SIGMA 150-600mm F5-6.3 DG OS HSM Sports

SIGMA 150-600mm F5-6.3 DG OS HSM Sports


2015年12月作成

●特徴

従来からある同社のAPO 150-500mmの望遠端を600mmまで拡張したレンズ…と簡単に片付ける訳にはいかないのがここ最近のSIGMAです。以前の安物サードパティレンズメーカーから脱却し、純正にない価値のあるレンズ、純正を超えるレンズもラインナップしています。
本レンズもその中の1本で、敢えて同じ150-600mmという焦点距離を、SportsとContemporaryという2ラインで発売するという、面白い試みがなされているレンズです。
Sportsでは、堅牢性、防塵防滴と言った点に重点を置き、Contemporaryでは、小型軽量低価格に重点を置いています。何方も画質に抜かりは内容で、特にContemporaryは比較的安価にもかかわらず、新しい光学系を採用し、画質はSportsに引けをとらないようです。

USBドックでのファームウェアアップデート(今時っぽいですね)やカスタムセッティングも可能ですし、HSM(超音波モータ)やOS(手ブレ補正)は当たり前、さらにレンズは撥水防汚コーティング、Sportsでは鏡胴先端を前後させてズーミング可能(直進ズームとしても使える)といった特徴もあり、まさに鳥やヒコーキ撮りに最適な1本となっています。
三脚座もガッチリしていますし、ズームロックはワイド端のみならず、表示がある各焦点距離で使用可能、とにかく抜かりない作りです。

ズームレンズで望遠端600mmを達成したレンズは純正にはなく、かと言って高価なロクヨン(600mm f/4)のレンズは誰しもが買える値段ではありません。そんな中、テレコン無しで600mmまで撮れるレンズは、非常に価値がありますね。


 発売年   2014年10月24日 
 レンズ構成  16群24枚 (FLDガラス2枚・SLDガラス3枚)
 焦点距離  150-600mm
 最小絞り  f22-32
 絞りバネ枚数  9枚(円形絞り) 
 最短撮影距離  2.6m(フォーカスリミット切替あり、カスタム設定可) 
 絞りリング  なし 
 最大撮影倍率  0.2倍
 フィルターサイズ  105mm 
 AF動作方式  超音波モーター(HSM) 
 手ブレ補正機構  OS
 防塵防滴  あり
 質量  2,860g(三脚座含む) 
 最大径X全長  121mm X 290.2mm
 フード  LH1164-01(筒形かぶせ式)
 三脚座  あり(座面のみ脱着可)




●使用感

サンニッパに迫る重量とサイズの本レンズ、流石に70-200mm f/2.8クラスと比べても格段に大きく重く、慣れるまでは取り扱いに気を使いますが、体が慣れれば手持ち撮影も十分に可能です。
ズームリングは適度な重さで、直進ズームのような使い方も可能とあって、戦闘機のような高速移動する飛行機に対しても、素早くズーミングが可能なのはとても便利です。
AFは、ノーマルセッティングでは、純正の明るいレンズと比べると、やや立ち上がりが緩慢ですが、カスタムセッティングすることで、そこそこの速さになります。ただし、開放f値が暗いレンズゆえ、望遠端ではある程度AFエリアも制限される(端のエリアも使えなくはないが精度が落ちる)のと、一度ピントを外すと、戻ってくるまで時間がかかる印象で、フォーカスリミッタである程度回避できるものの、そこはやはり明るい単焦点の望遠には敵いません。

OSの効きも可もなく不可もなく、と言った印象で、最近のNikon純正VRレンズのような、ファインダに絵が吸い付くようなブレの無さ…とまでは行きませんが、流し撮りにも対応し、手持ちでも比較的歩留まりは良い印象です。

レンズフードも金属製でしっかりとした作りになっており、フードをつけた状態で地面に立てるといった、上級の単焦点望遠レンズのような使い方も可能です。

ちなみに、本レンズ、フィルム機ではNikon F6とCanon EOS-1V以外では動作しないとありますが、
手持ちのNikon F100とF90Xで動作検証しております


●レンズ保護フィルタの罠

さて本レンズ、前玉がフードを着けない状態で割りと鏡胴先端にあるために、傷をつけないか心配になります。画質にとっては百害あって一利なしの保護フィルタですが、貧乏性もあって、私はとりあえず、Amazonで探して購入した、安物の中華製フィルタを装着。普段はKenkoやMarumiを選ぶところですが、本レンズのフィルタ径はかなり大きめな105mm。KenkoやMarumiにはなく、SIGMA純正はあるものの2万円前後もする高価なもの、おいそれと買えません。

最初に購入したAmazonの(Amazonブランドの商品ではないので念のため)フィルタですが、3千円弱と以上に安い割に、特段おかしな所もなく、最初はそれを装着して撮影していました。
が、どうも望遠側になるほど、解像度がかなり低下する…。おかしいな、このレンズは望遠側もかなり画質が良い、と聞いていたのに、所詮望遠ズームだからこんなものか、いやそれにしても解像度が低いな、ピントずれてる?と思い始めるように。しかも、単に解像度が低いというより、ぼやっとしてるんです。像が流れているような…。
これはやっぱりおかしいと思い、一度修理に出してみることに。保証期間内に不具合を潰すことは重要ですからね。

