NIKKOR-S Auto 35mm F2.8で光が丘公園をスナップ

4本のNIKKOR 35mmを比較する写真を撮ったついでに、せっかくなのでスナップ撮影も。
そりゃスナップ撮影のほうが比較撮影なんかよりずっと楽しいですからね。

手持ちのNIKKOR-S Auto 35mm F2.8は、1970年に親父がNikon Photomic FTNと一緒に買ったレンズで、2018年にNikonの期間限定旧製品のメンテナンスサービスを行っていた際にPhotomic FTNと共にメンテナンスに出しています。

カビ跡、拭き傷ありのレンズでしたが、この整備で見た目にはほぼ問題のないくらいにきれいになり、スカスカだったヘリコイドもしっとりと粘りがでてMFしやすくなりました。
無限遠がオーバーインフになるのは調子部品払底でしたが、キィートス辺りならありそうな気もするのですが、どうなんでしょうね?

ということでスナップです。いきなりこんな写真ですが、撮影時6月半ばとはいえもう夏の天気でした。

最新レンズではありえないくらいに、フレア、ゴーストが出ますね。漫画やアニメでよく見かける夏らしい描写は、こうしたオールドレンズのコーティングがまだ未熟だった時代ならではです。
比較はしていないですが、これがNIKKOR Zならフレアもゴーストもほとんどないスカッと抜けた写真になるでしょうね。

あまり絞っていない撮影、だったはず。シャッタースピード1/250秒なので、多分開放かf4くらいかな? 残念ながら非CPUレンズでAIガイドもないAuto Nikkorゆえ、絞りはExifに記録できません。
中心部はしっかり解像していますが、周辺は少し緩くなります。でもこの時代のレンズはあまり絞らないとこんなものです。
こういう撮影ではある程度絞るのがセオリー。たまたま飛んでいた飛行機をおさめたく、絞りを気にせずフォーカスだけ合わせてとっさに撮った写真でした。

そして少し絞った写真。

ここは古いレンズゆえ、少し絞った程度では周辺部はあまり解像しませんね。とはいえ、このレンズ発売当時の1950年代60年代のフィルムでなら十分でしょう。
そして中心部はしっかり解像していますし、シャドーの落ち込みがないのも良いですね。

逆光の木漏れ日をあまり絞らずに撮影。フォーカスは画面奥に置いたので、手前はボケています。Webの解像度だと分かりづらいかな。

木漏れ日のこの葉の部分はフリンジが発生していますが、パープルではないのでそんなに嫌な感じはないかな。
周辺は一見解像していないように見えて、実は球面収差による影響で、等倍で見ると割とちゃんと描写は出来ています。もちろん最新レンズと比較しちゃ駄目ですよ。

遠近がわかる撮影を。フォーカスは画面中央の椅子に合わせて、絞りは1段絞ったf4だったかな?

このレンズの良いところは、前ピンも後ピンも、良い感じに球面収差がまとわりつくことで、柔らかな描写になっていること。古いNIKKORレンズは硬いボケ、なんて言われることもありますが、このレンズはあまりそういう印象はないですね。このくらいのフォーカス距離の撮影は本当に得意です。
ピント面は収差もほぼないので、線もスッキリ出ていますし、線の描写も割と細いのが好感持てます。

露出を落として撮影。
少しだけRAW現像でシャドーを持ち上げた程度で、撮って出しに近いですが、シャドーの潰れがなくちゃんと階調が出ています。絞りはf5.6だったかな?

