【夏休み】家族で栃木県の足尾に行ってきた その2 & 日光東照宮方面にも行ってきた

夏休み行ってきた栃木の足尾。

足尾銅山の遺構+妻の鉄オタ成分を満たすものといえばこれです。

銅山精錬所へかつて伸びていた貨物路線と踏切跡。すでに間藤駅から踏切間の線路は撤去されています。道路を挟んだ反対側は今でも線路が健在です。

鉄橋下の橋、2024年に見た時はてっきり撤去工事かと思っていたら、そうではなく橋の欄干を直していたんですね。

この先は立入禁止なのは今も変わりませんが、橋を直したということは、今でも古河機械金属が鉱山施設としてしっかりと管理している証でもあります。

2025年8月、欄干がきれいになった橋

間藤駅

妻が気になった間藤駅に行ってみました。ここが現在、第三セクターのわたらせ渓谷鐵道の路線の終着駅となっています。

駅舎はキレイですが、無人駅です。
実質的に、ここの住人や古河機械金属の社員さんが使うんでしょうね。

この前に旧精錬所跡まで見に行きましたが、時間の関係で車から眺めるだけにとどめました。また機会があれば、もう少し早くから撮影に出かけたいです。

日光東照宮へ

息子が日光東照宮へ行きたい、というので、行ってきました。流石にこちらは観光地だけあって、一気に外国人観光客が増えます。それでも車はなんとか停められるのが北関東でも北の方だけあります。

ここはまだ東照宮ではなく別の場所でしたが、東照宮はものすごいチケット待ちの列でして、どうしようかと思いましたが、30分程度並んでなんとか入れました。
今度は余裕を持っていきたいですね。

献上された酒樽、ええなぁ。みんな大好き新政もありました。

終了1時間前だったので、色々足早ではありましたが、まだ栃木に住んでいた頃に行った時は陽明門の改修工事中だったので、ちゃんと建物を見られたのは良かったです。

ということで、午後5時。まだ蒸し暑さの残る時間ですが、これで足尾・日光の日帰り旅はおしまい。

さて、帰りのルート、宇都宮方面経由で東北道で戻るか、また足尾・群馬経由で戻るか迷いましたが、ちょっと寄ってみたいところがあって、後者を選択しました。
その話はまた次回に。

【夏休み】家族で栃木県の足尾に行ってきた その1

もう先週の話をつらつら綴っていきます。

栃木県出身の妻、足尾に行ったことがないという。娘が修学旅行で足尾銅山観光に行ってきて、妻も行ってみたいということで、お盆休み中に行ってきました。

途中寄った群馬県の草木ドライブインで、まんじゅうやらを購入。

ここはレトロな昔ながらのドライブイン(ようはお土産屋+食堂)ですが、ここで買うよもぎまんじゅうやくるみまんじゅうが絶品(作ってい売っているおっちゃんも面白い)ので、ぜひ古き良きドライブイン、行ってみてください。
息子は瓶のコーラの自販機、初めて見たようです。

北上して足尾へ入ります。
この日の天気は曇り時々雨でしたが、運よく雨は降っていないので、観光バスでは行かないであろう足尾鉱山の遺跡を見てきました。

足尾の良いところは、ちゃんと解説の看板が立っていること。そして最近はQRコードも付いていて、更に詳しい解説も見られる…はずなのですが、電波がないwww、携帯電波が届かないんですよね

かつてこの斜面に建物があったとか、今となっては森に戻りコンクリの壁や階段が残っていてかろうじて分かる程度ですが、かつては栄えていたんですよね。
時代の移り変わりは早いものです。

続いて鉱山施設として今も稼働中のものと使われなくなったシックナーをご案内。

わたらせ渓谷鐵道の車両に、隠れ鉄オタの妻は興奮していましたが、ここが唯一、足尾でも近くで稼働している様子が見られるシックナーです。

続いて、自分も何度も足尾に通っているけど行くのは初めての足尾銅山観光へ。

トロッコに乗る、というのは知っていましたが、あくまでトロッコは鉱山内へ入るためのもので、通洞坑に入ったら、後は歩きながら見学なんですね。

トロッコの走行距離は意外と短いです。帰りは歩きです(笑) 

人形が…リアルすぎないところが返って良い味を出しています。よくぞこんなに掘ったものです。
そして明治から大正時代はほぼ人力、徐々に機械化されていくも、だんだん銅の産出量が減り、閉山に至るまでがよくわかります。

もっと早く来ればよかった

鉱山を出た後は資料館も見学できます。そして、長年この廃墟は何だったのか、ここにちゃんと資料がありました。

中央川沿いの今はない建物は溶接工場だった

こういう資料、先に見ておけば…昔の足尾の様子のジオラマ、手前の川沿いの赤い建物、あまり触れられているHPもなくなんだかよくわからなかったのですが、しっかり「溶接工場」と書かれていますね。

ここで2005年、今から20年前に撮影した溶接工場の写真をご覧ください。

この後この建物は老朽化による倒壊が進み、ついに取り壊されてしまいました。
ストリートビューには、2014年、半壊している様子が写っていますね。

現在取り壊された後には何かを建造している様子でした。写真、撮っておいてよかったです。まさに資料なんですよね。

お土産屋さんのは行っている建物はかなり古かったけど、賑わっていました。息子はアメジストを買ってもらいました。

なかなかレトロな食堂も併設されていましたが、それとは別に大食堂はすでに閉鎖されていました。

色々時代を感じさせますね。古い施設だけど、思ったより見応えはありました。
足尾は交通アクセスが良くないため、外国人観光客がほぼいないのが印象的でした。日本人で賑わっているのも今となっては面白い光景です。
外国人観光客がほぼいない理由の1つに、車がないとアクセスが難しい、日光のさらに奥で遠い、そして何よりも食堂など食べるところが皆無なんですよね。ほぼないんです。
この日も当てにしていた唯一の食堂が休みでした。コンビニも離れている上に、今年(2025年)の8月いっぱいで閉店だそうです。

そんなわけで、足尾に行く際は、食料は持っていったほうがいいですね。

続く…


2005年撮影の足尾の写真、他にもありますのでよろしければどうぞ↓

【五十嵐酒造】五十嵐 別誂 純米酒 無濾過生原酒 直汲み

五十嵐酒造のお酒、天覧山も好きですが、この特約店限定の「五十嵐」も好きです。ここのお酒はどれを飲んでも美味しいのですが、今回はさらに特約店でも置いているところが限られる別誂(べつあつらえ)です。

ピンクのラベルなので、何となく甘い系かなと、購入したお店のラベルを見ると、やはりやや甘口系のようです。
五十嵐シリーズは、定常販売酒である「天覧山」ベースの原酒を使用しています。天覧山の名は、五十嵐酒造がある埼玉県飯能市にある小さな山(標高197m)を由来としています。

アルコール度数もやや抑えた14度。ラベルにはありませんが、麹米に山田錦、掛米に五百万石を使用、精米歩合65%と程よく削っています。
生酒で要冷蔵。開栓注意です。日本酒度はラベルにはありませんが-2と中口~やや甘口、といったところです。さてどんな塩梅かな?

