Nikon Z 9 + AI Nikkor 50mm f/1.2S

Zのボディを手に入れたので、いつかは欲しいと思っているNIKKOR Z 50mm f/1.2 S。ニコンプラザで試写した写真を見て度肝を抜かれたわけですが、入手はもう少し先になりそうということで、まずは一般スチル写真用ではFマウントで最も明るい、AI Nikkor 50mm f/1.2Sを試してみました。

Nikon Z 9 + AI Nikkor 50mm f/1.2S

オートニッコールと違って、AIニッコールは、一眼レフであればAIガイド搭載ボディであれば、レンズの絞り値をボディに機械伝達できますが、Zボディに於いては、残念ながらマウントアダプタのFTZやFTZ IIにはAIガイドは搭載されていないため、撮影時の絞り値がExifに残らないのと、実絞り測光となります。
ただし、一眼レフと同様に、非CPUレンズ使用時の焦点距離と開放f値の入力は可能です。
特に、焦点距離の入力は、ボディ内手ブレ補正に影響するため、正しく設定する必要があります。

開放では古い大口径レンズらしい収差が

一眼レフでも愛用してきたレンズですが、Zボディでも同様に、絞り開放のf1.2と少し絞ったf1.4では、かなり多めな球面収差が発生します。f2に絞ると、この収差は急速に改善され、f2.8まで絞ると解像力も十分となり、収差もほぼなくなります。なお、絞り開放でも解像力自体はそこそこ高いことが分かります。ポートレイトでは、絞り開放からf1.4辺りで使うと、独特の線の柔らかさが出るかと思います。

また、サムネイルでもわかる周辺減光が発生しています。これはf4でも少し残っていて、下の作例にはありませんが、f5.6まで絞れば気にならなくなります。

個人的には、ポートレイトでは開放を、風景ではf2.8からf4に絞るのが良さそうかなと。f5.6以上に絞ると、解像力は高くなる反面、やや力強い描写(線が少し太い?)となるので、繊細さを求めるならf4より絞りを開けるのが好みです。

絞りを開けるか絞るかで描写の変化が楽しいレンズ

現代の大口径レンズは、絞り開放化から実用的な描写ですが、AI Nikkor 50mm f/1.2Sは70年代の設計のレンズ(f/1.2Sは1981年発売だが、Sがつかない前身のレンズが1978年発売)故に、絞り開放時の収差は致し方無いというか、この時代のレンズはそういうものですね。それでも、球面収差がまとわりつくけど、ピントの芯自体はしっかり出ているのはさすがです。

当方所有のレンズは、中古ですが元箱付きで、現在のfマウントニッコールのデザインの箱であること、シリアルナンバーが4から始まるもので、恐らくは2010年代製造の最後期型です。コーティングも、80年代製造のものと、90年代半ば以降(あるいはRoHS指令対応となった2006年以降のもの)とではコーティングも変わっているため、このレンズを狙うのであれば、コーディングが「ニコンスーパーインテグレーテッドコーティング」となったであろう、シリアルナンバーの4から始まるものが、個人的にはおすすめです。
ただし、販売期間が長く、最もよく売れていたのは1980年代と思われるので、中古流通も、シリアルナンバーが2または3から始まる古いものがほとんどです。

ただ、スーパーインテグレーテッドコーティングも、90年代のものであることから、最新の名のクリスタルコートやあるネオコートには敵わないため、最新レンズと比較して、フレアやゴーストがそれなりに発生します。

ところで、上の作例の最後の1枚、太陽光が入っているため、右側に緑色のゴースト(内面反射によるもの)が発生していますが、そのゴーストに横縞が発生しているのが分かります。
恐らく強い太陽光のセンサからの反射によるもので、縦位置撮影すると、縞も縦縞となります。
これは設計の古いレンズなので、ある程度仕方のない部分で、最新設計のレンズなら、こうした状況でもフレアやゴーストはほとんど発生しないし、発生しても目立たないので気づきません。
そういうケースも有る、ということは頭の片隅に入れておくと良いかなと思います。