いいですね。最新レンズとは違って解像力は周辺ほど落ちていきますが、なだらかに落ちていくのと、適度な球面収差が木の葉の描写に好印象を与えている、と思いました。
最新レンズならしっかり描写できるところ、この適度な緩さが返って良いこともあるんですね。

そしてf11に絞ったときの写真。
四隅の解像力は上がっていますが、全体的に決してカリカリにはならないのが良いですね。とはいえ、細かい描写はやはり最新レンズには劣りますね。

同じf11で撮影。木漏れ日のハイライトの色づきはゼロではないけど、あまり気にならないくらいに少ない。このレンズの良いところですし、Nikon Zの4500万画素センサとの相性もよいです。

Webの解像度程度の写真なら、まずもって不満のない描写です。これだけ見る限り、55年前のレンズとは思えないですね。

最後に、光が丘公園ならやっぱり入れたい光が丘製造工場の煙突。絞りはf11。

色の出方は最新レンズとはちょっと違うかな? 発色はややあっさりですかね。ま、一昔前のNikonらしいでですね。

久しぶりのMFレンズ、こういうスナップの撮影テンポにちょうどよいですね。やれ被写体認識だ何だってのも関係ないですし。
AF-ONボタンへの拡大表示割当で、MFも快適そのものです。この便利さは一眼レフにないので助かります。

このレンズを持ち出して撮影、またやりたいな。

新旧NIKKOR 35mm撮り比べをしてみた【近距離被写体編】

新旧NIKKOR 35mm撮り比べシリーズラストです。

撮り比べてわかったのは、35mmレンズというのは50mmレンズより実は安定した描写のものが多いんじゃないかな、と。
NIKKOR-S Auto 35mm F2.8後期型ですら、描写の安定性が高いんですよね。50mmだとこの時代のレンズは、開放では収差が多く、絞るほどに収差が改善されキリッと描写するものが多かったですが、このAuto 35mmレンズは確かにその傾向は見られるけど、50mmほどではないんですよね。もちろんF2.8という開放を欲張っていないのも大きいですが。

さてこの最後の比較ですが、最も各レンズの描写の違いが出ているように感じます。
特に今回は順光で被写体の自転車の距離が2.5m程度、背景も複数の距離を取り混ぜてみました。
良い悪いではなく、同じレンズでもこんなに特徴が違うんだなとわかりやすい作例になったかなと思います。撮影タイミングで光の状況が変わったり厳密な同じ条件ではないですが、傾向を感じていただければと思います。

NIKKOR-S Auto 35mm F2.8

この作例では最も絞りによる描写の変化を感じられたのがこのレンズです。
絞り開放では球面収差や非点収差と思われるふわっとした描写が感じられますが、いい塩梅に柔らかさを出していて、独特な立体感を感じさせる描写です。ですが解像力はしっかり出ていて、ピントの芯があるので、収差だらけで見るに耐えない、ということがまったくなく、これはポートレイトに積極的に使いたいですね。
f2.8という決して明るくはない開放ですが、むしろ被写界深度が適度にあることもこの手の撮影では好ましいですね。

開放では周辺減光がむしろ独特の立体感に寄与している感じがしますね、1段絞れは収差の影響もぐっと減り、安定した描写です。これはf16まで変わらず。ハイライトのパープルフリンジはむしろ新しいAIAFよりも出ていないくらいです。
解像力は確かに新しいレンズよりはないかもしれませんが、あくまで比較した場合であって、今時の4500万画素のデジタルでも十分と感じます。
よく高画素機が登場した頃には、古いレンズは解像力が追いつかないので意味がないなんて話も聞かれましたが、そんなことはないです。

AI AF Nikkor 35mm f/2D

Autoと比べると、80年代の光学設計も新しさを感じます。このレンズはAutoよりも1段明るいですが、絞り開放の球面収差はAutoのf2.8よりもむしろ少ない、もちろんまったくないわけではないのですが。
Autoよりより端正な描写担っていると思います。ただ、ハイライトのパープルフリンジがAutoでは感じなかったのが、このレンズでは少し出ているんですよね。

絞るほどにキリッと描写していきます。f16でも回折の影響はあまり感じないですね。
今回の作例ではないのですが、このレンズは円形絞りではないために、夜景撮影では光芒がきれいに出るんですよね。
そしてこの撮影では円形絞りではないことによる影響はあまり感じませんね。

AF-S NIKKOR 35mm f/1.8G ED

AIAFよりさらに30年近く新しくなると、もはや絞り開放でも収差の影響はほぼないです。
中心部の解像力も高く、ここまで写れば文句のつけようがないですね。少し気になる点は、開放では背景の木の葉のボケが少し二線ボケの傾向が見られるところでしょうか。
絞りを変えても全体として安定性は高いですね。ただ開放時にハイライトの縁にパープルフリンジが少し出ています。AutoやAI AFでは出ていないんですよね。ピントが良すぎるから?