生酒で要冷蔵なので冷やした状態でいただきました。開栓するとポンとガスが抜けます。吹き出すほどではないですが、開栓注意です。
上立香は華やかな吟醸香。口に含むと…まず爽やかな微発泡のガス感とともに口いっぱいに広がるライチ系の瑞々しい甘味と酸味、とにかくみずみずしくフレッシュです。ただ甘いだけでなく、後半少し苦みと旨味、アタックがあり、スーッと引いていく。甘口寄りでありながら、後味まで引かないので、口当たりが良いですね。これぞ五十嵐の真骨頂です。
五十嵐は大好きですが、色々なお酒を試したく、最近買っていませんでしたが、やっぱり良いものは良いですね。


五十嵐酒造の五十嵐シリーズは特約店でしか買えません。お近くに特約店がないという方は通販でどうぞ。
↓は緑ラベルの別商品ですが、今度買ってみたいと思います。

Windows環境のDavinci Resolveを使ってHDR動画をYoutubeにアップする方法

Nikon Z9がNikon独自のRAW動画形式のN-RAW動画に対応してから、何度かN-RAWで撮影し、ここ最近は基本Z9もZ8も、動画撮影はN-RAWで動画画質は「標準」で、4.1KのSDRで撮影しています。
色々なやり方があると思いますが、自分なりに試行錯誤して、やっと4K HDR動画をYoutubeにアップできるに至りました。
やり方のWebや動画はたくさん出ていますが、どれも肝心なところが端折られたり(出来る人にとって当たり前のことは説明がなかったりします)、部分的な説明はあっても、撮ってから編集、出力しアップするまでの体系的なワークフローが載っているページはなかなかなく、Chat GTPやCopilotといったAIで質問したりしながら、やっと正解を見つけました。

ということで、ここでは備忘録として、N-RAW動画に対応したNikon Zシリーズのカメラで撮影したN-RAWをHDR形式でYoutubeにアップロードするまでの工程を書いておきます。
なお、当方の所有するカメラはNikon Z9とZ8ですが、N-RAWに対応する機種(Z6IIIやZ5IIなど)であれば、同じフローで出来ると思いますので、参考になれば幸いです。
動画編集はN-RAWに対応できるソフトが現時点(2025年8月執筆時点)Davinci Resolveのみなので(2025年内にAdobe Premiere Proが対応予定)、これをを使用します。
フリー版と有償版STUDIOがあり、私は最近有償版にアップグレードしましたが、無償版でも基本的には可能なはずです。
ただ、N-RAW動画を撮っていくと、ノイズリダクションなどは有償版STUDIOでないと使用できないため、感度が上がるような場面では有償版をおすすめします。

N-RAWで撮影する

ますカメラをN-RAWに設定します。私は以下の通りに設定しています。

  • 動画記録ファイル形式:N-RAW 12-bit(NEV)形式 SDR
  • 画像サイズ/フレームレート:4.1K [FX] (41288X2322) 60p
  • 動画の画質(N-RAW):標準(NORM)
  • オーバーサンプリングの拡張:ON

ここは最終的な出力のさせ方で変わってくると思います。

まずN-RAWはN-LogではなくSDRで撮影しています。
なぜかと言うと、最初からN-Logにしてしまうと、ISO感度はLo 0.3~Lo 2.0、およびISO 800~25600の間での設定となります。Loではハイライト情報が減少、ISO 800~25600では感度が高いため、日中晴れの環境だとシャッタースピードが上がりすぎてしまいます。また、感度があるのでノイズの面で不利です。画面も眠い表示になります(ビューアシストで通常の表示のようにすることは可能)。
N-RAWで撮ってしまえば、後でDavinci Resolve内でN-Logに変換することが容易なので、あえてN-RAW撮影時にN-Logは私は使いません。
もちろんこれは動画素人の個人的見解に過ぎませんので…

撮影サイズは、最終が4K出力であれば4.1Kが良いかと。4Kフォーマットより少し解像度があるため、編集時の電子的なぶれ補正やスームアップに多少余裕がありますね。
Z6IIIとかであれば6Kで撮るのもよいでしょう。

動画の画質は、私の使い方では標準(NORM)で十分でした。高画質にすると、倍近いビットレートとファイル容量となります。
4K60p 10bit H.265で約340Mbps、N-RAWの4.1K60p 標準で約880Mbpsなので、H.265比でおおよそ2.5倍のデータ量ではあるもの、グレーディング前提ならN-RAWは有効な手段と言えます。

オーバーサンプリングの拡張は、より高解像度のセンサから4.1Kへダウンコンバートするので、解像感の点で有利です。基本ONで問題ないでしょう。

Davinci Resolveのプロジェクト設定

ではDavinci Resolveで編集しますが、まずは設定から。

カラーマネージメントの設定

ここではカラーサイエンスをあえて「DaVinci YRGB Color Managed」ではなく、デフォルトの「DaVinci YRGB」を使用します。
あれれ、「DaVinci YRGB Color Managed」でないとHDR動画を作れないのでは? と思うかもしれません。
でもタイムラインカラースペースを「Rec.2020 (Scene)」、出力カラースペースをRec.2100 HLGとすれば問題ないことがわかりました。

カラーサイエンスはあえてデフォルトの「DaVinci YRGB」のまま、カラースペ^スのみ設定する

なぜ「DaVinci YRGB Color Managed」でHDR設定を使わないかと言うと、どうもバグなのか設定の仕方が悪いのか、字幕テキストが白に設定しているのにグレーがかってしまうからです。

「DaVinci YRGB Color Managed」でHDRに設定すると下の字幕がグレーに

「DaVinci YRGB」であれば、字幕などのテキストの白が白として表示されます。
恐らく10bit表示だと、白のRGB:255が、10bit階調の255/1024となってしまっているのではないかと思います。