ところが1ヶ月近くして戻ってきたレンズの伝票には、「レンズ側に異常は認められませんでした」との表記が。さらに「フィルタを取り付けて撮影すると、解像度が低下することがあります。フィルタを外して撮影することをお薦めします」とも。
実は修理中、薄々気がついていたんです。あの安物フィルタ、大丈夫かなと。

そして持ち帰ってフィルタを外して撮影してみると、ウソのようにキレッキレの解像度が得られました! そう、やっぱり犯人は、安物中華製フィルタだったのです。フィルタの径が大きいほど、フィルタガラスの性能が顕著に現れるんですね。やはり安物、ガラスの平面度も悪く、コーティングもヘボだったのでしょう。
ただ、保護フィルタはやっぱり合ったほうが良い、今まで2度、保護フィルタによりレンズが助かった経験があるので、ここは高価だがSIGMA純正のフィルタを買うか…ということで、泣く泣く購入しました。
元々が前玉と後玉に撥水防汚コーティングされているレンズだけに、フィルタも同じものが良い、ということで、高価ですがSIGMA WR PROTECTORを購入。2万円はでかい…でも保険と思えば。

せっかくなので、ブログでも一通りやった比較テストを、下記にまとめて掲載しておきます。
コレを反面教師に、くれぐれも安物保護フィルタは買わないように! レンズの性能をスポイルします。



▼SIGMA製と中華製フィルタの反射比較▼

SIGMA純正フィルタ(左)と中華製フィルタの比較。
わざと光を反射させてみたところ、中華製は明らかに反射が多いのがわかります。
  SIGMA純正フィルタ(左)と中華製フィルタの比較2。
天井の照明をわざと入れてみました。
SIGMAはコーティングの色が緑で、反射が少なめなのに対し、中華製は色も変わらず全反射しています。
このくらい違うと、実際の撮影結果にも大きな違いが出そうです。
 



▼焦点距離600mmでのフィルタ比較▼

Nikon D810 絞りは開放F6.3 三脚使用 下の写真は中心部を切り出し等倍で掲載
 フィルター無し  中華製フィルター(105mm UV) SIGMA WR PROTECTOR 105mm 
フィルタ無しは抜けもよく、フレアやゴーストはほぼ見受けられない。
解像度も、この手の高倍率望遠ズームレンズの望遠端かつ絞り開放としては、十分満足できる。
中華製フィルタは、一見して分かるゴーストが見受けられます。
等倍切り出しでは解像度が大幅に低下、像が流れ気味になっているなど、とにかくひどいです。サムネイルの解像度で分かるレベルですから…。
このレンズの性能を大幅にスポイルしています。
SIGMA純正フィルタ。購入したのはWR(撥水コーティング)タイプ。お値段は実売2万円弱とかなり高価。
よく見ると、フィルタ無しに比べてごくわずかにゴーストが発生しているのがわかるものの、ほぼフィルタ無しの画質に近いものが得られます。


●SIGMA Optimization Pro

最近のSIGMAレンズの特徴として、USB Dockによるレンズのファームウェアのアップデートや、AF、OSの動作カスタマイズ、フォーカスリミッタのカスタマイズ、フォーカス微調整が可能となっています。
ファームウェアは、主にレンズ動作に関わる部分を担っており、150-600Sportsでは、これまでにAFやOSの動作修正が入っています。マウント毎にファームウェアも変わってきます。
従来、新しいカメラが発売されると、そのカメラに古いサードパティレンズをつけると動作不具合が出ることがあり、その修正ファームウェアへの更新はメーカー送りでしたが、USB Dockにより、自宅でも簡単にファームウェア更新が可能となりました。
この手のツールは、良くも悪くもサードパティメーカーらしいと言えます。












●描写・作例

フィルタを純正に切り替えての評価です(当然)。
本レンズは、望遠側で多く使われることを想定し、望遠側での画質を重視した作りとのことですが、実際に使ってみても、400〜500mm付近の解像度は高く、絞り開放から安心して使うことが出来ます。600mm付近では若干解像度が落ちる印象ですが、ボケボケになるといったことはなく、あくまで高解像度の400〜500mmと比較しての話で、この値段のレンズとしては十分解像度は高く、これ以上を求めるなら600mm f/4しかないと思います。
倍率色収差は、Nikonの場合、カメラボディ側で補正されるので気になりませんが、RAW現像で倍率色収差補正を切っても、さほど色づきも感じられません。
フレアやゴーストも、どうしても直射の場合はそれなりに出ますが、半逆光程度ならコントラストも十分です。ゴーストは、上のフィルタ比較にもサラッと書いていますが、高価なSIGMA純正でもごく僅かに発生するため、最善の結果を得るなら、フィルタは外すことをお薦めします。

