Nikon Nikkor-H Auto 85mm f1.8
AiAF Micro Nikkor 60mm f2.8Dで撮影したNikkor-H Auto 85mmの外観
注意:このコンテンツではレンズの改造に関する記述がありますが、お約束の自己責任でお願いいたします。事故や破損等の責任は負えませんよ(´Д`)
特徴
ニコンF用のレンズとして1964年に発売された。この初期の世代のレンズは、自動絞りであることを示すAutoの表記があることから、通称Autoニッコールと呼ばれる。レンズ構成は4群6枚で、当時の価格は17000円だった。Fマウント用レンズとしては初の85mmで、74年にはコーティングを改良したHCタイプにマイナーチェンジしたが、75年にはさらに外観もリニューアルしたNew
Nikkorになる。その後、Ai化したf2タイプとf1.4タイプの2つになり、f1.8はしばらく姿を消すが、AFで復活、現在はAiAF
Nikkor 85mm f1.8Dとなる。
初期のAutoニッコールの特徴として、一部が銀色の銅鏡でフォーカスリングも金属製。MFレンズらしくしっかりしたクリック感の絞りリングと、適度なトルクを持つフォーカスリングを持ち、MFでは快適な撮影が楽しめます。なんかレンズカタログの文句みたい(笑)
重量は420gで、最近の軽量なズームに慣れた手には結構ずしりと来ます。Fとの装着バランスは悪くありません。手頃な大きさなので、常用レンズとして気軽に使えます。最短撮影距離は1mで、ちょっと物足りないですね。僕はクローズアップレンズで対処してますが。
Ai改造を施す
旧システムとの互換性が保たれているFマウントだが(最近はかなり制約が多く、互換性がなくなりつつあるけど)、初期のAutoニッコールレンズは、当時のFやニコマートシリーズ用に開発されたもので、絞りリングのカニ爪がボディの露出計と連動する。が、F2フォトミックA以降は、Aiと呼ばれる絞りリング側のガイドでボディの露出計と連動する方式になったため、Ai方式のボディでは使用できない場合がある。一部のAi対応のボディ(EFなど)は、Aiのボディ側の爪を倒すことにより装着可能(この場合絞り込み測光となる)だが、AF世代になってからは、F4シリーズ、および爪を改造したF5以外は、ボディ側のAi爪が干渉して、そのままでは装着できない。しかしレンズの方を改造することでAiニッコールレンズとして使用することができた。実際、ニコンでは初期のAutoニッコールのAi改造を受け付けていた(現在このサービスは終了)。また、カメラの修理で有名な関東カメラサービスでは、現在もAi改造を受け付けているとか。
しかし、Ai改造といっても、絞りリングにAiガイドを付ければいいわけで、ならば自分でAi改造してしまおうということで、工具を片手に立ち上がったのである…
…が、改造はそんなに難しい物ではないです。具体的には、絞りリングを削るだけですから(^-^;)。手元にAiレンズがあれば、あとは気合と根性で何とかなります!
必要な道具は、金ヤスリのみ! まあ後は掃除機なんか用意しておくと汚れなくてすみます。
では写真をご覧ください。すごく簡単ですね(笑) ただ削るだけなんです。写真のAuto85mmは、絞りリングを金ヤスリでただただひたすら削っただけです。(拡大写真で見てもらうと分かりますが、ヤスリで削ったところがギザギザしてます) ニコンでやっていたAi改造とは根本的に違いますが(ニコンの改造は絞りリングをAiタイプに交換するらしい)、簡易的な改造と考えてもらえればいいでしょう。もちろんAi以前のボディでも普通に使えます。
さて削る場所ですが、これを間違うと露出が狂ってしまうの注意しましょう。手元にAiレンズ(Gタイプ以外のAFレンズかMF)を用意しましょう。Aiレンズの絞りリングを見てみると、f8とf11の間あたりにAiガイドがあると思います。つまり、ボディ側のAi爪がここに引っかかればいいわけですから、Autoニッコールの絞りリングも、f8とf11の間に印を付けて、その印から明るい絞り値方向(Aiレンズを見れば分かると思いますが…)を削れば間違いないです。
ここで問題になるのが削りカスです。金属を削るわけですから、金属粉が出ます。この金属粉がレンズ内に入ってしまったら良くないので、レンズを布か何かで覆っておきましょう。また後玉に傷が付かないよう注意しましょう。後玉の傷は前玉より写りに影響します。ここで掃除機を使って金属粉をこまめに吸い取りながら作業すれば大丈夫かと思います。さああなたもヤスリを手にとって一生懸命削りましょう!