「DaVinci YRGB」だと白い字幕は白として表示される

なので気持ち悪いですが、プロジェクト設定は上の画像のとおりです。
なお、HDR動画は大きく分けて2つの方式があり、PQ方式とHLG方式があります。前者のほうがよりHDRの効果がわかりやすいのですが、HDR非対応ディスプレイの場合、後者のほうがガンマカーブが変動するため互換性を高めることが出来るため、私はHLGを選択しています。
もっともYoutubeにアップする場合は、SDR環境ではYoutube側が自動的にRec.709に変換するため、どちらの方式でも問題ないようです。

なお、同じカラーマネージメントの設定内にあるHDR 10+などは使用しません。
また、その他の項目も、HDRで出力するという目的においては特に設定は必要ありません。カメラRAWもカラータブから行うため、プロジェクト設定では特に行いません。

【カラータブ】カメラRAW設定

さてまずはN-RAW動画データをメディアタブから取り込んでおきます。
次にエディットタブで動画データをタイムラインにコピーします。1つ取り込んだら、カラータブに移動します。

左下にあるカメラのマークをクリックすると、「カメラRAW」が表示されます。
ここではデコード品質は「フル解像度」、デコードに使用は「クリップ」ホワイトバランスは後で調整できるのでとりあえず「撮影時の設定」カラースペースを「Rec.2020」ガンマを「Nikon N-Log」に設定します。
こうすることで、撮影時にN-RAWのSDRで撮っていても、N-Logで撮ったかのような眠い画像が出てくるはずです。

カメラRAWを上記のように設定
こんな感じでコントラストの薄い眠い画像が出ればとりあえずOK

ではここから同じカラータブ内にあるノードの設定に移ります。

【カラータブ】ノードの設定

右上のノードとfxエフェクトをクリックすると、以下のようなのノード(左)とエフェクトのライブラリが現れます。ライブラリから、ResolveFXカラーのカラースペース変換をドラッグし、左のノードにドロップします。

右のResolveFXカラーから「カラースペース変換」をドラッグし、左のノードにドロップする

するとカラースペース変換の設定項目が表示されるので、下の画像のように設定します。

  • 入力カラースペース:Rec.2020
  • 入力ガンマ:Nikon N-Log
  • 出力カラースペース:DaVinci Wide Gamut
  • 出力ガンマ:DaVinci Intermediate

このやり方はNikonのN-RAWカラーグレーディング術から、映像クリエイター正垣琢磨さんの設定を参考にしました。こうすることで、より広いカラースペースで作業できるようです。

なお、ノードは任意の名前をつけることが可能です。ノードを右クリックすると、ノードラベルが出てくるのでクリックすることで、任意のラベル名を付けられます。ここではCST IN(カラースペース変換入力)としました。

ノードはノードラベル名前を表示できる

次にシリアルノードを追加します

シリアルノードは好きなだけ追加可能

次のノードはLUTを割り当てたり、各種カラーグレーディングを行います。なおノードはいくつか作って、項目ごとに個別に調整することもできます。
とりあえず私はまず1個シリアルノードを作ってさらにもう1個シリアルノードを追加します。この末尾のシリアルノード(名前はCST OUTとしておきました)にも、ResolveFXカラーのカラースペース変換をドロップします。

  • 入力カラースペース:DaVinci Wide Gamut
  • 入力ガンマ:DaVinci Intermediate
  • 出力カラースペース:Rec.2020
  • 出力ガンマ:Rec.2100 HLG

これがミソで、一番最初のシリアルノードで拡張したカラースペースを、最終的な出力としてRec.2020に、出力ガンマをRec.2100 HLGとすることで、この画像はRec.2020のカラースペースを持つHDR HLGとして出力できます。
このやり方は、先のNikonのN-RAWカラーグレーディングのページを参考にしています。主力カラースペースとガンマをRec.709にしておけば、HDRではなくSDRの動画として出力もできますし、出力ガンマをRec.2100 ST2084にすれば、PQ方式のHDR動画として出力もできます。

あれ、カラースペースはRec.2020なのに、なんで出力ガンマはRec.2100なのかと思うかもしれませんが、Rec.2100はHDR動画の規格名で、カラースペースはRec.2020を使用しています。このあたりが、元々プロの映像制作者向けなので、一般には分かりづらいですね。

このカラースペース変換のCST INはノードの一番最初に、間のノードは各々が自由に設定を割り当て、一番最後のノードにCST OUTを置くというのがポイントとなります。

カメラRAWやLUTを使って画像を整えていく

これだけだと、まだ画像は眠い表示のままです。

ノードはひとまず整えたが、このままでは眠いままの画像

ここからN-Logに変換した画像を整えていきます。
ただ、Nikonから提供されているLUTは、RED監修のものも含めカラースペースがRec.709用のみなので、カラースペースがRec.2020のHDR動画用には使用できません。
このため私はカメラRAWの調整項目で調整してみました。なお、調整する際は、CST OUTのノードを選択したうえで調整すると、最終出力される画像のヒストグラムやスコープを見ることが出来るので、必ず先に選択しておきましょう。

N-Logは白飛び、黒つぶれしないようなガンマカーブとなっているため、基本的には露出やコントラストを上げつつ、シャドウやハイライトを調整、ホワイトバランスを調整します。リフトは少しだけ下げておいくとメリハリが出てきます。

スチル写真を現像する後違い、動画は動くので状況がコロコロ変わります。プログレスバーを動かして、動画の変化でシャドウやハイライトが潰れすぎないかも確認します。
基本的にはヒストグラム上でハイライトとシャドウいっぱいまで画像を追い込まないことですね。ヒストグラムの左右がスカスカになっているくらいがちょうどよく、細かく見るのはスコープですね。

複数のカットに同じ設定をコピーする

さて、ここまでの作業を複数のカットに適用するのは面倒ですね。カット1つ1つ追い込むにしろ、この作業を何十ものカットがあったとしたら、日が暮れてしまいます(というかこれを書いていて日が暮れましたw)。
上の画像では5つのN-RAWのカットがありますが、1つ目のカットで適用したノードやカメラRAWの設定を他の残りの4つに適用します。

