AF-S NIKKOR 35mm f/1.8G ED


AF-S NIKKOR 35mm f/1.8G ED


2014年11月作成

●特徴

Nikonの35mm単焦点レンズは、長らくAFはAi AF Nikkor 35mm f/2Dと、MFのAi-S f/1.4とf/2のみで、デジタルが主流になってからもずっと変わらずでした。
これは望遠レンズを除く、NikonのAF単焦点レンズ全般について言え、スームレンズと比較して長いこと放置された状態でした。
2010年、待望のAF-S化された35mm f/1.4G EDが発売されましたが、高価で大きく重いレンズで、誰しもが手を出せるようなレンズではない。古くなったf/2Dの後継を望んで待つこと4年。f/1.8シリーズの1本としてついに発売されたのが本レンズです。
長年待たされだだけあり、やまろにしては珍しく新品購入、しかも予約して購入でした。それだけ待ち望んでいたレンズです。
なにせf/2Dは、相当使い込んで表面はテカっていますから。

f/2Dより一回大きく重くなったのが残念ですが、f/1.8シリーズに共通する安定した画質で、メインレンズに昇格です。D810にほぼつけっぱなしのレンズですね。


  AF-S NIKKOR 35mm f/1.8G ED  Ai AF Nikkor 35mm f/2D 
 発売年   2014年2月6日  1995年3月
 レンズ構成  8群11枚 (EDレンズ1枚 非球面レンズ1枚)  5群6枚
 焦点距離  35mm  35mm
 最小絞り  f16   f22
 絞りバネ枚数  7枚(円形絞り)   7枚
 最短撮影距離  0.25m
 0.25m
 絞りリング  なし   あり
 最大撮影倍率  1/4.1倍  1/4.2倍
 フィルターサイズ  58mm   52mm
 AF動作方式  超音波モーター   ボディ駆動
 手ブレ補正機構  なし  なし
 質量  305g  205g
 全長  71.5mm  43.5mm
 フード  HB-70(花型/付属)  HN-3(別売)
 三脚座 なし  なし




●使用感

上にも書いた通り、サイズはf/2Dより一回り大きくなりました。f/2Dがあまりにもコンパクトなレンズだったというのもありますが、コンパクトと言えるか、というと、もう少し頑張って欲しかったサイズです。
全長が1.5倍以上長くなってしまったのが残念です。しかしながら、レンズの枚数も増え、EDガラスも使用、AFモータを内蔵すると、この大きさになるのは仕方ないのかな、とも思いますが。

外装は、最近のNikonの低価格レンズに多いエンジニアリングプラスチックで、正直高級感は全くありません。ただf/2D世代の、使い込むとテカってしまうあれよりはマシだと思います。
フォーカスリングは大きめで、MF操作もしやすくなっていますが、もちろんMFレンズに敵わないのは言うまでもなく、f/1.4Gと比べても落ちるのは、値段なりです。多少スカスカしますが、f/2DのMFよりはマシです。
もっとも、本気でMF操作するには、遊びが大きく不満は出ると思います。

D800/810との装着感はかなり良く、レンズのサイズとボディの重さのバランスが良いです。スナップ用につけっぱなしでも苦にならない大きさとサイズですね。

解像感は、さすが新世代レンズだけあり、開放から優れていますが、開放でもカリカリのSIGMAとは違い、もう少しやわらかな印象。とは言え、絞ればきっちり解像度が上がり、f4まで絞れば、周辺まで十分な解像度が得られます。
もともとf/2Dも解像感の良いレンズでしたが、画面周辺までさらに良くなった印象。
ボケ味は、特筆するほどの良さではないものの、f/2Dよりも柔らかい描写となっています。
ナノクリスタルコートは採用されていませんが、最近のレンズらしく、逆光でもクリアでヌケが良く、特に夜景で街灯などの明かりが入ってきても、f/2Dのようにゴーストが多く出るということはありません。
光芒はf/2Dのほうが綺麗に出ます。

AFは特段速いわけではないですが、ジーコジーコしていたf/2Dに比べると、AF-S化の恩恵は十分感じます。精度もよく、動きまわる子供もバッチリ目にピントを合わせられます。
最短撮影距離はf/2Dと同じ0.25mで、これは先代と同様使い勝手がよく、ちょっとした小物の撮影もこなせます。

f/2Dとの比較では、サイズ・重さと光芒の出方以外、ほとんどの面で優っていると思います。作例は夜景のみですが、昼間の撮影であれば、f/1.8Gのクリアなヌケの良さが光るでしょう。
総じてバランスの良いレンズで、50mm f/1.8Gと共に、扱いやすい標準レンズとして、コストパフォーマンスも高く、フルサイズ機ユーザーにおすすめのレンズです。


f/2D(右)と並べて比較。
大きさは一回り以上、f/1.8Gのほうが大きい。
レンズフードは、f/1.8Gは花型が付属。
f/2Dは別売りの丸型ねじ込み式フード。



●描写・作例

ヌケが良く解像感あり、総じて新型設計らしいレンズと言えます。
90年代以前のNIKKORレンズに多かった、解像度は高いが、ボケ味も固め、というレンズづくりから脱却し、ピントの合った部分の解像度と、被写界深度外のボケる部分へのつながりが良いレンズです。
最近のSIGMAに多い、ピントの合った場所の鬼のような解像度と、急激に立ち上がるボケ、とは一線を画する描写で、もう後は好みの話になるでしょう。