解像力のピークはf8~11辺りと感じますが、f16でもほとんど回折の影響は感じられないですね。さすが新しいレンズだけあります。

NIKKOR Z 35mm f/1.8 S

完璧です。描写の傾向はAF-Sと似ていますが、違いは二線ボケの傾向が少なくなっていること。お陰でより立体感のあるボケが出ています。
また解像力はさらに一歩高いですね。AF-Sよりも中心から解像力の高い範囲が広がっています。像面湾曲がより少ないのでしょうね。
ただAF-Sと同様、絞り開放でハイライトのパープルフリンジが少し出ています。気になるほどではないのですが。

とはいえ気になる点はほぼなく完璧に近い描写です。これが逆に写りすぎて…なんて言われる所以なのかもしれませんが。人間ってないものねだりで贅沢ですね。
でもこれだけしっかり写るからこそ、写真に集中できるとも言えますね。レンズのクセに頼りすぎないってのも撮り方の1つです。


シリーズで掲載してきた本記事も一旦これで終了。
実はこの後、各レンズで簡単にスナップしてきたので、その写真もいずれまた掲載しましょう。
35mmレンズはスナップの王者です。使いやすいし、描写は間違いないですから。

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【髙千代酒造】たかちよ 59Takachiyo 出羽燦々100% CHAPTER EIGHT

いつもの酒屋で買ってきたお酒です。色々悩みましたが、久しぶりにこの銘柄を。

新潟のお酒はたくさんありますが、南魚沼の代表的な銘柄の1つ「たかちよ」です。まず間違いのない銘柄ですからね。

59 Takachiyoシリーズは、扁平精米で精米歩合59%をテーマとした「たかちよ」の中でも、主に協会1801号酵母を使用した(例外あり)香り高くフルーティな味わいと特徴としています。

去年買ったものは酒米に「森のくまさん」を使用したものでした。

今回は酒米に「出羽燦々」を使用したものです。美山錦と華吹雪を母体とした品種だそうです。
とにかく59 Takachiyoは様々な酒米を使っていて、中にはブレンドのものもあります。
協会1801号酵母は、どんな米を使っていても基本香り高くフルーティに仕上がる酵母ですが、さて今回はどう仕上がっているかな?

よく冷やした状態で開栓。ガス感ありポンと音がします。さすが1801号酵母のお酒、ふわっと香る上立ち香が洋梨のような甘い香りを醸しています。
口に含むと…もう芳醇に広がる濃厚な甘さ。香りは洋梨系ですが、酸味は少なめで、洋梨をうんと濃縮したような甘み、ちょっと個人的にこの甘みが強すぎるかも。
ただその割に切れは良いので、後味がいつまでも引きずるタイプではないです。このあたりが59 Takachiyoの絶妙なところなんですよね。

そして少し開栓したまま空気に触れさせておくと、ちょっと甘すぎるかな~と思っていた味わいのバランスが変化。少し落ち着きが出てきました。
この味わいだと、オンザロックにするのも良さそうだし、炭酸割りなんかも面白そうですね。


たかちよの良いところは、こだわりを持ちつつもかなりリーズナブルな価格展開を行っているところ。一升瓶で3000円ちょっとって、ありがたいです。この値段なら気軽に買えますし。

