Nikonのレトロ調ミラーレス一眼「Z f」の噂話は、去年辺りからチラホラ見かけていますが、先日のカメラと写真のワールドプレミアショーCP+でNikonの開発陣にインタビューしたフランスの記事で、このZ fの噂(期待?)についての質問に対する受け答えがされています。
以下、ネット翻訳下抜粋です。
Nikon Z fc は、昨年のベストセラーの 1 つです。この成功の理由は何だと思いますか? ニコン Df のように、特にフルフレームでヴィンテージの外観を持つ他のカメラを発売する予定はありますか?
Nikon Z fc の最初のコンセプトは、楽しさと喜びに基づいています。個性的なデザインのカメラが欲しいという方に、手に取って撮っていただく喜びを感じていただければと思いデザインしました。
このデザインは、ニコンの長い歴史とクラフトマンシップから生まれました。表現されるのはすべて私たちの情熱です。Z fc は、伝説的なフィルム カメラである Nikon FM2 によく似ています。これが、私たちの歴史とFM2の歴史を知っているお客様の期待に応える方法です。彼らは、この歴史的なケースに 2 滴の水滴のように見えるため、Z fc のデザインを高く評価しています。同時に、必ずしも FM2 を知らないが、Z fc のヴィンテージな外観を高く評価している若い世代にも多くのことを語っていると思います。センサーサイズに関しては、十分にコンパクトで手頃な価格のケースを提供したかったため、APS-Cを選択しました. そして彼の名前は私たちの考えを示しています。Z fc の「c」は英語の カジュアルに対応します。このケースを使用する前に、よく考える必要はありません。手に取って、撮影を楽しんでください。大きさ、価格ともに納得のポイントです。
しかし、おっしゃるように、Z fcを発売するとすぐに、多くの人がフルサイズセンサーと同等のものを求めていました. もちろん、今後の製品について詳しくは言えませんが、こうした要望を聞き、それらに十分に応えられる製品の種類を考えています
https://phototrend.fr/2023/02/interview-nikon-cpplus-2023-monture-z/
この記事がデジカメinfoで紹介され、Nikon Z f登場に対する期待が高まっているように思いますが、個人的に色々思うことを、ここでは書いてみたいと思います。
Twitterだと角が立ちそうなことや、誤解されそうなこともあるので。あくまで、個人的な意見ですからね。
ぼくの考えた理想のZ f論に見る、実際の売上との相違
発売の予定もまだ出ていないうちから、こうした待望論が出てしまうと、どうしても皆が考えたそれぞれの理想と、現実との乖離が大きくなってしまいます。
もちろん、妄想するのは個人の勝手ですし、それをメーカーが全てピックアップするわけでもないですから、個人で語る分には個人の自由です。
が、それがいざ製品になったときに、理想とかけ離れるほど、やっぱいらないじゃん、となります。
そもそも、やたら理想をぶちまけた挙げ句に買わない人は多いのです。スポーツカーなんかもそうですね。いざ出してみると、思ったほど売れない。そのくせ文句ばかり言われる、ここがこうじゃないああじゃないと。そういう人は客ではないですからね。
Z f待望論を見るにつけ、かつてNikonが一眼レフのDfを販売した時の、販売に至るまでのティザー広告から実際に販売されるまで、そして販売終了の流れを思い出します。
なぜNikon Dfはあまり売れなかったのか?
Nikon Dfが発売されるまで、ネット上ではちょっとしたブームとなりました。Nikonもティザー広告で少しずつ情報をちら見せし、往年のフィルム名機のF3を登場させてみたり、開発担当がF3の開発も行ったミスターニコンの後藤だったりと、とにかくかなりカメラファンを期待させたのではないでしょうか?
ところがいざ発売されてみると、ネット上にはこんなネガティブな意見が出てきました。
- 中身はD600でしょ?
