AF-S NIKKOR 24-70mm f/2.8E ED VR

AF-S NIKKOR 24-70mm f/2.8E ED VR


2018年11月作成

●特徴

購入したのは2017年3月でしたが、バタバタしていて、気がつけば2年…

AF-S NIKKOR 24-70mm f/2.8G EDを下取りに出して購入したのが、本レンズAF-S NIKKOR 24-70mm f/2.8E ED VRです。
購入当初は、まだD850は発売されておらず、17年中には発売されるのではと噂されていた時期です。
なので、そこで本レンズ購入は資金的にどうかと思いましたが、標準ズームでの動画撮影でVRの必要性を痛感していたことから、購入に踏み切りました。

本レンズは、2015年10月に発売されました。
光学設計者はAF-S NIKKOR 24-70mm f/2.8G EDと同じ、原田壮基氏です。
AF-S NIKKOR 24-70mm f/2.8G ED(以下Gタイプ)は、1200万画素のNikon D3と同時期に発表されたレンズでしたが、その時点では、まさか将来D800のような3600万画素オーバーの機種が発売されることは予想していなかったとのことです。
ですが、実際にGタイプがD800以降の高画素機に対して画素数が不足していたか? と問われるとノーでした。
今でこそ高画素機に対する誤解や偏見も少なくなりましたが、D800デビュー当時、高画素にレンズが追いつけないだの、やれ設計の古いレンズは解像度が出ないなどと言われたものです。
実際はそんなことはなく、良いレンズは高画素機でも真価を発揮すると言えるでしょう。


では、なぜVR搭載の後継レンズをNikonが発売し、私が購入したかと言うと、Impressの記事(https://dc.watch.impress.co.jp/docs/news/interview/725581.html)にもあるように、VR搭載の要望が多かったということです。
動画撮影では手ブレ補正は必至であること、スチル撮影でも、この当時OLYMPUS PEN E-P5を所有していて、ボディ内蔵手ブレ補正の効きの良さに驚愕したこともあり、単焦点レンズはともかく、ズームレンズはVRが今後必須と判断しました。

実際に使ってみると、解像感は大幅にアップしたという印象はなく、それよりもVRの効きの良さ(4段分補正は伊達じゃない)と、そして何よりピントの合っている部分とぼけていく部分が非常になだらかで諧調豊かになったこと、これが大きいと思います。

サイズがGタイプより更に大きくなってしまいましたが、サイズに制約をかけず光学系を充実させたという設計思想が分かれば納得です。
AFも、従来より1.5倍高速化したとのことですが、24-70Gタイプも大口径標準ズームとして相応に速かったため、ものすごく速くなったという印象はありません。

こうしてみると、Gタイプと新しいEタイプの差は少ないように感じてしまいますが、VR以外にも画質の傾向は、破綻なくスッキリ写るGタイプに対し、ズームらしからぬなだらかなボケや諧調を楽しめるのがEタイプの真骨頂で、他社のような解像感に趣を置いた設計とは一味違った印象を受けます。

VRが必要なければ、Eタイプ登場でGタイプの中古価格も落ち着いてきているので、今更ではなくGタイプは検討の余地はあります。
ちなみにD850発売後、D850と共に本Eタイプレンズが売れて品切れが続く事態となりました。それだけ注目度の高いレンズです。


  AF-S NIKKOR 24-70mm f/2.8E ED VR

AF-S NIKKOR 24-70mm f/2.8G ED

 発売年   2015年10月22日  2007年11月30日
 レンズ構成  16群20枚(EDレンズ2枚、ED非球面レンズ1枚、非球面レンズ3枚、高屈折率レンズ1枚、ナノクリスタルコートあり、フッ素コートあり)  11群15枚 (EDレンズ3枚・非球面レンズ3枚・ナノクリスタルコート1面)
 焦点距離  24-70mm  24-70mm
 最小絞り  f22  f22 
 絞りバネ枚数  9枚(円形絞り)  9枚(円形絞り) 
 最短撮影距離  0.38m(焦点距離35-50mm時)   0.38m(焦点距離35-50mm時) 
 絞りリング  なし  なし 
 絞り方式  電磁絞りによる自動絞り  機械伝達による自動絞り 
 最大撮影倍率  0.28倍   0.26倍
 フィルターサイズ  82mm  77mm 
 AF動作方式  超音波モータ  超音波モータ 
 手ブレ補正機構  ボイスコイルモーター(VCM)によるレンズシフト方式 手ブレ補正効果:4.0段※(CIPA規格準拠)VRモード:NORMAL/ACTIVE 三脚使用時ブレ補正:有り  なし
 質量  1070g  900g 
 全長  154.5mm  133mm