作例は、自宅ベランダから撮った夜景で、多くの人が気にしている、というより自分が一番気になっていたf/2Dとの比較を行ってみました。
なるほど、ヌケの良さは夜景撮影でよくわかります。街灯の強い光が入っても、f/2Dのよいにフレアやゴーストが出ることはほとんどどなく、開放時のコマ収差も、f/1.8Gは大きく目立つこともありません。
コマ収差を徹底的に追求しただけはあります。

唯一、絞り羽根の影響を受ける光芒の出方が、円形絞りを採用していないf/2Dのほうが綺麗に出ます。

以下、D810に装着しての撮影です。ピクチャーコントロールはナチュラル、RAWで撮影し、倍率色収差のみON、ゆがみ補正や軸上色収差補正はOFFとし、JPG変換しています。
3630万画素のまま掲載しています。ブログでは容量の制約があるため、これが出来るのが昔ながらのHPの良さです。


  AF-S NIKKOR 35mm f/1.8G ED  Ai AF Nikkor 35mm f/2D  コメント
絞り開放
f1.8/f2
どちらのレンズも周辺減光はそれなりにある。

f/1.8Gは、コマ収差がそこそこ発生している他、軸上色収差は多め。
ただし軸上色収差はRAWで補正可能。
中心部の解像感は良好。周辺はやや流れ気味。

f2Dはコマ収差が非常に大きい。フレア、ゴーストも非常に多い。
軸上色収差は、f/1.8Gより少なめ。
中心部の解像感は良好。
f2.8 どちらのレンズも、まだ周辺減光が感じられる。

f/1.8Gは、1段ちょっと絞るだけで、周辺も解像感が高くなる。
軸上色収差もかなり低減する。
コマ収差も気にならないレベル、フレアほとんどでない。
抜けが良い。

f/2Dはコマ収差とフレア、ゴーストもまだ多め。
周辺の解像感もf/1.8Gより劣る。中心部の解像感は良好。
f4 どちらのレンズも、f4まで絞ると、周辺減光は気にならなくなる。

f1.8Gは、ここまで絞ると画面全体で解像感が高くなる。
また、コマ収差もほぼ解消、軸上色収差も出なくなる。
周辺まで解像感を得るには、f4程度に絞れば良いということになる。

f/2Dも中心部の解像感は高く、この辺りから光芒が美しい。
一方コマ収差はまだ残っていて、フレアは依然多め。
f5.6 いずれのレンズも、周辺減光はほぼ解消される。

f/1.8Gは周辺まで高解像度が得られる。
フレアもなく抜けが良い。
風景や夜景は、f5.6〜8辺りが美味しいレンズと言える。

f/2Dは、まだコマ収差がわずかに残る。
フレアも周辺ほど多めでヌケが悪い。
解像度も中心部はf/1.8Gと遜色ないが、フレアの影響で周辺はもう一歩。
ただし、光芒の美しさはf/1.8Gを凌駕する。
f8 f1.8Gは、解像感のピークに達する。
風景夜景で最高画質を得たいなら、f8がオススメといえる。
光芒も大きく出てくるが、光芒の美しさはf/2Dに敵わず。

f/2Dはここまで絞ってもフレア・ゴーストは改善しない。
コマ収差はほぼ解消する。
解像感はほぼピークに
とにかく光芒の出方は美しい。
f11 いずれのレンズもコマ収差は見られない。

f/1.8Gは依然として解像度も高く、フレア・ゴーストもほぼなく、抜けが良い。
また、光芒の出方も美しく、f/2Dと遜色なくなる。

f/2Dも解像感は周辺まで得られるが、フレアやゴーストは相変わらず。
フレアの影響が残り、周辺のコントラスト周辺のコントラストはもう一歩。
 
f16 f/1.8Gは、ここが最小絞りとなる。
ここまで絞ると、回折による解像度低下が少し見られる。
光芒がかなりハッキリと出てくる。

同様にf/2Dも回折による解像感低下が見られる。
f22 - f/2Dのみf22まで対応する。
回折の影響で解像感低下が見られる。
光芒もうるさくなる。 


以下フリーの作例は、解像度を長辺側2048ドットに落としています。

露出補正で思い切りマイナス側に振る。
暗部もしっかりと諧調が出ていてディテールは豊富。
f4まで絞ると、全体的に十分高い解像度が得られる。
ボケ味も、円形絞り採用になり、f/2Dで時折見られるうるさいボケではなく、なだらかに。

データ:Nikon D800 + AF-S NIKKOR 35mm f/1.8G ED
Aモード(f4 1/40)-3.0 ISO110 RAW現像
f/2Dは当時としては寄れる35mmだったが、本レンズもそれを継承。
50mmレンズより寄れて撮影倍率も高いので、花を近くで撮る場合も、とても扱いやすい。
ボケ味は素直で、コントロールしやすい。

データ:Nikon D800 + AF-S NIKKOR 35mm f/1.8G ED
Aモード(f6.3 1/60) ISO320 RAW現像
  絞り開放で撮影。
雛人形のお顔にピンを合わせる。開放でもきちんとお顔はディテールが出ていますね。
それでいてカリカリにはならず、ピント面とボケのつながりが滑らか。
この感覚は、f/2Dとは異なるもので、まさに新世代レンズらしい描写です。

データ:Nikon D800 + AF-S NIKKOR 35mm f/1.8G ED
Aモード(f1.8 1/40) ISO400 RAW現像




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