新旧NIKKOR 35mm撮り比べをしてみた【最短撮影距離編】

シリーズ「新旧NIKKOR 35mm撮り比べをしてみた」

KhodaaBloom RAIL DISC EX LIMITEDにTOPEAKのQUICK TRACK対応リアキャリアを装着、50cmの長いカゴを取り付けることで、撮影機材などを柔軟に運搬でき、必要に応じて簡単にカゴを取り外せるシステムを構築。
ロードバイクではないのでスピードや重量はそこそこですが、こういう使い方に適したクロスバイクも面白いですね。

今回のテーマは最短撮影距離です。
最近のズームレンズは最短撮影距離が随分近くなりましたが、大昔は全然寄れなかったのを思い出しました。
35mmの単焦点レンズは昔から割と寄れるレンズでしたが、ここでは各レンズをMFで最短撮影距離で撮影してみました。

最短撮影距離が短いから撮影倍率が大きいわけではないのがレンズの面白いところ。
ここでは先に実際の撮影倍率を書きますが、

AF-S NIKKOR 35mm f/1.8G ED AI AF Nikkor 35mm f/2DNIKKOR Z 35mm f/1.8 S >> NIKKOR-S Auto 35mm F2.8

という順番になりました。カタログスペック通りの結果になりました。AF-SとAI AFは0.25倍、Zは0.19倍、Autoは調べましたがわかりませんでした。Autoは当時のNikonカメラガイドにも書かれていないんですよね。
うちにあるカメラガイドのスキャン抜粋。曲がっているのは御愛嬌w

1971年当時のNikonカメラガイドにNIKKOR-S Auto 35mm F2.8に最大撮影倍率の記載はない


そして意外にも、わずかに最新のZの撮影倍率は少し劣るようです。が、これはわずかなさで、Autoとの差が大きといったところです。
ただ、どのレンズも一般的な撮影では使い勝手が良く、寄れないなと感じることはあまりないと思います。

NIKKOR-S Auto 35mm F2.8

Nippon Kougaku銘ではなくNikon表記となった後期型の本レンズ、最短撮影距離は0.3mで、当時の50mmよりも寄れるので、様々なスナップ撮影で便利に使えます。
比較すると、新しい世代の35mmより最大撮影倍率は劣るものの、実写ではここまで寄れればまず問題ないくらいに使い勝手もよいです。

やはり世代の新しいレンズと違い、最短撮影距離付近では少し解像力は落ちる感じでしょうか。ちょっとボケにざわつきも。
でも絞るほどにキリッとして来るのはさすが、この時代のレンズは絞って使う、というのがセオリーでしたが、f11辺りまで絞ると本当によく解像しますね。
もう60年近く前のレンズなので、オールドレンズと言って差し支えないですが、いかにもオールドレンズな写りというのを期待すると、普通にまともに写るので拍子抜けするでしょう。でもこれが本来のレンズの正しい方向性だと思うのですが。
開放ながら、コントラスト低下もほぼないのもこのレンズの隠れた凄さです。

この写真の撮影時、ちょうど薄曇りになってしまったのはご容赦ください。

AI AF Nikkor 35mm f/2D

実は今回の4本の35mmの中で一番寄れるレンズ。最大撮影倍率0.23倍です。このぐらい寄れると、背景もぐっとボケるので、二線ボケも開放では返って気にならないくらいです。
一般的な撮影距離では少しだけボケが硬いかなと思っていたこのレンズ、割と接写で柔らかくなりますね。中途半端に絞ったときのほうがちょっと硬さが出ます。

実はこのレンズでももうちょっと接写では収差があってコントラスト低下があるのではと思っていたら、良い意味で裏切られました。絞っても回折の影響はあまり感じないですね。Autoもよく写るけど、このAIAFのDタイプ世代は30年近く新しい(と言っても80年代の光学設計!)だけに、更に洗練されていると思います。
欠点は前回も書いたようにMF操作性がスカスカで、細かい調整では引っかかりがあるということ。ボディ内モータによるAF駆動で、フォーカスリングがAF時も回ってしまうタイプゆえの欠点ですね。