画像を右クリックするとメニューが現れるので「スチルを保存」をクリックします。

プレビュー画像を右クリックし、「スチルの保存」をクリックする

すると、右上のギャラリーに画像が表示されます。なお、画像が表示されない場合は「ギャラリー」をクリックすると表示されるはずです。

次に、まだ何も設定していないカットを選択します。ここでは、カット01のノードやカメラRAWの設定を、カット02~05に反映させてみましょう。

ここでは01で設定したノードやカメラRAWの設定を02~05のカットにコピーする

まずはカット02~05を選択します。

次に先程のギャラリーの画像を右クリックすると、「グレードを適用」が表示されるので、クリックします。

すると、選択したカット全てにノードやカメラRAWの設定が反映されます。暗かったカットのサムネイルが明るくなったのがわかりますね

ちゃんと別のカットにも反映されています

後はそれぞれのカットを細かく整えていけばOKですね。

デリバーでHDR動画を出力する

さて、動画編集そのもののやり方はここでは割愛します。タイトルや字幕を入れたり、エフェクトを加えたりなどの編集を終え、最終的に出力します。
この設定が肝心です。
YoutubeではHDRの動画は幅広い形式が扱えますが、推奨されている動画形式は

  • VP9 プロファイル 2
  • AV1
  • HEVC/H.265

とのことです。もちろん他の形式でもアップできます。一般的にはH.265が良いと思いますが、うちの環境ではグラフィックボードがAMD RADEON RX 7800Xで、AV1コーデックのほうが書き出しが早いため、そちらを使用します。

デリバータブをクリックし、カスタム書き出しをクリック、まずはフォーマットをMP4、コーデックをAV1とします。種類はうちの環境ではAMDしか選べませんが、GeForce系だと自動とかNVIDIAとかになっているかなと思います。ネットワークの最適化は「ネットワークでダウンロードが完了する前に再生できるようにするようエンコードのやり方を変えている」だそうで、一般的にはチェック入れる必要はないようです。

MP4のAV1コーデックがAMD RADEONの最近のGPUだと書き出しが高速です

なお、H.265の場合は以下のような設定になります。

解像度やフレームレートはプロジェクト設定のマスター設定で設定されたもので問題ありません。ここでは4K60pで出力するため、以下ようにタイムラインの設定のままで問題ありません。ちなみに…60pですが実際には59.64フレーム/秒となっているのは、テレビの歴史に由来するものです。
また、最初にDavinci ResolveにN-RAW動画を読み込ませた時点で、4.1k60pで撮ったN-RAWは59.94フレーム/秒に設定するか聞かれるかと思いますが、そのままで問題ありません。

そしてここが肝心なところですが、プロファイルのところを「メイン10」に設定しましょう

プロファイルは「メイン10」に

メイン10とすることで、10bitで動画出力できます。これが重要で、書いていないページの多いこと! 必ず設定してください。

詳細設定は、カラースペースタグやガンマタグは、予めプロジェクト設定で定義してあるので、ここでは「プロジェクトと同じ」で問題ありませんが、改めてカラースペースを「Rec.2020」、ガンマタグ「Rec.2100 HLG」「Rec.2100 ST2084」に設定しても問題ありません。
最高品質に…の2つは、とりあえずチェックしておきます。しなくてもあまり差は感じないですが。

あとはレンダーキューに入れてレンダリングします。

書き出したデータをMediaInfoでチェックする

Youtubeは動画データのビット深度が10bit以上、カラースペースがRec.2020で、HLGかPQのタグが付いていることがHDR動画の条件としています。
ただ実際に書き出したデータ、Windowsのエクスプローラーのプロパティではわからないので、ここではMediaInfoというソフトを使用します。

これをインストールし、このソフトに出来上がった動画ファイルをドラックアンドドロップします。表示は好みに応じてですが、個人的にはツリー表示が見やすかったです。
書き出したデータはこのように表示されました。

以下の項目を確認します。

  • ビット深度:10ビット(bit)であること(基本AV1やH.265コーデックでは最大10bitですが、ここが8bitになっていたら、レンダリング時にプロファイル10を指定したか確認しましょう)
  • 原色:BT.2020であること(カラースペースがRec.2020と同義で、HDRの条件の1つです)
  • 転送特性:HLGであること(これがHDRのタグで、HLG形式であることを示します。PQ形式ならPQと表示されます)
  • マトリックス係数:BT.2020 non-constantになっていること(non-constantとは luminance、つまり輝度を定義していませんということで、これは一般的な環境ではモニタ輝度がそれぞれ異なるため)

ここが1つでも違う場合は、Davinci Resolveのデリバーから設定を再確認してみてください。プロジェクト設定のカラーマネジメント設定も再度確認してみてください。

YoutubeにHDR動画をアップしてもすぐには反映されない

さてMediaInfoで問題ないことを確認したら、後はYoutubeにアップロードするだけです。
が、ここからが盲点で、あまり言及しているページがなかったのですが、YoutubeにHDR動画をアップしても、すぐにはHDRになりません。
今回作った動画も、Youtubeにアップロードし、4Kまでの動画処理が完了してから、半日以上経過し、やっとHDR表示になりました。
なので、HDRにならないなと思っても、半日から1日程度待ってみましょう。

HDRと表示されるまで半1以上かかった

もちろん、表示するにはPCならHDR対応ディスプレイが必要で、かつシステムの設定のディスプレイでHDRをONにしておく必要があります。

HDRをONにしないとYoutube動画もHDR表示にならない

HDR(HLG形式)のYoutube動画を右クリック→詳細統計情報を出すと、このようにColorの項目にarbis-std-b67 (HLG) / bt2020と表示されます。HDR環境ではないと、自動的にRec.709カラースペースとなり、bt709の表示になります。

HDRに非対応のディスプレイ、あるいは対応していてもWindows側でHDR表示にしていない場合は4K再生はできてもHDRと表示されません。

HDR対応でない場合はHDRにはならない

また最近のスマホであれば、ミドルクラス以上のモデルならHDR表示に対応している物が多いので、自動でHDR表示になるかと思います。

いかがでしたでしょうか? Nikon Z9/Z8やZ6III、Z5IIではN-RAW動画が撮れるので、ぜひこれを活用して、HDR動画をYoutubeにアップしてみては?
もちろん、H.265の10bit HLGでも撮れるので、これを編集するのが手っ取り早いのですが、せっかくのN-RAW、是非活用してみてください。
スチルでRAW現像をやってきた方なら、割とすっと入れるかと思います。


DaVinci Resolve Studio、単品で買うと5万円近い高価なソフトですが、DaVinci Resolve Speed Editorを買うとDaVinci Resolve Studioアクティベーションキーが付属します。
6万円強ですが、時々安売りすることもあるので要チェックです。
なおあまりに安いものはライセンスキーが付属しないものもあるのでご注意を。

