AiAF-S Zoom Nikkor ED 80-200mm F2.8D (IF)
AiAF-S Zoom Nikkor ED 80-200mm F2.8D(IF)
2007年7月作成 2011年1月更新
特徴
AF時代のニッコールの大口径望遠ズームは、直進ズーム式のAiAF ED80-200mm f2.8Sからスタート。その後光学系はそのままにDタイプ化され、さらに三脚座が装着され直進ズームから一般的な回転式のNewとなり現在に至ります。価格は他社よりもやや安めの154000円(税別)ですが、キヤノンから超音波モーターレンズが販売され、ニコンも同様に超音波モーター化を迫られ発売したのが本レンズです。98年12月販売開始、ライトグレーが翌年追加されました。ニコンの場合、レンズ内モーターのAF-I、AF-SレンズはボディによってAFが使いないものがあったため、従来のボディ内モーター駆動の従来型、そしてAF-Sの本レンズを分けて生産せざるを得ません。ただしAF-S化にあたり、本レンズは光学系は新しいものになり、従来の3枚を超える、5枚のEDレンズを使っています。そのため価格は9万円ほど高くなっています。
従来タイプ(07年現在現行品)はレンズフードが別売りの上に、浅い丸型バヨネットで物足りないのですが、本レンズは花形バヨネットが標準で付属、絞りが円形になっているなど、改良されています。
何より最大の特徴は、AF-Sによる常時MFに移行できる利便性です。望遠ほどフォーカスはシビアになるので、非常に便利な機構です。AF自体もボディ内駆動より速く、動きものの撮影にも最適です。
2003年にVR(手ブレ補正)付きのAF-S VR Nikkor ED 70-200mm f2.8G (IF)が発売となり、本レンズは生産完了しました。高価なレンズとしては発売期間が比較的短いレンズでした。
発売年 | 1998年12月12日(ブラック) |
レンズ構成 | 14群18枚 (EDレンズ5枚) |
焦点距離 | 80-200mm |
最小絞り | f22 |
絞りバネ枚数 | 9枚(円形絞り) |
最短撮影距離 | 1.5m(フォーカスリミット切替あり) |
絞りリング | あり |
最大撮影倍率 | 1/6.3倍 |
フィルターサイズ | 77mm |
AF動作方式 | 超音波モーター |
質量 | 1580g(三脚座含む) |
全長 | 207mm |
フード | HB-17(花形) |
三脚座 | 着脱式 |
比較検討
F90X購入後最初に買った望遠が、中古のSIGMA APO 70-300mm f4-5.6でした。それから8年近く使ってきたわけですが、ある程度写真の経験を積むと、安物望遠ズームの画質に不満が出てきました。普段単焦点レンズメインで使っていると、安物ズームの色乗りの悪さ、抜けの悪さを感じるようになって来ました。そろそろ望遠を新調したい。と言うわけで色々考えてみました。比較検討としては…
こんなところです。
1.は、純正かつ手ごろな値段です。6万円台でAF-SとVRを搭載して、安く人気があるレンズです。ただ、F90XではVRが使えず、Gタイプで絞りリングもないためにM、Aモードでの撮影ができません。デジタル一眼レフを持ってたら真っ先に候補になってたレンズですけどね。あと、今までのSIGMAとスペック的には同じなのも気になりました。
2.中古では従来の直進ズームタイプはかなり安く(5〜6万円)買えますが、三脚座がなく使いづらいので却下。親父が持ってて一度借りたけど、画質はいいんだけど操作性がなぁ…と。現行Newタイプは中古では程度のいいものは中途半端に高く、ならもうちょっとがんばればAF-Sが買えるし…(結局それが最終結論)
3.上記のNewと同程度の値段。これも純正と甲乙付けがたいレンズでした。ニッコールより一回り軽量コンパクト。ただAF時の動作ショックが大きいのが気になりました。またSIGMAは逆光に弱いのがよく言われる欠点です。悩んだけど、やっぱりニッコールが欲しいって気持ちが強かったので、選択から外れました。
4.航空ショーやモータースポーツに最適な画角です。テレコンなしでほとんどの被写体をカバーできる汎用性の高さが魅力です。ネックはその大きさでした。明らかに手持ちのカメラバッグに入らないのです。常時持ち歩くには難しいレンズでした。でもこれ1本あれば航空ショーとか便利だろうなぁ。