一方本レンズの欠点は、周辺減光が大きいことで、これはかなり絞らないと改善しない上、望遠側になるほど顕著になり、600mmではf11程度に絞ってもまだ目立つ印象です。これは均一にするにはかなり補正しなければならず、気になる人は要注意です。

発売から少し経過して、値段も落ち着いてきていますが、画質描写だけならContemporaryもSportsに肉薄するので、防塵防滴や堅牢性がどの程度必要か見極めて購入するのが良いでしょう。

600mmの世界は、300や400mmまでと一線を画します。ぜひ600mmの世界を堪能してください。自分はこのレンズを買って本当に良かったですし、ヒコーキ撮りが相当楽しくなりました。


半逆光気味で、RF-4Eのグリーンは黒っぽくなってしまっているものの、諧調が沈み込むことなく、RAWで編集すると、きちんと階調が出ているのはさすが。
ここでは不自然にならないよう、あえて機体の明るさは上げずにいます。
AF-Cでは、f値の暗いレンズ故、あともう少し速ければ、と思う場面こそあれど、一度食いつけば外すことはあまりなし。
ただ、外れた際のリカバリは、やはりf/2.8〜4クラスのレンズよりは遅い印象。

データ:Nikon D810 + SIGMA 150-60mm F5-6.3 DG OS HSM SportsI
Mモード(f8 1/1000) 550mm ISO160 RAW現像
上記写真の等倍切り出し。わずかにブレているかな。
550mmと望遠端に近い焦点距離でも、解像度の低下が少ない印象で、D810でここまで解像してくれれば、文句ないレベル。
従来、SIGMAの高倍率望遠レンズ(150-500mm, 50-500mm)は、望遠側になるほど解像度低下と画質劣化が顕著だったのと比較と、このレンズは解像度低下をあまり感じません。

データ:Nikon D810 + SIGMA 150-60mm F5-6.3 DG OS HSM SportsI
Mモード(f8 1/1000) 550mm ISO160 RAW現像
こちらは490mmで撮影。
OSの効きは、Nikon純正が流し撮りでもピタッと吸い付くような感覚なのに対し、SIGMAはイマイチ効きがわかりづらいですg、シャッターを押す瞬間にOSが強めに効くタイプのようです。

データ:Nikon D810 + SIGMA 150-60mm F5-6.3 DG OS HSM SportsI
Mモード(f8 1/1250) 490mm ISO280 RAW現像
上記写真の等倍切り出し。
500mm以下、300〜500mm付近では、このレンズはさらに解像度が高くなります。
一部ユーザーの意見では、Nikon純正AF-S 80-400mmの望遠側を超える解像度との声も。
反面、AFの速さや正確さ、手ブレ補正の効きは、USB Dockでカスタマイズしても、純正に一方ずる印象。

データ:Nikon D810 + SIGMA 150-60mm F5-6.3 DG OS HSM SportsI
Mモード(f8 1/1250) 490mm ISO280 RAW現像
 
周辺減光がよく分かる作例。
このレンズ最大の欠点が、周辺減光が望遠端で大きめであること。
四隅が暗くなっているのがわかります。
SIGMAのHPの性能データの周辺光量のグラフを見ると、600mmの絞り開放では、画像隅は中心部の半分以下の光量しか得られません。
ある程度ヴィネットコントロールで調整可能なものの、根本的には絞りをかなり絞らないと解消しないようです。
私はあまり気にしませんが、気になる人は要注意です。

データ:Nikon D810 + SIGMA 150-60mm F5-6.3 DG OS HSM SportsI
Mモード(f8 1/1250) 600mm ISO400 RAW現像
クロップして更にトリミング。
中途半端な流し撮りですが、OS2モードでの流し撮りでの手ブレ補正の効きはまあまあといったところ。

データ:Nikon D810 + SIGMA 150-60mm F5-6.3 DG OS HSM SportsI
Mモード(f8 1/250) 600mm ISO72 RAW現像
観艦式2015予行から、富士山と輸送艦「おおすみ」。
相当離れた距離の輸送艦の乗員も、等倍で確認できます。
空気のゆらぎの影響が大きい望遠レンズですが、しっかり解像しています。
揺れる艦艇からの撮影だと、OSの効きはあまり関係ないですね。
観艦式でこのような長いレンズが必要か?と問われると、今回持って行ってよかったと思っています。

データ:Nikon D810 + SIGMA 150-60mm F5-6.3 DG OS HSM SportsI
Mモード(f8 1/800) 460mm ISO140 RAW現像
今度は観艦式2015の本番。
本レンズワイド側での撮影。400mm以上で使いことが多い本レンズですが、こうして引きの絵(と言っても230mmですが)も撮れるのは便利です。
もちろん解像度は十分高く、コントラストも十分です。
この焦点距離だと、ある程度開放f値も低いので、AFの精度もぐんと上がります。

データ:Nikon D810 + SIGMA 150-60mm F5-6.3 DG OS HSM SportsI
Mモード(f9 1/250) 230mm ISO110 RAW現像




BACK