横須賀で英45型駆逐艦「ドーントレス」とノルウェーフリゲート「ロアール・アムンセン」を見てきた【動画編】

2025年8月12日、英空母「プリンス・オブ・ウェールズ」は大きさの艦型で米海軍のバースに入りましたが、表題の英駆逐艦「ドーントレス」と、ノルウェーのフリゲート「ロアール・アムンセン」は海上自衛隊横須賀基地のバースに入港しました。

こちらも動画を撮りました。

動画は編集もさることながら、カラーグレーディングなどの知識がないと、N-RAW動画からの変換は難しいですね。
上の動画はそうやって試行錯誤した末のものです。
実はHDRでアップしたはずですが、どうもHDRにならないようです。HDRに再生可能になりました。どうやらHDR処理には時間がかかるようで、アップロードから半日程度経過しないとHDRにならないようです。

HDR環境があればHDRで再生可能です。Colorの項目がHLG/bt2020になっていますね

Media Infoでアップロードした画像は以下の通りになっています。

PQ形式を使っている人が多いようですが、SDR環境での互換性を考えてHLGを使用しています。
やっとHDR動画をアップできるようになりましたが、Windows環境でDavinci Resolveを使ったN-RAW動画をHDRでアップロードする方法、結構バラバラでまとまっていないので、近い内に備忘録としてまとめたいと思います。

スチルは今はWebでは8bitのJPG画像主体、10bitも対応可能なHEIFの普及はまだまだですね

写真のRAWの現像と比べると、色々設定するところが多く難しいですね。

横須賀で英空母プリンス・オブ・ウェールズを見てきた【動画編】

先日ヴェルニー公園で撮った、イギリス海軍空母「プリンス・オブ・ウェールズ」の入港シーンの動画です。

4K HDR版をアップロードし直しました

4年前のイギリス空母「クイーン・エリザベス」も米海軍側のバースに停泊していたので、こちらまで来ることはなく、頭が見えればいいかなと思っていましたが、予想通りそういう感じです。
とはいえ、日本のいずも型護衛艦よりはるかに大型なので、アメリカ海軍の駆逐艦越しに艦載機や艦橋の様子は垣間見ることが出来ました。

中にはフェリーに乗って航行中のプリンス・オブ・ウェールズを撮影したツワモノもいらっしゃるようで。

全体像は既にブログにアップしましたが、YOKOSUKA軍港めぐりの船から撮影できました。
したは4K解像度でアップした写真です。昔はWordPressで大きな解像度のアップロードは4K解像度までは上げられなかったけど(解像度が落とされた)、今はできるみたいですね。


横須賀で英空母プリンス・オブ・ウェールズを見てきた(その2)

予約していたYOKOSUKA軍港めぐりの11便に乗りました。
お盆休みに英空母来港とあって、この日の便はすべて満員御礼だったようです。

本当は右舷側に座りたかったけど、まあよいか。
この日は風が強く、動画撮影も試みたのですが、風圧でカメラがブレにぶれてだめだったので、船上では写真中心です。

フネは動くので、パッパッと撮っていきますが、なにせ風が強くって体が持っていかれる…。

ファンネルや船体に紋章やイラストが描かれたフネは海外に多いですが、主砲に描かれているのは珍しいですね。

ノルウェーとイギリス艦艇、停泊後の式典か何かがあったのかな、ずらりと人が並んでなにかの準備中でした。
海上自衛隊の艦艇は右から護衛艦まや(DDG-179)、護衛艦くまの(FFM-2)、そして護衛艦あまぎり(DD-154)、新旧入り乱れていますね。特に古いあさぎり型護衛艦は、まだ数年以上使われるようで。ご苦労さまです。

そして英空母HMSプリンス・オブ・ウェールズです。しっかりアメリカ海軍横須賀基地のバースに収まっていました。

艦載機も見えますね。いずれ高い場所から拝みたいですが、さて行けるかな? 実は8月末に抽選で見学ができるということで申し込みしましたが、執筆時点では結果が出ていません。当たったら見学、当たらなかったら松島基地航空祭かな、なんて思っています。

そしてさらに珍しいのが、何と攻撃原潜が停泊していたこと。

米海軍のヴァージニア級攻撃原潜「ミズーリ」(SSN-780)で、ヴァージニア級は初めて見ました。コネチカット州グロトンのニューロンドン海軍潜水艦基地所属ですが、横須賀に来ている目的は不明。船体にワイヤー状のものが巻かれているようで、消磁作業中でしょうか? 吸音タイルの継ぎ目が見えていて、それなりに痛みはあるようです。
この艦はヴァージニア級のBlockIIで2010年就役、15年経過していますが、現在アメリカでは原子力潜水艦の整備拠点が減って整備が間に合っておらず、ずっと整備待ちの艦艇があるくらいなので、こちらは酷使されていそうですね。

遠方に米海軍補給艦が。1隻離れて停泊中の潜水艦は「たいげい」で、最新型にも関わらず、試験潜水艦となっていて、新装備品のテストの従事しているそうです。
なぜ名前がっわかったかと言うと、ハッチの横に建てられた隊員の名簿が入った看板に「たいげい」と書かれていました。
もちろん作戦に従事する艦艇ではないから、見えても問題ないんでしょう。

掃海母艦「うらが」の窓に貼られた海将補旗(左の桜2つ)と第一代表旗(司令不在の意)

掃海母艦「うらが」(MST-463)の窓には、海将補旗(左の桜2つ)と第一代表旗が、第一代表旗は、司令不在を意味し、港内停泊時のみ使用されるものだそうです。
お盆ですしお休みなのか、陸でのお仕事があるのでしょうね。
この掃海母艦「うらが」、当初は機雷破壊用に退役艦から外した76mm砲を搭載する予定だったのが、砲の状態が悪く見送りとなり、以後搭載予定のまま28年を迎えます。
おそらく今後10年程度で退役するでしょうけど、後継艦の話は聞かないですし(なさそう?)、砲を搭載することも恐らくないでしょう。そのための人員と予算を確保してまで、といったところなんでしょうね。

新井堀割水路を通って戻ります。

その時時で見られる艦艇は違いますし、何なら入出港するタイミングのものも見られたりしますので、ぜひYOKOSUKA軍港めぐりを体験してみてください。

賑やかで観艦式のようでした。ノルウェーのフリゲートは、8月19日から22日にかけて東京国際クルーズターミナルを訪れる予定。行きたかったけど平日なんですよね。近くで見たいのですが。

横須賀で英空母プリンス・オブ・ウェールズを見てきた(その1)

