新旧NIKKOR 35mm撮り比べをしてみた【最短撮影距離編】

シリーズ「新旧NIKKOR 35mm撮り比べをしてみた」

KhodaaBloom RAIL DISC EX LIMITEDにTOPEAKのQUICK TRACK対応リアキャリアを装着、50cmの長いカゴを取り付けることで、撮影機材などを柔軟に運搬でき、必要に応じて簡単にカゴを取り外せるシステムを構築。
ロードバイクではないのでスピードや重量はそこそこですが、こういう使い方に適したクロスバイクも面白いですね。

今回のテーマは最短撮影距離です。
最近のズームレンズは最短撮影距離が随分近くなりましたが、大昔は全然寄れなかったのを思い出しました。
35mmの単焦点レンズは昔から割と寄れるレンズでしたが、ここでは各レンズをMFで最短撮影距離で撮影してみました。

最短撮影距離が短いから撮影倍率が大きいわけではないのがレンズの面白いところ。
ここでは先に実際の撮影倍率を書きますが、

AF-S NIKKOR 35mm f/1.8G ED AI AF Nikkor 35mm f/2DNIKKOR Z 35mm f/1.8 S >> NIKKOR-S Auto 35mm F2.8

という順番になりました。カタログスペック通りの結果になりました。AF-SとAI AFは0.25倍、Zは0.19倍、Autoは調べましたがわかりませんでした。Autoは当時のNikonカメラガイドにも書かれていないんですよね。
うちにあるカメラガイドのスキャン抜粋。曲がっているのは御愛嬌w

1971年当時のNikonカメラガイドにNIKKOR-S Auto 35mm F2.8に最大撮影倍率の記載はない


そして意外にも、わずかに最新のZの撮影倍率は少し劣るようです。が、これはわずかなさで、Autoとの差が大きといったところです。
ただ、どのレンズも一般的な撮影では使い勝手が良く、寄れないなと感じることはあまりないと思います。

NIKKOR-S Auto 35mm F2.8

Nippon Kougaku銘ではなくNikon表記となった後期型の本レンズ、最短撮影距離は0.3mで、当時の50mmよりも寄れるので、様々なスナップ撮影で便利に使えます。
比較すると、新しい世代の35mmより最大撮影倍率は劣るものの、実写ではここまで寄れればまず問題ないくらいに使い勝手もよいです。

やはり世代の新しいレンズと違い、最短撮影距離付近では少し解像力は落ちる感じでしょうか。ちょっとボケにざわつきも。
でも絞るほどにキリッとして来るのはさすが、この時代のレンズは絞って使う、というのがセオリーでしたが、f11辺りまで絞ると本当によく解像しますね。
もう60年近く前のレンズなので、オールドレンズと言って差し支えないですが、いかにもオールドレンズな写りというのを期待すると、普通にまともに写るので拍子抜けするでしょう。でもこれが本来のレンズの正しい方向性だと思うのですが。
開放ながら、コントラスト低下もほぼないのもこのレンズの隠れた凄さです。

この写真の撮影時、ちょうど薄曇りになってしまったのはご容赦ください。

AI AF Nikkor 35mm f/2D

実は今回の4本の35mmの中で一番寄れるレンズ。最大撮影倍率0.23倍です。このぐらい寄れると、背景もぐっとボケるので、二線ボケも開放では返って気にならないくらいです。
一般的な撮影距離では少しだけボケが硬いかなと思っていたこのレンズ、割と接写で柔らかくなりますね。中途半端に絞ったときのほうがちょっと硬さが出ます。

実はこのレンズでももうちょっと接写では収差があってコントラスト低下があるのではと思っていたら、良い意味で裏切られました。絞っても回折の影響はあまり感じないですね。Autoもよく写るけど、このAIAFのDタイプ世代は30年近く新しい(と言っても80年代の光学設計!)だけに、更に洗練されていると思います。
欠点は前回も書いたようにMF操作性がスカスカで、細かい調整では引っかかりがあるということ。ボディ内モータによるAF駆動で、フォーカスリングがAF時も回ってしまうタイプゆえの欠点ですね。

AF-S NIKKOR 35mm f/1.8G ED

AIAFと同じ最大撮影倍率0.23倍で、スペック通りほぼ同じくらい寄れます。AIAFよりやはり30年近く新しいだけに、大きな差はないものの、わずかにボケ味が柔らかくなっている気がします。特に絞った時のボケの硬さは絞るほどに差が出てきて、AF-Sのほうが絞ってもボケが柔らかいのは、円形絞りになった恩恵でしょう。
画質も開放から安定しています。

最近はもっと寄れる単焦点レンズも多いですが、多分そこまで無理をしないことで、描写の安定性重視なんでしょうね。
全絞りで安定していますね。そしてボケとピント面の繋がりがとても良いです。
ホントこのレンズ1本あればいろんな撮り方が出来ますよ。

NIKKOR Z 35mm f/1.8 S

先輩AFレンズより少し最大撮影倍率が落ちて0.19倍の最新NIKKOR Zですが、開放でもピント面はしっかり解像し、ボケは柔らかく、絞ってもボケの柔らかさは保ちつつ被写界深度が深くなる、というレンズの理想がちゃんと再現されています、最短撮影距離でも。なかなかセオリー通りにはならないのがレンズの面白いところですが、ここまで完璧に写ると面白くない、と言われてしまうのが悲しいところ。写りすぎてしまうのが最近のレンズ、でもこれが技術の集大成なのだから。

サムネサイズでも明らかにボケがしっとり柔らかくなっているのがわかります。絞りの枚数がAF-Sの7枚からNIKKOR Zでは9枚円形絞りになったのも効いているのかもしれませんが、Zマウントの大口径を活かした光学設計ができるのも効いているのでしょうね。
一番最初に出たZマウントレンズは、7年たった今でも素晴らしい性能であることに違いありません。これ、次のモデルの設計担当者はなかなか大変でしょうね。


4本撮り比べて思ったのは、やっぱり新しいほどに最短撮影距離付近の描写も良くなっていること。大きな差ではないですが、今時のレンズは最短撮影距離も重視されているんだなぁと。
ただ新しいとはいえ、安価なNIKKOR Z 40mm f2.8は最短撮影距離ではもう少し解像力やコントラスト低下があるので、ある程度光学系に金をかけられるか否かでも変わるんだなぁと思った次第。
Z40mmもちょっと古い写りが返って心地よかったりもします。
そのうちZ40mmとZ35mmを撮り比べするのもやってみたいですね。