なぜ復活? Nikon COOLPIX P1100 巨大コンデジのニッチな需要

2018年9月に販売開始された、35mm判換算24-3000mmという光学125倍ズームレンズを搭載するNikon COOLPIX P1000ですが、長い事販売され続け、2024年2月末頃に販売終了、後継機は発表されず、NikonのコンパクトデジカメシリーズのCOOLPIXも残すところP1000の弟分のCOOLPIX P950(24-2000mmの高倍率ズーム搭載)のみとなってしおまい、いよいよNikonのCOOLPIXも幕を閉じるのか…と思われました。

コンデジなのにコンパクトじゃない、巨大コンデジ(笑)のCOOLPIX P1000

2025年2月、突如P1100として復活

そして2025年2月、1年間のブランクを経てCOOLPIX P1100として復活しました! もうCOOLPIXは新規開発することもなく、P950がシュリンクしていけば終了と思われただけに、この復活は興味深いものがあります。
というのも、COOLPIX P1000と後継のP1100はほとんど同じだからです。

COOLPIX P1100の公式画像、上のP1000との違いは…画像ではわからない

ではP1000は6年近く販売されたあとディスコンとなり、1年後なぜP1100として復活したのか? という個人的な考察です。

光学ズームで換算3000mmは唯一のカメラ

元々コンパクトデジカメでは、こうしたスタイルのカメラは「ネオ一眼」とよばれ、レンズ交換は出来ないものの、一眼レフカメラのような見た目でそう呼ばれていました。
そして特徴として、コンパクトデジカメと言われつつも、搭載レンズが大きくレンズ交換式一眼カメラに迫るサイズ、物によってはレンズ交換式のほうがコンパクトではないかというくらいに大きなものも存在しました。

搭載レンズが大きいので、見た目は標準ズーム搭載のレンズ交換式一眼カメラよりむしろ大きいくらいのP1000


コンパクトデジカメに分類される由縁は、レンズ固定式であること、イメージセンサが小型であること(概ね1インチ以下)で、イメージセンサが小さいということは、レンズも小型化や大口径化、高倍率ズーム化が図れるということになります。その中で高倍率化に振ったのが、COOLPIX P1000やその後継となるP1100です。
かつてはこうした高倍率ズームを搭載したコンデジは各社から発売されていましたが、スマホのカメラの高画質化によるコンパクトデジカメの販売減少に伴い、カメラメーカー各社は次第にラインアップを減らしていき、Nikonは最近までP950の1機種のみ、他社も数機種を残すのみで、どれも発売から年月を経た製品が多くなっています。

そして、「ネオ一眼」コンデジの中でも高倍率ズームでは、望遠側は2000mmまで、と言う製品が多かった中、P1000では3000mmの超望遠撮影が可能となりました。
では3000mmというとどんな写真が撮れるのか? 下はP1000やP1100ではなく、1インチセンサのNikon 1とAF-S 600mmに2倍テレコンで35mm判換算3240mm相当で我家のベランダから撮影した富士山山頂付近で、登山ルートや山頂の建物が見えます。参考として、600mmで撮った写真が右側です。

Nikon 1 J3 + FT1 + AF-S NIKKOR 600mm f/4G ED VR

これだけの写真を撮るのはレンズ交換式では価格的にもサイズ的にも容易ではなく、これを1台のカメラで完結できるCOOLPIX P1000やP1100はたしかにインパクトが有りますね。
更に動画撮影となると、家庭用ムービーでもある程度は撮れたのですが、現在はスマホに押されて需要が減り、機種も少なく風前の灯です。今はテレコンを使っても換算1200mm程度ですね。

SONY FDR-AX60

センサや処理エンジンが古く、4K30pまでとはいえ、P1100で超望遠動画が撮れるのも魅力ですね。

現物は写真で見るより大きいですホント…

実際、撮影現場でP1000を使っている人ってちょくちょく見かけるんですよね。
航空祭でも必ず見かけますし、それでスチル撮っている人もいれば、外部マイクつけて動画を撮っている人もいます。3000mmの超望遠動画ってなかなか撮れないですから。しかも単焦点ではなくズームレンズで。
野鳥撮影で使っている人も多いですね。PHOTOHITOでCOOLPIX P1000の写真を見ると、野鳥の写真が多いのがわかります。

早くも初期販売分は予約が埋まった模様

現時点で、ニコンダイレクトでは、初期販売分の予約は埋まってしまったのか、最近新発売でよく見るお知らせが出ています。

「COOLPIX P1100【クーポン配布中】」は想定を超える大変多くのご注文をいただいているため、お届けまでお時間をいただく場合がございます。 予めご了承くださいますようお願い申し上げます。

だそうです。(2025年2月執筆時点)
既にP1000を持っている人も、年式的にそろそろ古くなってきているので、買い替え需要もそれなりにあるでしょうね。

こういうカメラは一定の需要はあれど、数が出る商品でもない、でも必要な人は欲しい、そういう商品なので、去年販売終了、中古価格は値上がりし、どこかのフリマではものすごい価格になっていました。

ちょっと前の新品価格を超える某フリマ価格

もちろん、後継機が出ない状態だったので、欲しい人は欲しい、けどフリマでしか買えないのでこんな状態でしたが、P1100の発表で一気に死亡するでしょう。今すぐどうしても欲しいとかでない限り、P1100の新品価格のほうが安いですから。
近年のフリマはこんなのばっかでしたので、Nikonさん、P1100はグッジョブでした!

変わったのはUSB Type-C採用などごく僅か

ほとんど進化していないP1100ですが、これで十分との判断なんでしょう。すべて新規開発となると、開発工数、各種認証試験が必要で、恐らくそこまでしてまで新規開発して売っても開発費を取り戻せない程度にしか売れないからなんでしょうね。
P1000からP1100へのモデルチェンジに当たって変化している点を掻い摘むと以下の通りです。

  • 本体のUSB端子がMicro-BからType-Cに変更(欧州では充電ポートをType-Cへ統一する条例が施行されたことによる)
  • BluetoothがVer4.1から5.2に(LEのデータ通信速度高速化と通信範囲増加)
  • 内蔵フラッシュがの調光範囲がやや近場寄りに(広角側で0.5mから0.3mに)
  • 無線LANの認証方式がWPA3-SAEに対応(ただし無線規格は802.11b/gのまま)
  • 手ブレ補正効果が5.5段(CIPA規格準拠)から4.0段(CIPA2024規格準拠)に変更 ※規格が変わったことによる測定方法の変更による影響でVR機構に変更はないと思われます
  • 比較明合成に [夜景と光跡 ] [星軌跡] [花火] が追加
  • 「鳥」モードで、AFエリア選択が可能
  • 本体充電ACアダプター付属から別売りへ(これも欧州の充電器のType-C統一による影響と思われる)

重量の微妙な変化はType-C化による端子周りの変化とかでしょうね。連続撮影枚数も微妙に変わっていますが、これも誤差範疇でしょう。
ほぼマイナーチェンジ程度の改良しかないですが、必要な人には必要な唯一のカメラというのは、同じコンデジでカテゴリは違えど、RICOHのGRシリーズやFujifilmのX100シリーズのようにオンリーワンなものが日本のブランドのコンデジでは今後も支持されていくのでしょうね。