2025年8月12日、横須賀にイギリス海軍空母「プリンス・オブ・ウェールズ」と随伴の45型駆逐艦「ドーントレス」、そしてノルウェー海軍のフリチョフ・ナンセン級フリゲート「ロアール・アムンセン」が入港しました。

ということで、前日は栃木県の足尾や日光東照宮に出向いていたのですが、その話はまた今度にするとして、先に横須賀の写真を。3時間睡眠で夜のうちに出発し、夜明けの横須賀へ。

天気は曇り、時々雨もぱらつく。東京湾へ入ってくる英空母プリンス・オブ・ウェールズをどこで撮るか悩みました。観音崎あたりか、馬堀海岸か。ただ天候が悪く、視程もいまいちかもしれないと思い、安牌のヴェルニー公園へ。ただ、ここからだと、英空母はどうせ米海軍側に停泊するだろうから、頭しか見えないかなと。
かといって某公園は既に脚立で場所を占領している輩がいて治安悪い。そこで撮りたくはない。煩わしいことは嫌なのでね。

日も昇り、と言っても曇りですが、先に護衛艦「ゆうぎり」が出港。かなり船体にサビが出ていて、任務が忙しいんだろうなと。昔はこんなにサビサビの状態の護衛艦にお目にかかることはまずなかったのですが。

朝撮った護衛艦「おおなみ」では真っ白の制服を着た隊員が登檣礼のスタンバイ。

そして午前8時、やっと英空母プリンス・オブ・ウェールズが入港しました。

予想通り、頭しか見えませんね。これは数年前に来た英空母クイーン・エリザベスと同様ですが、さすが空母だけあって船体が大きいので、米艦艇や建造物の隙間から、艦載機はよく見えました。統合電気推進の通常動力空母で、アイランドを前後に分けているのが独特ですね。
英国の艦艇はかっこいいですね。

動画はXにNikon Z9のN-RAWで撮ったときに同時生成されるHDプロキシ動画を貼っておきました。N-RAWの動画データは後で編集してYoutubeにアップしますね。

1時間弱経過後、随伴艦である英駆逐艦ドーントレスが入港。こちらは空母を守るための艦隊防空を任務として、日米のイージス艦と同様、長射程の防空ミサイルアスター30を搭載しています。

こちらは海上自衛隊側のバースに入っていきました。

こちらもXにプロキシ動画を貼っておきました。

英45型駆逐艦は防空艦ですが、既に各国トレンドになっている3~4面固定アレイではなく、回転式のレーダーを搭載しています。
でも船体が今どきのステルス艦型なので、古臭さは感じないのが不思議です。

煙突部分に入っているマークについては、軍事評論家の岡部いさく先生が解説されています。

こういうマークは欧州の艦艇ではよく見られます。

続いてノルウェー海軍のイージスフリゲート、ロアール・アムンセンが入港。

主砲には熊のマークが。こちらも岡部いさく先生が解説されています。

こちらはあまり詳しくはわからなかったようです。どなたか取材で明らかにしてください(笑

フリチョフ・ナンセン級フリゲートはスペインのイージス艦をベースとしているものの、レーダーがフリゲート用の小型のSPY-1Fを搭載していて、他のイージス艦よりも探知距離は低下しています。採用例はこの艦型のみです。既にAESAレーダーが主流の中、古いPESAはあまり魅力に写らなかったのでしょうね。
搭載ミサイルもSM-2のような長射程の艦隊防空用ではなく、個艦防空レベルのESSMとなっています。

こちらも簡易に入港シーンを。

小型化したSPY-1Fレーダーとはいえ、パッシブなので内部は導波管でそれなりにスペースをとっていると思われます。結構頭でっかちなマストです。

これらの海外艦艇のホストシップだった護衛艦「てるづき」も入港しました。

この後はあらかじめ予約していたYOKOSUKA軍港めぐりの船に乗ってきましたが、その写真は次回に。
この日の軍港めぐりは全席満員御礼だったようです。夏休み期間ですしね。

【松屋酒造】流輝 (るか) 純米吟醸 山田錦 針金屋別注

久しぶりに、針金屋加藤酒店に行ってきました。
ここの店主自ら手詰で組んだ、ここだけのお酒です。

ベースはタイトルの同名のお酒ですが、別注では醪(もろみ)を絞る最初の部分である「あらばしり」と、最後にギュッと酒袋を押して絞る「責め」を混合して手詰めしたお酒となっています。
一般に荒走りの部分は、雑味が少ない若々しく繊細な部分、そして最後の責めはギュッと絞るので苦みや雑味といった部分が表に出てきます。
これらを混合したということで、どんな味わいになるか楽しみなお酒ですね。

スペックとしては、酵母は非公開、アルコール度数は15度と一般(ちょっとだけ低い)。おりがらみの生酒、もちろん要冷蔵。
ロットによっては吹き出しがあるかもしれないようです。冷やしていただきましょう。

澱を絡めると濁りは強め

開栓、とりあえずガス感はなく吹き出しはなし。
上立香は洋梨のような濃厚な甘みです。注ぐと澱が絡んでいい濁り具合。口に含むと…えええ、このトロッとした感触、そして甘みはまるで飯米かのような糖度の高い、甘酒を彷彿とさせます。洋梨のような甘み、だけど後味にちょっと大人びた苦みとアタックがあり、余韻は長め。とにかくとろっとした感触がまるで果汁100%の洋梨ジュースを思わせる丸みのある甘み。
酒米は定番の山田錦なのに、まるで飯米のような膨らみのある甘みば独特で癖になります。
今回の別注、見事です。これは他では味わえないです。
諸事情で四合瓶を買いましたが、一升瓶で買いたいですね。


通販では通常の流輝 純米吟醸 山田錦を購入できます。別注がこんなに美味しいなら、通常版も美味しいに決まっています。

オーストラリア海軍が次期フリゲート艦に改もがみ型を選定、どんな艦艇になる?

