Nikon Z 8の1週間使った所感

導入翌日にいきなり北宇都宮駐屯地開設記念行事の撮影で実践投入してみたNikon Z 8
レビューするほどNikon Z 9との相違が少なく、性能的にほぼZ 9と同じ。“Z 9ジュニア”と呼ばれていますが、実際はジュニアと呼ぶのはおこがましい位、Z 9とほぼ同一の性能、部分的には越えていたりもします。

かつて90年代後半、フィルム一眼レフのフラッグシップ機のNikon F5が登場し、その2年後にはミドルクラスでF5ジュニアと呼ばれたF100が登場しました。
F5とF100は、その操作系やAF性能は似ていますが、明確に違ったのはファインダの性能(視野率と倍率の違い)や、連写速度(F5が8コマ/秒、F100+バッテリパックMB-15で5コマ/秒)でした。
ファインダ交換式のF5に対し、交換不可能なF100、といったように明確に差がありました。

予約していたSmallRigのL字プレートも届いたので装着したNikon Z 8

ところが、Z 8は連写速度も8.3KのRAW動画対応も、ファインダの性能もZ 9と同一です。限りなくZ 9に近いのがZ 8です。
Z 9とほぼ同じカスタム設定をして実際に3千枚ほど撮影した限り、全く迷うこともなくZ 9と併用して使えることがわかりました。これぞ究極のサブ機です。もちろんこれをメイン機にしても、殆のケースに於いて、Z 9と遜色なく使えると思います。
とは言え、もちろん違いがあります。
いきなり実践投入したので、実際の良く撮るシチュエーション、自分の使い方で、Z 9と比較することが出来ました。その一部を紹介します。
似た性能の2機種ゆえに、どちらを買ったらよいか迷う人も多いと思います。あるいはZ 9ユーザーでも、Z 8に置き換えたい人も少なからずいるはずです。Z 9デビュー当時、これに匹敵あるいは近い機種はなく、縦グリ一体型の大型ボディを渋々買った人も多いからです。Z 9も中古でそれなりの数が出回り始めそうですね。
私のようにZ 9にプラスしてZ 8を運用するユーザーも多そうです。

●Z 9とZ 8、ボディサイズの違い・バッテリの違い

もっとも明確な差がこのボディサイズの違いです。
Nikon Z 9は、一眼レフのフラッグシップ機D一桁シリーズと同形状で容量をアップしたバッテリのEN-EL18d(10.8V 3,300mAh)を使用するため、バッテリはボディ下部への収納となり、そのでっぱりが大きくなっています。
この部分はグリップとなり、縦位置シャッターボタンやコマンドダイヤル、AF ONボタンなどが配置され、ボディと一体であることから剛性も高くなっていますし、バッテリ電圧が高く容量の大きいバッテリを搭載できることで、長時間の撮影が可能となっています。

一方Z 8は、これまでのZ 6/7シリーズやミドルクラスの一眼レフで使用されているEN-EL15シリーズの大容量版、EN-EL15c(7.0V 2,280mAh)を採用しています。
バッテリはボディのサイドグリップ内に搭載しています。サイズ的には、Z 6/7シリーズより一回り大きく、一眼レフのD850よりわずかに小さめとなっています。

また、バッテリの差については、電圧と容量から、Z 9とバッテリEN-EL18dの組合せに対し、Z 8とEN-EL15cは計算上概ね半分程度でしたが、これは実際に使用した感じでもほぼ同じでした。
連写多様の撮影をした場合、おおよそ2500コマの撮影でバッテリ残量は20%以下となりました。

また、この後バッテリ交換し、連写せずの撮影では、350枚程度で残量30%以下となりました。これもZ 9の半分程度、という感触です。
個人的な感触としては、予備バッテリは1本は必ず携帯したい感じです。幸い、EN-EL15cは純正バッテリとしては比較的安価で、EN-EL18dと比較しても1/3の価格ですから、2,3本揃えておくと安心です。
もちろん、PD給電可能な外部バッテリや電源でも動作するので、雨天荒天時の撮影でなければ、それを使うのもアリでしょう。

大きさの点、自分にとって明確に違ったのは、超望遠レンズのハンドリングでしょうか。やはりここはグリップの大きいZ 9のほうが、重いけどトータルバランスが良かったです。
AF-S NIKKOR 600mm f/4G ED VRが5kg超えという、NikonのAF望遠レンズ屈指の最重量クラスであることを加味しても、望遠レンズは重心がカメラ側にあるほど扱いやすいのです。手持ちの場合は。
D810でもD850でも、望遠レンズ撮影は常にバッテリグリップを付けて撮影していたので、Z 8ボディ単体のグリップは握りやすいとは言え、3kgを超えるレンズの場合はZ 9、あるいはZ 8でもバッテリグリップがあったほうが使いやすいです。
特に望遠レンズを縦位置撮影したときのZ 8は…腕がつりそうになりました…

この撮影はAF-S 200-500mm f/5.6E(2,300g)でしたが、望遠の縦位置撮影継続は結構きつかった…

●熱耐性

現時点でまだ6月故に、また発売から時間も経過していないことから、熱耐性についてはまだ語れるほどではないですが、簡単に。

ミラーレス一眼としては、他メーカーの同クラスと比較しても大き目のボディですが、特にもっとも発熱しやすい動画の連続撮影時間がZ 8では圧倒的に長いのは、ボディが大きい分、ボディのフレームに熱を逃がしやすいというのは大きいでしょう。
ただし、さらに大きなZ 9と比較すると、またZ 8はボディの一部を炭素繊維強化熱可塑性樹脂Sereebo® Pを使用して軽量化をしており、マグネシウム合金の使用量はZ 9より少ないため、放熱の面ではZ 9と比較して不利になっているのは確かです。
数時間の撮影では、ほんのりボディが熱くなりました。
5月の気温でもボディが熱くなったことから、真夏だとどうなるかは気になるところです。