写真の通り削ったら、金属の地肌むき出しなので塗装しましょう。塗装といっても、自分は黒の油性ペンでグリグリ塗っただけですが。プラモなんかやる人であれば、タミヤカラーやらミスターカラーでも塗ってあげてください…
では装着してみましょう。
F90Xに装着したところ | Ai改造レンズにボディのAi爪がしっかり引っかかる |
写真の通り手持ちのF90Xに装着してみると、プラボディと金属レンズという組み合わせにもかかわらず、以外としっくり来ます。バランス的にも違和感はありません。さてF90Xに装着した場合、絞り優先およびマニュアルモードのみとなります。また測光は中央部重点測光またはスポット測光のみで、マルチパターン測光は使用できなくなります。これは普通のAiレンズを装着したときと同じですね。もちろんAFは使えませんが、合焦サインの点灯によりフォーカスが合っているかどうかの確認のみ(フォーカスエイド)は可能です。ただし、ファインダに絞り値が表示されないため、その点がちょっと不便ですが、割り切って使いましょう。
装着に関してですが、すこ〜し問題が生じます。それは、絞りリングの削った幅が狭いため、レンズの絞りをf11にしないと脱着ができないのです。この問題は、削る幅を広げれば解決しますが、これ以上削るのは面倒なので、f11にて脱着しています。写真のようにしっかりボディのAi爪が引っかかり、露出計が絞りリングの位置に応じてきちんと正しい露出(適正な露出という意味ではない)を出してくれます。
作例
では作例を見てみましょう。といっても1枚しかありません。何枚か撮ったのですが、当時まだ撮影データをPCで管理していなかったため、この85mmで撮影したと分かった写真が少なかったからです。サムネイルがこれだけモノクロでないのは意図によるものです。
2000年秋、友人と北海道のオコタンペ湖で撮影したときの写真です。絞り優先でf8だったと思います。フィルムはベルビアです。ベルビアにしてはやや発色が弱い印象はあるものの、特に違和感のない仕上がりです。あまりいい絵ではなかったのでここには載せませんが、絞り開放で撮ったときも周辺光量落ちは少ないですが、ボケは固めです。当時のニッコールはカリカリの描写とよく言われたようですが、実際レンズは解像度を上げようとするとボケが汚くなり、逆にボケを重視すると解像度が落ちるというのがセオリーのようです。必ずしもそれが当てはまるわけではないのですが、古いレンズはこういう傾向があるようで。
モノクロフィルムが主流だった当時の設計のため、カラーバランス的には発色が浅いです。しかし解像感が良く、良い意味でニッコールらしいといえます。f8まで絞ると、最近のレンズと比較しても遜色のない写りだと思います。さすがに今のレンズよりはフレア・ゴーストには弱いかもしれませんが、残念ながらそこまでは試していません。
そんなわけで、AFボディとの組み合わせでも違和感なく撮影できます。ピントに関しては、ニコンはMFレンズを今でも販売しているだけあり、キ○ノンのようにピントの山が見づらいと言うことはないです。ただファインダ倍率的にはAF機は苦しいかも。
Autoニッコール世代の古いレンズは、一部のレアなレンズをのぞいて結構安く手に入ります。ちょっと改造するだけでAi対応ボディにも違和感なく使えますので、ニコンファンは試してみてはいかがでしょうか? 現代のレンズとはひと味違う描写ハマっちゃうかも!?