先日、オーストラリア政府より、アンザック級フリゲートの後継艦として、日本の改もがみ型護衛艦が選定されたことが発表されました。


アンザック級は1990年代から2000年代に就役し、初期の艦が間もなく30年を経過することから(1番艦は後継艦導入費用にまわすため2024年に退役)、後継艦の選定が行われていました。


候補しとて名乗りを上げたのが、日本の改もがみ型以外に、ドイツのMEKO-A200ないし改良型のA210型、韓国の大邱(テグ)級フリゲートのバッチ2または3、スペインのAlfa3000型の4か国です。

このうち最初の選定で韓国とスペインは脱落となりました。
韓国は、海軍に関しては対北朝鮮を念頭に90年代初頭までは比較的小ぶりのコルベットやミサイル艇中心だったものが、この四半世紀でより外洋志向の海軍にシフトし、近年は自国兵器の輸出も積極的に行っています。
が、他の3国と比べてフリゲートクラスの水上艦はまだ実績が少なく、大邱(テグ)級はVLS(ミサイル垂直発射装置)が韓国製ミサイル専用K-VLSで汎用性に欠けます。
船体が小さく乾舷が低めで、外洋での航行に支障が出そうな点や、米国製のMk.41 VLSへの改装に問題もあるかと思います。
レーダーも回転式の3次元レーダーSPS-550Kで、アンザック級は途中でCEAFAR多機能レーダーに改装しているため、多機能レーダー搭載となると改装のための開発費用や船体の小ささがが不利です。
またこのクラスは推進軸の不具合が出ていること、乗員人数が140名とサイズのわりに多いことも選定から漏れた理由でしょう。

スペインは元々海軍国家で艦艇輸出にも力が入っている国ですが、提案したAlfa3000型ははまだ実艦艇が登場していません。完成CGを見ても何となく野暮ったく見えるのと、船体もアンザック級と大きく変わらないか小さいようで、航続距離や外洋航行性能でオーストラリア海軍の要求を満たせなかったものと思われます。実艦がまだないということは、開発から建造までに時間がかかることで、これも早く代替艦が欲しい、遅延はあってはならないという思惑にも合致しなかったでしょうね。

日独案の一騎打ちに

最終的にドイツと日本の一騎打ちとなりました。
ドイツは古くから兵器輸出に力を入れており、現在のオーストラリアのアンザック級フリゲートも、ドイツのMEKO-200型ベースです。
そのため、今回も艦艇の輸出経験がない日本よりも、経験豊富でかつアンザック級と同じ流れを汲むドイツが有利ではないかとも言われていましたが、ドイツが提案していたMEKO-A200型は、MEKO-200型の後継と言われつつもつながりは薄く、設計がやや古い上に南アフリカやエジプト海軍といった小規模採用しかなく、これらの艦艇は米国製ミサイルを搭載していないため、米国製Mk.41VLSを搭載するとなると、VLS周りの設計変更が必要です。そしてMEKO-A210型は現時点で実艦艇が存在しません。
レーダーもMEKO A-200型ではどの国も3次元レーダーが回転式で多機能レーダーは搭載していません。写真を見ても、アンザック級とほぼ同じサイズとはいえ、かなり小型の艦艇で発展性に乏しい、つまり重量がかさむ多機能レーダーの搭載は出来なくはなさそうだが、余裕もなさそうです。

アルジェリア海軍のMEKO A-200「エル・エルラディ」級フリゲート
Wikipediaより引用 Merzoug Gharbaz – 投稿者自身による著作物, CC 表示-継承 4.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=43358393による

対する日本が提案した改もがみ型は、ベースとなったもがみ型FFMは既に8隻が就役(2025年8月時点)で4隻が建造または艤装中、既に改もがみ型FFMの建造にかじを切りつつあり、2025年度内に1番艦の起工が予定されています。しかもこの中から既に豪海軍向けに建造割り当てを行っています。これは今回の販売競争で官民一体で尽力した成果の1つですね。確実に前回のそうりゅう型潜水艦輸出失敗の教訓が生きているでしょう。

防衛省の資料 https://www.mod.go.jp/atla/pinup/pinup050825.pdf より引用


ハードウェアに目を向けると、他国の提案より大型の基準排水量4,880t(満載排水量は6,200t)、これは他国提案艦艇が4,000tに満たない満載排水量からするとかなり大型で、まず持って余裕が違います。
UAV,UUVの運用能力が最初からあり、かつ多機能レーダーも最初から搭載しています。32セルのVLSを搭載、もがみ型譲りの長い航続距離(1万海里≒18520km)が決め手でしょう。
もがみ型で欠けていた対空戦闘能力の強化、多機能ソーナー搭載で、バランスの取れた戦闘能力を備えています。
今回、オーストラリアはハードウェアにはできるだけ手を付けない、という方針だったようで、つまり他の案ではハードウェア的に満足できなかったとも言えます。一般に戦闘システムなどは後から改装可能だとしても、レーダーやソーナーといった装備は改装が大掛かりになるためです。
特に対潜能力はオーストラリア周辺、特に中国やウクライナ情勢といった安全保障状況の変化もあり、今後重要視していく部分で、ここは海上自衛隊が昔から力を入れていた分野でもあります。

またもう1つの決め手は建造ペースが西側でも早い部類に入る年2隻以上で、2029年に1番艦を導入したいオーストラリアにとっては、すでに改型の船体設計が出来ていていることは有利に働いたはずです。
加えて、もがみ型では省力化に力を入れており、乗員わずか90人で運用可能です。これは従来の同規模の艦艇より少なく、例えばもがみ型より船体が小さい「あぶくま」型護衛艦ですら120名、アンザック級で約160~170名なので、如何にもがみ型が省力化に尽力したかがわかります。ただ新型FFMは搭載兵装も増えるため、乗員も多少は増えるかもしれませんが、それでも省力であることに変わりありませんね。どこの国も今は少子化により海軍を志す若者も減りつつあるため、省力化は重要なテーマですね。
米国製で三菱重工がアメリカ以外で唯一ライセンス生産を行っているMk.41 VLSを搭載、しかも日本の護衛艦は、これまですべてのMk.41 VLSでStrike-Lengthというもっとも深さのある大型のものを搭載しているため、トマホークやSM-6のような大型なミサイルを装填可能です。
こうした点や将来拡張性、そして日本との防衛安全保障関連強化を考慮した結果が選定に繋がったと考えられます。

また、今回の選定理由はオーストラリアの政府の公式発表で明らかにされていて、

  • 生涯を通じて、もがみ型の運用コストは他の3つの提案よりはるかに低い
  • 2029年に最初のフリゲート艦が引き渡され、2030年に就役するという政府のスケジュールを満たすための唯一の選択肢
  • 改もがみ型の生産枠3隻分を既にオーストラリア向けに割り当てている
  • トマホーク巡航ミサイルを発射する能力

としています。元々アンザック級の後継として導入予定のハンター級の設計不具合やコストアップ、遅延が問題になっているため、改もがみ型に期待しているのでしょうね。

改もがみ型ベースのどのような艦艇になるのか?

