SH-3/HSS-2シーキングは傑作機だよねぇ

JMSDF HSS-2B(8164)陸上型

いやね、好きなんですよ、ちょっとブサイクなこの機体が♪

Yamaroが人生で初めて乗ったヘリコプターが、写真の海上自衛隊のHSS-2Bシーキングでした。
立って歩けるくらい中は広く、その後乗ったUH-1Jが、基本席に座ったまま、立って歩けない機内、というのとは対象的でした。

写真は1998年の千歳基地航空祭のゲスト機としてきていたもので、残念ながら、現役時のシーキングの写真は、自分が撮ったものではこれが最新だったかなと。今みたいにデジタルでパシャパシャ何枚も撮れる時代ではなく、まして貧乏学生の身分、フィルム代と残撮影枚数とにらめっこしながら撮っていました。

ちなみに、その人生初めてシーキングに乗ったときは、乗り込むときから降りるときまでを、ビデオ撮影しましたが、これがまたHi8(8ビリビデオ)撮影だったので、今や見る手段がないという…。まあこれはDVだったとしても、同じことですけど。

海上自衛隊の対潜ヘリは、後継のSH-60Jが1991年から運用され、HSS-2Bは2003年に全機引退しました。1998年撮影の写真の機体は、HSS-2B末期生産の機体で、艦載型と陸上型のうちの、陸上型で、艦載型と違い着艦のための装備がなく、またソノブイとESMの運用能力がない、陸上基地からの運用を前提とした機体でした。

初飛行はF-4ファントムIIと同じ、1959年

1950年代から70年代にかけては、アメリカの航空産業は活発かつ大量の新機種を開発していました。そんな時代だからこそ、失敗だった機種も多いし、反対に大成功した機種も多い。F-4ファントムIIも未だ現役国があるように、シーキングの原型であるシコルスキーS-61は、1959年に初飛行して以来、輸送ヘリや対潜ヘリとして成功し、対潜型はアメリカでも海上自衛隊でも現役を退いていますが、輸送型やその派生型が今でも現役だったりします。

アメリカの大統領専用ヘリ「マリーンワン」が、2020年時点で未だにシーキングの派生型、VH-3Dなのも、後継機の開発に手間取ったのもありますが、その使い勝手の良さがあるでしょう。
前述のように、立って歩けるくらい広い機内のVH-3Dに対し、その後採用されたVH-60は、対潜ヘリとしてもSH-3/HSS-2の後継機となったSH-60系のヘリで、機体はシーキングより小さく、機内も腰をかがめないと移動できないため、大統領専用機ヘリとしては狭く、あくまでバックアップの位置づけとなって、VH-3Dが主力ヘリとして使われ続けています。
そのVH-3Dも、いよいよ後継機のVH-92(S-92ベース)が開発段階にあり、数年後には引退の予定です。

シーキングが米大統領専用ヘリVH-3Aとして採用されたのが1961年、現在のVH-3Dが1978年ですから、初代から60年近く運用されているわけです。後継機がなかなか決まらなかったとはいえ、一般に固定翼機より寿命が短いと言われる回転翼機で、ここまで長く使われる機体は他にないでしょう。

機種型式、S-61?HSS-2?SH-3?

上の文章を書いていて、何だかいろいろな機種名が登場してしまいましたが…

もともと、製造メーカーのシコルスキーの社内型式がS-61で、これをベースに対潜ヘリとして、米海軍がHSS-2の名称を使用しました。

そのHSS-2の名称で、海上自衛隊も採用し三菱重工がライセンス生産しましたが、米海軍では、その後機種名をSH-3に改め、海上自衛隊はそのままHSS-2の型式名称を使い続けたため、同じベースながら複数の名称が存在します。

海上自衛隊でも、輸送機型はS-61Aの名称です。

ライセンス生産したイギリスでは、メーカー名称が頭に入ったウェストランド・シーキング〇〇○という名称ですし、同じくライセンス生産したイタリアでは、製造したアグスタの頭文字が入ったAS-61です。
カナダではCHSS-2→CH-124という型式で、2018年まで使用されていました。30カ国近くで運用された実績があり、それぞれの国での名称があるということですね。