AF-S NIKKOR 35mm f/1.8G ED

AIAFと同じ最大撮影倍率0.23倍で、スペック通りほぼ同じくらい寄れます。AIAFよりやはり30年近く新しいだけに、大きな差はないものの、わずかにボケ味が柔らかくなっている気がします。特に絞った時のボケの硬さは絞るほどに差が出てきて、AF-Sのほうが絞ってもボケが柔らかいのは、円形絞りになった恩恵でしょう。
画質も開放から安定しています。

最近はもっと寄れる単焦点レンズも多いですが、多分そこまで無理をしないことで、描写の安定性重視なんでしょうね。
全絞りで安定していますね。そしてボケとピント面の繋がりがとても良いです。
ホントこのレンズ1本あればいろんな撮り方が出来ますよ。

NIKKOR Z 35mm f/1.8 S

先輩AFレンズより少し最大撮影倍率が落ちて0.19倍の最新NIKKOR Zですが、開放でもピント面はしっかり解像し、ボケは柔らかく、絞ってもボケの柔らかさは保ちつつ被写界深度が深くなる、というレンズの理想がちゃんと再現されています、最短撮影距離でも。なかなかセオリー通りにはならないのがレンズの面白いところですが、ここまで完璧に写ると面白くない、と言われてしまうのが悲しいところ。写りすぎてしまうのが最近のレンズ、でもこれが技術の集大成なのだから。

サムネサイズでも明らかにボケがしっとり柔らかくなっているのがわかります。絞りの枚数がAF-Sの7枚からNIKKOR Zでは9枚円形絞りになったのも効いているのかもしれませんが、Zマウントの大口径を活かした光学設計ができるのも効いているのでしょうね。
一番最初に出たZマウントレンズは、7年たった今でも素晴らしい性能であることに違いありません。これ、次のモデルの設計担当者はなかなか大変でしょうね。


4本撮り比べて思ったのは、やっぱり新しいほどに最短撮影距離付近の描写も良くなっていること。大きな差ではないですが、今時のレンズは最短撮影距離も重視されているんだなぁと。
ただ新しいとはいえ、安価なNIKKOR Z 40mm f2.8は最短撮影距離ではもう少し解像力やコントラスト低下があるので、ある程度光学系に金をかけられるか否かでも変わるんだなぁと思った次第。
Z40mmもちょっと古い写りが返って心地よかったりもします。
そのうちZ40mmとZ35mmを撮り比べするのもやってみたいですね。

新旧NIKKOR 35mm撮り比べをしてみた【近距離風景編とボケ味】

4本のNIKKOR 35mmを撮り比べるシリーズ第2弾です。

第1弾は↓

第2弾では、近距離の被写体(ここでは木を入れています)と遠景のボケ味を確認してみました。
FTZ IIとAuto NIKKORの組み合わせ、マウントアダプタのデザインがねぇ…。
Nikon Z8ではカスタムセッティングで、AF-ONボタンで拡大表示、もう一度押すかシャッターボタン押せば全体表示に復帰するようにしているので、MFはむしろ一眼レフより楽ですね。お陰でMFレンズも軽快に撮影できます。
Exifにレンズ名もカスタムで入れられて、焦点距離に連動してボディ内手ぶれ補正も最適化されるので、本当に撮影が楽で楽しいですね。

マウントアダプターFTZ IIに自己責任でNIKKOR-S Auto 35mm F2.8を装着

以下の画像はLightroom Classicで未調整のまま解像度のみWebように落として出力しています。
レンズデータはAuto NIKKOR以外適用されています。

今回は木の幹の中央付近にフォーカスを合わせ、各絞り値で撮影してみました。

NIKKOR-S Auto 35mm F2.8

最近重視される近場の解像力とボケ味ですが、流石に1960年代のレンズでは絞り開放で球面収差による影響が感じられますね。
ボケは開放では口径食による影響があり、縁どりも強い、硬いボケ味ですね。この時代は準広角たる絞って撮影するのがセオリーだったので、開放よりも少し絞った辺りを基準としていたと思われます。