●使用感

■D5やD850との組み合わせに最適


ずしりと重く、大きなレンズですが、D5やD850、D810のようなボディなら、重量的にもマッチします。
Gタイプで感じていた広角端24mmで四隅はシャキッとししない感じもなく、全域で解像度は良好ですが、近年のSIGMAのレンズに多い、ピントの合っている部分からアウトフォーカスしていくといきなり大きくボケることによる解像感ではなく、もう少し線は柔らかめ、なだらかな印象です。
とにかく全域でそつなく描写しますし、絞り開放時のボケ味、特にピントが合っている部分からのなだらかなボケ味は、これまでの標準ズームにない感覚で、それだけでもこのレンズの価値はあります。
技術的には、前述のImpressの原田氏のコメントにある、

「前モデル(Gタイプ))の場合、特に広角から中間焦点域端のボケは画面中央から7割ぐらいまではいいのですがそれより外側が急変しがちでした。その原因は、サジタルコマフレアによる低周波のフレアが出ているためとわかっていましたので、今回はその部分までケアして、画面全体で均一なボケが得られるようにしています。社内の評価では、中判カメラのような自然なボケだとする評価も得ています。」

というのがよく分かるレンズです。
以前Gタイプ購入時は、

「f2.8通しのレンズとはいえ、大きく重すぎるのが難点で、大型の花型レンズフードも相まって、ちょっとした望遠レンズ並に大きいのが残念です。」

と記載させてもらいましたが、VRを搭載し、今考えうる最高画質を目指した本レンズなので、そこはあえて今回は指摘しません。
重量バランス的には、Gタイプより重くなれど、持ちやすいのであまり苦にはならなくなりました

本レンズ導入後、焦点距離がかぶる、AF-S 16-35mm f/4G ED VRの出番が減ってしまいました。
最近の撮影は、広角は24mmまであれば足りますし、なによりVRの効きが16-35mmの2.5段分に対し、4段分ある24-70mm Eタイプのほうが動画にも強いからです。


■フィルム一眼レフには事実上使えないけど…

電磁絞りのEタイプレンズとなり、事実上フィルムカメラと、古い世代のデジタル一眼レフでは、絞り動作が出来ないため、使用できなくなりました。
ただし、絞り開放固定となるだけで、実際には装着や撮影は可能(絞り開放のみ)なのと、AF-Sモータ対応ボディならAF可能ですし、F5やF100などVR対応ボディなら、VRも動作します。
もっとも、このレンズをあえてフィルム機で使用する人もそうは居ないでしょうけど。


■VRはしっかり効く

4段分の補正能力があるVR。4段あると、さすがに手ブレ補正の恩恵は高いです。
しかも、従来誤作動の可能性があるとして、三脚使用時はOFFにすることが推奨されていましたが、本レンズは三脚使用時もONのままで使用可能となりました。微細な三脚ブレも抑えられるそうです。
手ブレ補正も色々ありますが、個人的には3.5段以上あればよく効くと感じていて、本レンズはそれに合致します。

Gタイプより一回り大きくなっていますが、これはVR機構を入れたからではなく、仮にVRを入れなかったとしても、大きくなっていたとのこと。
VR前提で設計したわけですから、なるほどなと思いました。

もう10年近く前に購入した、DXフォーマット用の標準ズームとして、Tanron 17-50mm F2.8 Di VCを所有しています。この当時は手ブレ補正が各種レンズに搭載されだした頃で、手ブレ補正は確かに無いよりは良かったものの、2009年のレンズですから、現代のレンズやカメラのような、画面が貼り付くような感覚の手ブレ補正ではありませんでした。
当時はカタログっスペックで補正段数を表示していませんでしたが、体感では2.5段分程度でしょうか。
古いTamronと比較すると、この新しいAF-S 24-70mm f/2.8E ED VRはさすがに4段分の補正、ファインダでも分かるくらい強力です。

例えば、焦点距離35mm付近、1/2~1/4秒のシャッタースピードで、手持ち撮影でのヒット率はかなり高いです。


■ピント調整後はキリッとした解像感に

購入直後、どうもピントが甘い、Gタイプより解像感がないため、よくよくテストしてみると、絞り開放で後ピン気味であることがわかりました。
AF微調整を行い、-10でかなり改善しました。が、買ってすぐのレンズですから、メーカーに調整を依頼することに。