世界の傑作機「シコルスキーSH-3シーキング」は絶版なのね…

ネットで様々な情報が得られる昨今ですが、ネット普及以前の情報は、今でも書籍のほうが上でしょう。

手持ちの書籍でもお気に入りの、世界の傑作機シリーズ「シコルスキーSH-3シーキング」、1999年のこの本も、20年以上経過した現在、残念ながら絶版ですが、古本でも見つけたらぜひ手にとって欲しい1冊です。

なぜ長く使用されている?

ここからは、世界の傑作機内の記述も引用して、個人的見解を書いてみましょう。

  1. 強力な1200~1500馬力級のガスタービンエンジン2機搭載で出力に(当時としては)余裕があること
  2. 適度に大型な機体であること
  3. アメリカ以外でもライセンス生産されて独自の発展を遂げた

なんだかんだでこの3点が大きいのではないかなと。

1と2は、元々海上で対潜ヘリとして使用することから、安全性のため双発であることは必至、加えて開発当時の対潜機材が大きく重かったため、それに合わせて出力の大きなエンジンと機体が必要なことが挙げられるでしょう。
その結果、対潜機材を下ろせば、広い機内となり、出力にも余裕が生まれるため、輸送機として使われることにもなりました。

対潜機としては、重たい対潜機材のため、夏場の高温下での運用は出力低下もあるため、HSS-2B陸上型では、夏は燃料満載状態での垂直離陸ができず、滑走離陸だったそうです。
その分、対潜機材のない輸送機型では機体が軽く、出力は余裕があったと言われています。
実はシーキングは、当時のヘリコプターの速度記録(339km/h)や上昇記録、平均移動記録なども持っていて、当時のヘリコプターとしては、大型ながら強力なエンジンで俊足だったことが伺えます。

適度に大型というのもポイントで、この規模の機体を、カナダや海上自衛隊ではフリゲイトクラスの戦闘艦に艦載機として運用していましたが、このギリギリの大きさが、これより大型のチヌークやH-53系より扱いやすいのでしょうね。

そして、3も大きなポイントでしょう。
アメリカシコルスキー社製以外に、海上自衛隊は三菱重工がライセンス生産し、初代のHSS-2から、HSS-2A、HSS-2Bと独自の発展を遂げて、最終的にB型では、一部対潜機材は米海軍のSH-3より優れていたともされています。また、海自のHSS-2系は対潜型167機、輸送型が5機生産され、単独国では生産数は多めです。
イギリスでライセンス生産された、ウエストランドシーキング、イタリアのアグスタ製シーキングは、世界各国に販売されました。

後継機は?

現在、シーキングは、後継のH-60系、S-92系、EH-101(AW101系)それぞれの機体に更新されていますが、機体規模としてはH-60系は小さいため、実質後継機は同じメーカーで機体規模も同程度のシコルスキーS-92、そしてかつてシーキングをライセンス生産していたアグスタとウエストランドが共同開発したAW101でしょうね。

生産数としては、先に開発されたAW101のほうが多く、海上自衛隊も掃海輸送機としてMCH-101の名称で採用しています。

警視庁もEH-101の民間型を1機のみ採用しましたが、元々軍用機として開発された機体で、末期は部品取得が難しかったようで、2018年に退役しています。
また、警視庁はS-92Aも2012年より運用していましたが、こちらもつい最近、わずか8年の運用期間の後2020年4月に退役したようで、この手のヘリを軍用以外で運用することの難しさを物語っています。

シーキングもS-61の民間型は何カ国かで運用されていましたが、S-92とAW101は民間運用は難しそうな感じですね。同規模の機体は、AS332やEC225シュペルピューマが軍民警察問わず世界各国で運用されていて、シュペルピューマは比較的安価で使いやすい機体のようですね。