常です。
個人的にPENTAXがまずやるべき一眼レフは、Nikon D850を超えるK-1IIIの開発、Nikon D500を超えるK-3IVの開発じゃないでしょうか、まずは。一眼レフの究極を目指すなら、まずはライバルで売れた機種を超えなければ。それはカタログスペックだけではない、部分も含めてです。 その上で、PENTAXが考える、撮る楽しみと操作する楽しみのある一眼レフ を出せばよいかと思います。 とにかくニッチになりすぎると、Leicaのような高額路線にならざるを得なく 、それはPENTAXが目指すべきところではないでしょうから、しっかりとボディを出し、レンズもリファインする、その上でPENTAXが考える操作する楽しみを追求したカメラを出すべきじゃないでしょうか?
今レンズ交換式カメラが高価になりすぎたせいか需要が伸び悩み、代わりにコンパクトデジカメがまた伸びてきています。 ただコンパクトデジカメの内訳をみると、かつて日本メーカーが出していたけど撤退した1,2万円クラスの安価なデジカメをKodakが販売し、日本や欧州のメーカーは高価なレンズ一体カメラ(あえてコンパクトデジカメとは呼びません)にウェイトを置いている感じですね。コンパクトデジカメも二極化が進んでいます。 そういったところの間にPENTAXも一石を投じられればと思うのですが。
そしてPENTAXのプロダクトプランナー・デザイナーのTKO氏が退社するとのポストが御本人のXに投稿されました。
PENTAX 17 やJlimited などを手掛けたのが最後なのか、実はこの後に続くプロダクトもある程度描いての退社なのかわかりませんが、きちんと後継者が継続できれば良いなとは思っています。何せ今の企業は、こうした後継者がなかなか育たないので。 さてPENTAXブランドの次なる手がどうなるのか、ユーザーではない自分も(会社ではPENTAXのコンデジ使っていますが)気になるところです。
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