この表示自体は、メモリーカードが熱くなっているので取り出し時に注意、ということで、撮影ができなくなるというわけではないですが、暑いということはメモリカード自体に負担をかけることに違いはないため、真夏の撮影では、連写など使い方次第では影響があるかもしれません。
Z 9は真夏に1時間道が長回しして何ら問題なかったのですが、Z 8は夏に向けてどうなるか、何かあれば報告したいと思います。何もなければ良いですけど。

●操作性

フロントのFnボタンが1つ少ないとか、ボイスメモボタンがないとか細かい違いはあります。が、少なくとも背面のボタンレイアウトは、Z 9のバッテリグリップ付近のボタンの有無はあれど、ほぼ同じです。

Nikon Z 9とZ 8の主要なボタンレイアウトは同じ

その中で細かな違いがここ。

スチルと動画の切り替えレバーの向きが変更されて、Z 8ではグリップを握ったまま親指で素早く変更可能となりました。
Z 9ではレバーが上向きのため、切り替えようとすると、親指を移動させなければならず、使いづらかったので、地味ながら良い改良。
もっとも、他メーカーのように、切り替えレバーがなくても、動画撮影ボタンを押せば動画が、スチルはシャッターボタンを押せば使える、といった具合に、切り替え不要で使えてほしいと思っています。

連写切り替えのダイヤル、これも長年Nikonの中級機以上の定番でした。Z 9はダイヤルでも設定でき、また同軸上の四葉ボタンでも切替可能で、両方使えるのは便利だけど迷いやすいというのもあります。
Z 8はダイヤルをなくしてペタンとなり、四葉ボタンのみとなりました。元々この操作系は、古くはF-801シリーズやF90シリーズなどでも採用されていて、自分はむしろこの方が使いやすいので、ダイヤルはなくなってOKです。視覚的にどのモードになっているかわかりやすいという利点がダイヤルにはありますが、そう頻繁に切り替えるものではないので、Z 8のダイヤルなしで個人的にはOK。この感じは、手持ちのF90Xに通じるものがあるので、個人的に入りやすかったです。

Z 9ではフラッシュモード切り替えボタンだった位置に、Z 8はWB(ホワイトバランス)切り替えボタンとなっています。
Nikonは四葉ボタンのレイアウトを機種ごとに地味に変えてくるので、そろそろ統一して欲しいところ。

●連写バッファ やはりSDカードはネックになる

連写を多用する方は気になると思います。ここからは、CFexpressカード(以下CFe)、SD UHS-IIカードともに最速クラスのものを使用しているという前提での話です。
私は元々普段の戦闘機撮影など航空機撮影では、秒10コマに制限して撮影しています。フィルム一眼レフ時代から連写切り替えモードでCL(低速連写)とCH(高速連写)の2段階の切り替えがあり、CLモードの存在意義がさっぱり分からなかったのですが、Z 9で秒20コマ撮れるようになり、実際そこまで必要ないなと思って、普段はCLモードで秒10コマ設定にしています。
そんなわけで、先日の北宇都宮駐屯地開設記念行事の撮影でも、Z 8はCLモード、秒10コマ制限とし、CFeカードに高効率RAW、SDカードにJPGを割り当てて撮影していましたが、バッファが詰まることはありませんでした

これでは実力は変わらないので、テストで秒20コマ連写してみたところ、40コマ程度から連写速度低下が始まりました。ちなみに、CFeだけにRAWのみ書き込む設定で連写したところ、140コマ程度でわずかに連写速度が低下することもあるものの、概ね継続して連写可能でした
Z 9ではダブルスロットのどちらもCFeカードとなり、どのモードでも基本的に7,8秒連写してもバッファは詰まらないので、ここは明確にZ 9とZ 8での差が出るところです。

Z 8でCFeのみの使用で連写しても、140コマあたりからやや速度低下することもあるのは、Nikonの中の人が言っていた、Z 9よりZ 8のほうがバッファは小さい、という説明を裏付けていると言えます。
とはいえ、バッファの差はCFeの、しかも高速書込みが継続できるカードであれば、書き込みによりバッファが開放されるスピードも速いので、実際にはCFeにのみ書き込む設定での連写であれば、Z 9とのバッファの差は大きくは感じないかと思います。

SDカードはUHS-II規格は、既に6年近く前に搭載されたD850で限界に達していて、D850でもSDカードが連写性能をスポイルする場面が多々ありました。
もし連写を多用するなら、SDカードへの書込みは控えたほうが良いかもしれません。
一方で、私のように普段は秒10コマ連写までしか使わない何秒もシャッターボタンを押し続けるような連写はしない、というのであれば、SDカード同時書込みでも問題なかったです。


ということで、簡単なレポートでしたが、ほんとZ 9とほぼ同じ感覚で使えるZ 8ってすごいですわ。メイン機もZ 8で十分という人も多いでしょう。
ただ、バッテリの差やカードスロットの差など、明確に差もあるため、撮影継続性

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