オーストラリアは改もがみ型をそのまま輸入するのではなく、日豪共同開発とし、豪政府の要求に合致する形で仕様を変更します。
これは単純に武器を輸出できないが共同開発なら可能とする日本の法律と、アメリカ製のミサイル等の兵装や戦闘システム、豪海軍規格を用いて導入したいオーストラリアの思惑と一致します。
現時点でオーストラリア政府より発表があった改もがみ型ベースの新型フリゲートの概要は以下の通りです。

  1. 11隻建造、うち最初の3隻は日本国内で建造、残りをオーストラリアで建造
  2. レーダーなど基本的なハードウェア、装備品は極力改もがみ型を踏襲する
  3. SM-2/SM-6スタンダード対空ミサイル?(←後述)やトマホーク巡航ミサイルを搭載する
  4. 戦闘システムはロッキード・マーチン製を採用
  5. 2029年に1番艦を受領し、2030年に就役、3番艦は2034年までに就役

1.は前述の通り、既に3隻分の改もがみ型FFM建造スケジュールが豪海軍向けとして割り当てられているとのことです。現在、冷戦終了後の費用削減のツケが回ってきていて、西側の多くの国で設計建造能力が低下している中、日本も護衛艦を建造可能な造船所はこの30年で減らしつつも、何とか年2、3隻建造できる能力があります。
オーストラリアは遅延のない建造計画を求めていて、これに応えられるのが改もがみ型しかないということでしょう。
1番艦は2029年に引き渡し、恐らく米国製戦闘システムのテストなども必要になることから、1年テストに充てて、2030年豪海軍で就役すること目標としているようです。

2.は前述の通り、ハードウェアに手を付けないことで極力開発費増加と遅延を抑えるということでしょう。ハードに手を付けてしまうと、船体その他再設計が必要です。つまりレーダーはOPY-2もしくはその発展型(恐らく自衛隊向け23式艦対空誘導弾A-SAM搭載に合わせて捜索距離を強化するはず)をそのまま採用すると思われます。

3.ここが原文を読んでいて一番わからなかった部分で、原文にある

「新しいステルスフリゲートには、SM-2/SM-6ミサイル(筆者注:長射程の防空ミサイル)を発射する能力がある」としています。これは既にオーストラリアで就役しているホバート級イージス駆逐艦にある運用能力ですが、元々イージスシステムを搭載しないもがみ型や改もがみ型では運用能力がないため、前後の文脈から単純にオーストラリア海軍全体の運用能力としての話なのか、改もがみ型の話なのかが分かりづらいです。new stealth frigateという文脈でいうと、ホバート級はdestroyer(駆逐艦)なので、ハンター級フリゲートの話をしているのかもしれませんが(ハンター級はSM-2ミサイル搭載予定)、それならあえてnew stealth frigateと呼ばずハンター級と呼ぶはずですし、腑に落ちないですね。

改もがみ型のMk.41 VLSはStrike-Lengthなので、単純にミサイルを搭載するだけであれば、SM2/SM-6も搭載可能です。ですが、戦闘システムがそのままでは対応せず、また後述のロッキード・マーチン線戦闘システムにSM-2/SM-6運用能力を持たせたとしても、国産のOPY-2レーダーとのインテグレーション(適合確認)が必要ですし、射程を活かせるとも思えませんので、この話は管制能力はないが、ホバート級イージス艦からの管制で発射は可能を意味するのか、よくわからないところです。

ただ、明確にトマホーク巡航ミサイルは載せるとしていて、元々トマホーク武器管制システムは戦闘システムと別の個別のシステムなので、これは可能でしょうね。

4.は、公式発表での豪国防大臣の発言によれば「戦闘システムは実際にはロッキード・マーチン製」とのことで、実は元から純国産ではなくロッキード・マーチン製であると読み取れます。ただし戦闘システムの翻訳は必要としていて、この翻訳とは文字通りの言語の翻訳なのか、それともシステムを理解するうえでの「翻訳」なのかはさておき、気になるのは「実際にはロッキード・マーチン製」と言う文脈で、元々もがみ型護衛艦の戦闘システムにロッキード・マーチンが関わっているとするならば、そこが選定理由の1つになった可能性は高く、つまり日本製のミサイルだけでなく、アメリカ製のESSMの搭載もスムーズにできると思われます。
改もがみ型は対空ミサイルを国産A-SAMとしていますが、実はESSMも搭載運用可能なのかもしれません。A-SAMはESSMよりも射程が長く大型でVLSの1セルあたりの搭載は1発(ESSMのような1セルに4発入るクワッドパックは不可能)なので混在の可能性はありそう。
そうなると、オーストラリアの改もがみ型はVLアスロックは積まないので、32セルのVLSにSM-2/SM-6とESSMの混在搭載する可能性はあるでしょうね。
戦闘システムだけ日本向けの改もがみ型と別のものを載せるとなれば、そこの開発やインテグレーションも時間と金がかかりますが、戦闘システムとは三菱電機製OYQ-1情報処理装置を搭載しているもがみ型も、辿っていくと戦闘システムの一部にはロッキード・マーチン性を採用しているのかもしれません。このあたりは素人にはさっぱりですね。

5.はもっともオーストラリア海軍が望んでいることで、ハンター級フリゲートの失敗の二の舞いになりたくないという強い現れでしょう。
次期潜水艦などとにかくいろいろな話が二転三転し遅延する状況では、今回のフリゲート取得は絶対に失敗できない事案でしょう。

以上よりあくまで推察ですが、オーストラリア海軍の改もがみ型ベースの次期フリゲートは

  • 船体やレーダー、ソーナー、主砲は改もがみ型護衛艦と同一
  • 巡航ミサイルとしてトマホーク搭載
  • 対空ミサイルはESSM、SM-2/SM-6も搭載
  • 対艦ミサイルは日本製の17式艦対艦誘導弾ではなくNSM
  • 短魚雷発射管は多分そのまま日本製(オーストラリアが要望する物に改装も比較的容易)
  • SeaRAMはオーストラリアで採用実績がないが今更ファランクスにすることもないのでそのまま
  • OYQ-1戦術情報処理装置はオーストラリアの要望するロッキード・マーチン製へ変更(共通コンソールも日本製ではないものになる?)
  • UAV,UUVはオーストラリアが独自開発?

なんて思っています。こちらの記事もなるほどと思いました。
いずれにしろ、今後の交渉でどんな形に仕上がるのか楽しみですね。

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