- ファインダがいまいち
- AFがD600と同じ
- 重たい
- 分厚い
- 質感がいまいち
Dfが既存の製品の流用が多かったのは確かです。後に後藤氏もAERAdotのインタビューで、Dfの開発について、このように語っています。
「一眼レフのラインアップがきちんと決まっているなかに、売れるかどうかわからない、しかもぜんぜん違う雰囲気のカメラを入れようとしたわけですから。そりゃあ、反対されますよ。でも最終的に『できるだけ部品を流用して、お金をかけないで作りますから』と、最上層に頼み込んだら、『それならいいだろう』という感じでOKを取りつけました」
https://dot.asahi.com/dot/2019061400057.html?page=5
もちろん、全てを専用品として作ってしまうと、相当価格が上がってしまいます。ただでさえニッチな製品なのに、開発費を上げてしまうと、それを価格に転化せざるを得ません。それでも買ってくれて利益が出せるLeicaのような製品ならまだしも、Nikonのプロ機でもない趣味性の高い製品の売上は知れているわけです。
なので、ファインダやAF周りはD600、撮像センサはD4(ここは部品単価で相当頑張った部分と思う)を流用したのです。
もちろん、ダイヤル類は新規設計ですし、デザインも他の一眼レフとは異なるので、そこに費用はそれなりにかかったはずです。
でも、その部品流用の妥協点が、ユーザーにはしっくりこなかったようです。
とは言え、仮にDfがファインダやAFも更に上位機種と同等にこだわったとしたら、更に価格は十数万円は上がったのではと思います。
後藤研究所では、開発と売上のバランスに相当苦労したと思いますし、本音で言えばファインダはもっと上質にしたかったはずです。でもそれを行うと、価格が上昇し、更に売れないカメラになってしまうことが明白だったので、妥協点を設定して開発したと想像します。
残念ながら、それ故にユーザーの方が好き勝手言った割に買わない、というドツボにはまってしまったのです。
個人的には、すでにD800ユーザーだったので、D4のセンサ自体に魅力はあったけど、それ以外に魅力だったのは可倒式AIガイド(ここで言うAIは人工知能ではなく、NikonのFマウントレンズの絞りリングの位置の機械連動方式のこと)くらいで、上面ダイヤルに興味もなかったので(コマンドダイヤルがあるのに、わざわざシャッタースピードや露出補正をダイヤルで設定する必要性がない)、結局買うこともありませんでした。
AFも中途半端に入れるくらいなら、むしろ取っ払ってMF専用機にしても良かったのではと思いますが、それではマーケット的に更に厳しいですからね。
Nikon Z fcが売れたのは価格を抑えたから
ミラーレス時代になり、Nikonが最初に出したヘリテージデザインのNikon Z fcはそれなりに売れたカメラだと思います。
これはシンプルに、フルサイズではなくAPS-CのZ 50をベースとし、質感もそこそこに抑えたからでしょう。
または貼革のカラーバリエーションを期間限定ながら設定したのも大きかったのではないでしょうか?
仮にカメラオタクの要望、質感にこだわる、を実践していたら、高価になって売れなかったでしょう。
Dfのように大きく重くもない、薄くてシンプルな、かつてのフィルムのFM2をオマージュし、カメラオタクではなく一般カジュアルユーザーに向けた開発だったのも良かったと思います。
Z 50のデザインは個人的にあまり好きではないけど、このカメラならちょっと欲しいな、と思わせたりします。
よく見ると、上のD fもオマージュしているように思いますよ。
質感を抑えた、ここは結構重要です。まずは見た目なんですよ、カメラも車も。それでいて質感もこだわってしまったら、それこそLeicaの領域です。
レンズキットで10万円台半ばに抑えたこともよかったでしょう。
Z fはあくまでリップサービスでは? まずはZ 6IIIの開発が急務
Yamaroの個人的結論からいうと、Z fはあくまでリップサービスで、開発も検討していると言ったに過ぎないと思っています。少なくとも今は売る段階ではないと思っています。
まずは、ライバルメーカーに対して、特にAF性能が周回遅れとなっている、ミドルクラスのZ 6IIをモデルチェンジし、Z 6IIIを発売することが急務でしょう。
Z 9はフラッグシップ機で、誰しもが手を出せる価格ではありません。今やSONYのα7IVや、CanonのEOS R6 MarkIIがミドルクラスのミラーレス一眼で売れに売れているモデルで、Z 6IIは完全に取り残されている状況です。
未だFマウントのみのユーザーも多数いると思われるNikon、何とかしてZマウントに手を出してもらうためには、手の届く価格のZ 6III登場が急務です。ボリュームゾーンのカメラが周回遅れではどうしようもないですから。
そして、Z 6IIIが登場してある程度売れた暁には、それをベースとしたZ fを売るのは、販売戦略の1つとしてアリなのではと思っています。
とにかくユーザーは変に「ぼくの理想」を妄想しすぎないこと、そしてNikonもユーザーの要望する「ぼくの理想」に付き合いすぎないこと、むしろ突き放すくらいの製品を出して欲しいですね。
言えることは、Z fは決して安くなない(Z fcよりちょっと高いくらいなんてのは、フルサイズである以上あり得ないです)と思いますよ。
Z 5ベースなら…多少安くなるけど、それ欲しいですか?