結果的には、メーカー基準範囲内とのことでしたが、念のためピント調整を行ったとのこと。 しかし戻ってきたレンズは、AF微調整をOFFにした状態でも、絞り開放から解像度が出るようになりました。
高画素機とAFは、本当にシビアな世界です。 昔よりピントも本当に精度が要求されています。
精度ではミラーレスのコントラスト式に分があるのも、何となく分かる気がします…



旧型になってしまったGタイプニコンタンブラーとのコラボ。
右がGタイプを模したタンブラーなのですが、Eタイプのほうが一回り大きくなっているのがわかります。
クラス最大級の大きさとなりました。
フォーカスリングやズームリングの位置はG型と同じ配置なので、入れ替えても違和感なく使えます。
VRは4段分補正で、最近の望遠レンズと違い、1世代前のNORMALとACTIVEの切り替え。
ACTIVEは乗り物など動く場所での撮影に効果的とされていますが、実際そういう場面はほとんどなし。
今は望遠レンズはNORMALとSPORTSという切り替えになっています。
標準ズームの本レンズは、基本的にNORMALにセットしておけば問題ないでしょう。
なお、三脚使用時も三脚対応VR動作するため、基本はVRはONのままで良いです。



●描写・作例

結果的に本レンズの評価の分かれどころともなっていますが、絞り開放の近接撮影では、ピントの芯がありながらも、ふわっとした柔かな描写です。
これは解像感がないのではなく、解像感は保った上で、ピントの合っている部分からボケていく部分への諧調が非常になめらかなのです。
最近の高解像度レンズにありがちが、ピントが合っている部分はカリカリに、そうでない部分はボケボケに、という、極端でわかりやすい描写とは一線を画します。
ですから、カリカリボケボケがお好みであれば、このレンズではなくSIGMAに行ったほうが良いでしょう。
両者は、作例を見ている限り、似ているようで正反対の性格なのです。

Nikonは3次元ハイファイを重視し、解像力のテストチャートのような平面の2次元の被写体重視ではなく、実際の被写体は3次元であるということをベースに、レンズを設計している事がよく分かるレンズです。
その集大成が、AF-S NIKKOR 58mm f/1.4Gであり、105mm f/1.4E EDですが、本レンズも3次元ハイファイを重視していると思わせる、ズームレンズらしからの描写です。


D850を導入してすぐに撮った17/9/9、友人らと飲みにった際に撮影したベリーダンスの1コマ。
当然手持ち撮影ですが1/5秒でこういった躍動感ありすぎる写真が撮れました。

データ:Nikon D850 + AF-S NIKKOR 24-70mm f/2.8E ED VR
Aモード(f2.8 1/5) 29mm (ISO250)
同じくベリーダンス、こちらはさらに1/3秒まで落としてみました。
少しやりすぎな感がありますが(笑)、ほぼ手ブレなし(背景はブレていない)、文句なしの画質。

データ:Nikon D850 + AF-S NIKKOR 24-70mm f/2.8E ED VR
Aモード(f2.8 1/3) 22mm (ISO100)


 
逆光での撮影。17/5/3
Gタイプと同様、ほとんどゴースト、フレアがないヌケの良い画像であるということ(上の写真)。
レンズ枚数は増えたにもかかわらず、逆光とは思えないヌケの良さは、Gタイプから引き続き健在。
同じ場所で、古いAI AF Nikkor 20mm f/2.8Dで撮影した作例(下の写真)では、フレアが発生してコントラスト低下しています。
これだけコーティングによる差は大きいのかと痛感しました。


データ:Nikon D810 + AF-S NIKKOR 24-70mm f/2.8E ED VR(上の写真)
Aモード(f11 1/640) 26mm (ISO64)
2017年GWの函館は五稜郭公園の桜。
例年、この時期は寒かったりして満開までもう一歩のことが多いのですが、この日は素晴らしい満開具合。
これほどの桜をほかで見たことはなく、住んでいたときも含めて人生最高の桜日和となりました。
この写真は絞り開放ですが、ボケすぎず適度な柔らかさがあります。

データ:Nikon D810 + AF-S NIKKOR 24-70mm f/2.8E ED VR
Aモード(f2.8 1/1600) 58mm (ISO64)
  同じく、2017年GWの函館は五稜郭公園の桜。


データ:Nikon D810 + AF-S NIKKOR 24-70mm f/2.8E ED VR
Aモード(f2.8 1/1600) 58mm (ISO64)




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