5.これも開放f4で300mmまで使えて魅力的です。80-200mm1.5倍テレコン付けるより画質もいいとされています。ただ、微妙に長くてバッグに入るサイズかと言われると微妙な大きさです。魅力的なレンズではありますが。
6.今回最も低予算で買えるレンズ。400mmまで使えてコンパクト。三脚座も着いてます。ただし、超音波モーターレンズでもなく、光学系も古い、画質の大幅向上が望めないかなと。
結局、納得行かないものを買うより、少しがんばって一生物を買ったほうがいいだろうと言う結論に達しました。中古やヤフオクを色々比較検討し、三脚座欠品だけど新品同様のレンズを落札。三脚座欠品だったのがネックだったか、自分以外入札はありませんでした。結果的には別途三脚座を買った代金を考えても安く手に入りました。
使用感
でかい!重い!レンズです。レンズフードの大きさが拍車をかけて、見た目はかなりイカツイです。おいそれと使えるレンズではないですね。
外装は高級感ある仕上がりで、F90Xとは質感がまったく合いません(笑) また、D300よりもシボが深い印象です。高級感で言えば、後継のVRやVRIIよりずっと質感に優れています。
AF-S搭載で、モーター音も静かでしかもAFも速いです。これは一度この速度に慣れると、従来のボディ内駆動に戻れないのもうなずけます。切り替えなしにMFに移行できるのは非常に便利で、これだけでもAF-Sの価値がありますね。
画質はやはりこのクラスのレンズともなると、安いズームとは明らかに異なります。開放から安心して使え、ファインダ上でもそのボケのよさが分かります。絞りを開け気味に撮れば、明るい望遠レンズならではの被写体が浮き上がるかのような立体感ある描写と美しいボケ味です。絞ればシャープですが、ピントの線が太くなることもなく高画質を体感できます。
シビアな逆光条件でもゴースト・フレアがほとんど気になりません。保護用に買ったUVフィルターをつけると返ってフレアが出てしまうので、屋外撮影では外しています。
とにかく重いでかい以外は欠点がありません。デジタル一眼レフ以前のレンズですが、デジタルでの使用もまったく問題ありません。D300との組み合わせでも大変素晴らしい描写で、逆光でもヌケの良差は抜群です。
聞いた話では、70-200mm VRよりも絞り開放時の描写も優れているようで、DXフォーマット機であれば、解像度とも申し分有りません。
作例
CDAOCオフの最後に撮った写真です。奥はなべやんさんのアコードです。
ニコンF90Xs Aモードf11 コダック・エリートクローム100
比べるのも酷ですが、中古で19800円の昔のSIGMA 70-300mm APOとは比較になりません。色乗りのよさ、シャープネス、文句のつけようがない素晴らしい画質です。さすがEDニッコールです。望遠レンズはピンキリですが、値段の差は大きいですね。ただ大きさと重さを考えると、常時持ち歩くのはなかなか難しいレンズでもあります。悩ましいレンズですね。
円形絞りを採用しボケ味も申し分なく、二線ボケの傾向もありません。
このレンズは一生ものの価値がありそうです。現行VRは絞りリングのないGタイプになってしまい、MFカメラでは事実上使用できなくなりました。このAF-S
80-200mmはちゃんと絞りリング健在で、カニ爪を付ければFフォトミック世代から開放測光で使用可能です。そろそろ古くなり始めてきています。と同時に値も少しずつ下がって手に入れやすくなっていますが、程度が良いものがまだ多い今のうちに手に入れておいたほうが無難でしょう。下には未だ現行のAiAF
80-200mm F23.8D(New)があるため、大幅な値崩れはありませんが。
入門レンズを卒業して、ステップアップするのに、80(70)-200mm f2.8クラスはどのメーカーでもお勧めレンズだと思います。
ウイークポイント・不具合など
製造から10年以上経過した個体が多く、また超音波モーターを搭載した初期のレンズゆえ、超音波モーターの不具合がボチボチ聞かれます。
メジャーな不具合としては、AF動作時のキーキー音で、正常であればほぼ無音ですが、クーという小さな鳴きに始まり、もっと症状が悪化すると、キーキー耳障りな音になります。
超音波モーターの修理自体が2012年頃に終了のようなので要注意です。
※2011年1月、AF-S NIKKOR 70-200mm f/2.8G ED VRIIと入れ替えで売却しました。描写に関しては、VRIIに負けないレンズだと思います。