絞るほどネガな要素は消えていき、f8からf11あたりで球面収差の影響もなくスッキリとした描写になりますね。
ただ最近のミラーレス専用レンズの完璧な描写とは間逆なだけに、こういった開放の描写がむしろ好みと感じる人も一定数いるんじゃないかな? 実は自分も嫌いではないんですよ。
背景を選べば、このちょっとざわつく開放の背景描写も好ましい方向になるかも?
そしてやはり色合いは寒色系ですねこのレンズ。カラーリバーサルフィルムなら、少し暖色系のKodachrome 64あたりがしっくり来るかもしれませんが、もう買えないフィルムですから、カスタムピクチャーコントロールで作ってみるのも面白いかも。

AI AF Nikkor 35mm f/2D

Auto NIKKORと比べると、80年代の光学系とは言え、いきなりモダンな描写になったのがわかります。
特にボケ味は硬さがなく、同じf2.8でAuto NIKKORと比較してもボケの縁取りが少なくぐっと柔らかさが出ています。
ただ絞り開放では木の幹の左側は少し像が流れているのはAutoと同じ傾向はありますね。絞れば改善されます。像面湾曲などザイデル収差はこの時代のレンズではまだ大きく影響がありそうです。
ただ、この時代はまだ絞り開放から画面の隅々まできっちり解像するなんてのは難しかったわけですし、被写体は平面チャートではない3次元的なものだから、ザイデル収差はある程度妥協はあったでしょう。値段的にも高価なレンズではないですからね。

改めて思ったのは、このレンズの描写、悪くないです。Nikon F90Xを買った後に初めて手に入れた単焦点レンズで、買った当初は絞って撮ってばかりで、何かこんなもんなのかなと思っていたのですが、開放を積極的に使うようになって、レンズの面白さがわかりました。
このレンズはどちらかと言うと暖色系な色合いを感じますが、気のせいかな?

AF-S NIKKOR 35mm f/1.8G ED

上のDタイプと比べて、更に現代的な描写になったのがわかります。像面湾曲や球面収差の影響が少なくなっています。ボケ味はさらに柔らかさが出ていますが、わずかにボケの縁取りは残っていますね。
とは言え、AutoとDタイプほどの差はなく、より現代に近い描写になったと言ってもよいでしょう。
そしてAF-S化によるAFの速度とフォーカス群の繰り出しの正確さはミラーレス機で使っても恩恵がありますね。

絞り開放では木の幹の左側隅の描写がぐっと良くなっているのがわかります。もう収差の影響はあまりなく、単純に被写界深度の浅さによるボケが発生している感じでしょうか。
色合いはニュートラルですね。
一眼レフもミラーレスも両方使う人なら、このレンズ1本あれば十分と言えます。ええ、NIKKOR Zの描写さえ気にならなければw

NIKKOR Z 35mm f/1.8 S

この撮影においては、AF-Sとの差は殆ど感じません。同じ35mmでも、Zのほうがわずかに画角が広いです。描写の傾向もこの撮影だと似ていますね。
ほんの僅かにボケの縁取りがZのほうが少ない気もしますが、殆ど差はないと言っていいでしょう。
これはAF-Sが優秀だという証であり、Zになったから劇的に良くなるという要素は少ないかもしれません。

色合いもニュートラルです。
大きな差はAF-Sとはないものの、Zマウントのボディとレンズの組合せでは煩わしいマウントアダプタ装着も不要ですから、もしFマウントボディをお持ちでないなら、このレンズ一択でしょう。


このテストでは、4本のレンズで劇的な差は認められなかったです。こういうシチュエーションでよく使われる焦点距離だけに、このあたりのフォーカス距離の描写に重点が置かれているのでしょうね。

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