Carl Zeiss Planar T* 1.4/50 ZF.2
Carl Zeiss Planar T* 1.4/50 ZF.2
2011年2月作成 2012年4月:D800の作例追加
●特徴 |
135判一眼レフ用Carl Zeissのレンズといえば、長年京セラが引き継いだCONTAXブランドのカメラのレンズとして、独Carl Zeiss社からライセンスを得て採用されていました。 ところが、京セラはAFレンズ化したNマウントの失敗と、急激なデジタル化の波に押され、2005年カメラ事業を断念。 しかし、その1年前の2004年、日本の光学機器メーカーであるコシナが、Carl Zeiss社と提携し、同ブランド使用権を取得、2006年には各社一眼レフマウントに対応したMFレンズを発表します。 こうして、135判一眼レフ(DXフォーマット含む)では、かつてはCONTAXだけで楽しめたCarl Zeissの描写を、各メーカーの一眼レフカメラで楽しめるようになったわけです。 余談ですが、同2006年にはコシナとは別にアルファマウント用AFレンズとして、Carl Zeissブランドのレンズがソニーより発売されています。もともとソニーは同社のハンディカムで以前からCarl Zeissレンズを採用していましたからね。 前置きが長くなりました。 本レンズは、2006年にニコンAi-S用として発売されたPlanar T* 1.4/50 ZFにCPUを搭載した、ニコンでいうAi-P相当のレンズとしてマイナーチェンジし、2010年にZF.2として発売されました。 ZF.2化にあたり、ZFでは採用されていたカニ爪は省かれています。なのでNikon F Photomic系などカニ爪で露出計と連動していたカメラでは、絞り込み測光での使用となります。これは残念な点ですが、Ai非対応のデジタル一眼レフでも測光とExif書き込みが可能なので、現代のカメラでの使用を前提としたものと解釈すればよいでしょう。 従来のZFも引き続き販売されていますが、主力はZF.2らしく、旧ZFはあまり在庫がないようで、自分も本当はZFが欲しかったのですが、入手困難とのことでZF.2の購入となりました。 といっても買ってくれたのは妻だったりしますが(笑 もちろんZF.2は光学系はZFと同じで描写も一緒ですし、絞りリングも残されていますから、ニコンのAi対応MFカメラおよびAF一眼レフであれば、どのカメラでも開放測光が可能です。 デジタル一眼レフカメラでも、Exifもきちんと書きこまれます。Ai以前の一眼レフとの組み合わせが多いのであれば、ZF.2のほうが便利ですね。 |
発売年 | 2010年1月20日(ZF.2) |
レンズ構成 | 6群7枚 |
焦点距離 | 50mm |
最小絞り | f16 |
絞りバネ枚数 | 9枚 |
最短撮影距離 | 0.45m |
絞りリング | あり |
最大撮影倍率 | 不明 |
フィルターサイズ | 58mm |
マウント | ニコンFマウント(Ai-P相当) |
質量 | 330g(ZF) |
全長 | 45mm(ZF) |
フード | バヨネット式 |
●使用感 |
金属のがっしりした重みのある鏡銅、同じく金属製で裏面植毛のレンズフード、剛性の高いクリック感の絞りリング、適度なグリスの重みのあるフォーカスリングなど、しっかりと作ってある印象です。このあたりはニコンの純正AFレンズでは感じられない良さです。 筐体は50mm F1.4のレンズとしては大きくもなく小さくもなく、手にしっくり馴染むサイズです。 被写界深度目盛はもちろん、赤外フィルム/フィルター用の赤外指針も記載されています。ニコンZF.2の場合、絞りリングにある光学読み取り窓用の小さな絞り値の数字も記載されています。 絞りリングは、f1.4〜f11までは半段クリックあり、f11〜f16は1段クリックです。 フォーカスリングは180度以上回り、綿密なフォーカス合わせにも対応可能です。近接ほどレンズが伸びますが、繰り出し量は7mm強でさほど大きくはないです。 デジタルのDXフォーマット機では、残念ながらファインダ倍率の高いD300とて、ピントの山をつかむのは非常に厳しいと言わざるを得ません。開放とf2位までは、まともにビシッとフォーカスを合わせるのが困難です。 まして、D5000クラスのエントリー機では、ほぼピントの山を確認することは期待できないと考えたほうが良いでしょう。 ではフォーカスエイド機能を使えばどうか? 残念ながら、フォーカスエイドは合焦の●表示は割と広い範囲で表示されるようで、これをあてにして撮影しても、、実際は前ピンか後ピンになっている事が多いのです。 やはりこのレンズ、FXフォーマット機やフィルムカメラのようにファインダの大きなカメラでの使用に適していると言えます。 手持ちのF90XやFであれば、しっかりピントの山が確認できるので、もう少し楽に撮影が可能です。 追記:ついにFXフォーマット機であるNikon D800を入手しました。早速撮影しましたが、ピントの山のつかみやすさは、明らかにD300よりよいですね。ただD800も液晶を挟んだファインダゆえ、フィルム機のファインダほどピントの山は見えません。 それでも、フォーカスエイドがD300よりは良くなっている印象で、全くピントがずれてしまったという苦労がなくなりました。 D300で省かれていたピントの >●< の矢印表示が復活しているので(フォーカスリングの回し方もニコン純正と同じ)、このレンズの出番が今後は増えそうです。 |
●描写・作例 |
Carl ZeissのPlanarは、ツァイスの代表的なレンズです。 CONTAX時代のPlanarも美しいボケ味とシャープネスを両立、色乗りの良いレンズでしたが、コシナ製のPlanarも同様の特性を引き継いでいると言えるでしょう。 絞り開放ではさすがに甘い描写となり、フレアっぽくなりますが、1段絞るとフレアっぽさはずいぶん解消され、コントラストもよくなります。 なだらかなボケ描写はこのレンズの真骨頂で、ついつい絞りを開けて撮影したくなりますが、一方で絞れはかっちりとしたシャープネスも得られます。 ただ、ボケ味は背景の状況や被写体との距離によって、時に少し汚くなることもあります。このあたりは、これまたボケ味で定評のあるTAMRONの90mmマクロと違って、少し癖があるかもしれません。 F2.8クラスのズームレンズと比較しても、やはり単焦点、しかも完成されたレンズ構成のPlanarですか、その素晴らしさがわかります。Planarに限らず、50mm F1.4レンズは1本持っておくと良いレンズですね。 逆光時、フレア自体は相応に発生しますが、コントラストの低下は比較的少ないです。湾曲も感じられません。 色収差については、D300やD800では補正されてしまうので評価が難しいですが、フィルムでも殆ど目立たないです。 D300やD800のRAW撮影では、現像時に色収差補正を切ることが可能ですが、補正を切っても収差が目立つことはなく、色収差がほとんど発生していないようです。 開放ではさすがに大口径レンズらしく、コマ収差がみられますが、2段絞ればだいぶ解消されます。 二線ボケは時に発生しますが、ズームレンズにありがちなうるさい感じ、汚い感じはありません。 総じて、素直な特性の安定した描写が得られるレンズですね。 |