AF-S NIKKOR 24-70mm f/2.8G ED
2013年4月作成
●特徴 |
2007年8月、ニコン初のFXフォーマットデジタル一眼レフカメラ「D3」の発表と同時に、ナノクリスタルコートを採用した大口径レンズが数本発表されました。 そのうちの1本がまさに本レンズで、標準ズームレンズAF-S Zoom-Nikkor 28-70mmf/2.8D IF-EDの後継にあたります。 ナノクリスタルコートは、レンズの乱反射を抑えるコーティングを、デジタル一眼レフ時代の厳しい要求にこたえるために改良されたもので、フィルム時代の設計のレンズと比較して、フレアやゴーストの発生が大幅に抑えられています。 http://www.nikon.co.jp/profile/technology/life/imaging/nano/index.htm 満を持して発表された「D3」と組み合わせるにふさわしいレンズであるといえるでしょう。 発売から数年が経過し、既にFXフォーマット機は、D3からD3SやD700、さらにD4、高画素のD3XやD800/D800Eが発売されていますが、より高画素、高画質化していくボディでの使用にも耐えうるレンズでしょう。 |
発売年 | 2007年11月30日 |
レンズ構成 | 11群15枚 (EDレンズ3枚・非球面レンズ3枚・ナノクリスタルコート1面) |
焦点距離 | 24-70mm |
最小絞り | f22 |
絞りバネ枚数 | 9枚(円形絞り) |
最短撮影距離 | 0.38m(焦点距離35-50mm時) |
絞りリング | なし |
最大撮影倍率 | 1/3.7倍 |
フィルターサイズ | 77mm |
AF動作方式 | 超音波モーター |
手ブレ補正機構 | なし |
質量 | 900g |
全長 | 133mm |
三脚座 | 着脱式 |
●使用感 |
■D800との組み合わせにも最適 発売から数年が経過し、一時期この辺りが限界と思われていた高画素化の波が再び押し寄せています。 2012年3月発売のD800/D800Eは3630万画素。本レンズと同時発表のD3は1230万画素ですから、ほぼ3倍の画素数になっています。 さて、気になるのが、発売当時想定されていなかった高画素のボディに、本レンズが適するか? これは全く問題ありません。 なにせ、手持ちの(手持ちだった、になりますが)80年代の光学設計であるTokina New AT-X 270 PROでも、完全とはいかないまでも、それなりの解像感は出ていました から。 それより20年も新しい設計の本レンズは、全く問題ないと言えます。 高画素ボディだから、何がなんでも最新レンズ、高解像度レンズじゃなきゃダメというわけでもないですしね。 これは多くの方が指摘していますが、広角端24mmでは、四隅はシャキッとしません。 しかし中心部はちゃんと解像しますし、本来24mmは、一昔前は超広角の入口。四隅まできっちり写るのが困難な領域。それゆえ、超広角ながら解像感の高いAF-S NIKKOR 14-24mm f/2.8G EDは神レンズ扱いされているようですが、あのレンズは特別ですね。 よく使う28〜50mmにおいては、D800でも絞り解放から安心して使えるレンズです。 ナノクリスタルコートは、まったくフレアやゴーストが出なくなるわけではないですが、わざと逆光状態でファインダを覗くと、コントラスト低下がずいぶん抑えられているのがわかります。 正直、前から持っていた同じくナノクリスタルコート採用の、AF-S NIKKOR70-200mm f/2.8G ED VRIIでは、望遠レンズということもあって、そうそう逆光でのコントラスト低下が気にならなかったために、いまいち効果を実感しませんでしたが、標準ズームだとその効果がよくわかりますね。となると広角ではもっと効果が顕著でしょう。 f2.8通しのレンズとはいえ、大きく重すぎるのが難点で、大型の花型レンズフードも相まって、ちょっとした望遠レンズ並に大きいのが残念です。 ■もちろんフィルム一眼レフにも フィルム時代では考えられなかった(そこまで要求されなかったともいえる)解像度や耐フレア・ゴースト性能を兼ね備えたレンズですから、フィルム機にも最適です。 ただし、フィルム機で問題になるのは、デジタルと違って湾曲補正、ヴィネットコントロール、倍率色収差補正は効かないこと。 逆に言うと、レンズの素の特性で撮影可能です。こちらはF90XやF100で撮影したものを検証予定です。 ちなみに、F90Xでは、絞り操作がレンズ側絞りリングでないとできないため、事実上AモードとMモードでは使用できません(常に最少絞り状態になってしまう)。 ただし、SモードやPモードでは問題なく撮影できますし、Pモードでプログラムシフトさせれば、一応絞りのコントロールはできなくはないです。これは絞りリングのないGタイプレンズの欠点で、せめて単焦点やFXフォーマットレンズには、絞りリングが欲しかったですね。 ■VRはないけど… TAMRONからは、FX対応大口径標準ズーム初の、手ブレ補正機構VCを搭載した、SP24-70mm F/2.8 Di VC USDが発売されています。 さてニコン純正には高価なレンズにもかかわらず、VRが搭載されていません。では設計も新しく、VC搭載のTAMRONが有利ではないか? これは撮影の仕方によると思います。 例えば夜間の街角スナップ、フラッシュが使えない環境での撮影、手振れ補正があったほうが撮影の幅が広がるのは確かです。ただ、標準ズーム域では、手ブレ補正が優位になってくるシャッタースピードは、よく言われる1/焦点距離(秒)より遅く設定したとして、今度は被写体ブレが問題になってきます。 静止する被写体であれば問題ありません。動く被写体となると話は別です。 例えば、焦点距離28mmを使うとします。手持ち撮影で手ブレしにくい目安としては、シャッタースピード1/30秒。手振れ補正機構があれば3〜4段分の補正をしてくれる、となると、1/4秒でも手振れする確率が低くなるわけです。 ところが1/4秒で撮影する場合、それが建物や静止物であれば問題ありません。そうではなく、例えば人物撮影では大いに問題アリです。いくら手ブレしなくとも、1/4秒では被写体ブレしてしまうからです。 特に結婚式撮影では、少なくとも1/60秒程度は確保したいですし、そういう動く被写体の撮影が多いと、それほど標準ズーム域では手ブレ補正のメリットを享受できないのです。 ないよりはあったほうがいいですが、自分にとっては絶対必要というわけでもないですね。 ■だがしかし、大きく重いレンズ。AF-S 24-120mmと悩む。 TokinaのAT-X270より大きく重い。 もともと、普段のスナップ撮影は単焦点レンズなので、本レンズの使用は、レンズ交換が難しい撮影に限定されてしまうのも確か。 重く大きいので、このレンズを持ちだしてしまうと、逆に他のレンズを持っていくのが苦になるから、このレンズは最初から、こいつを使うという前提で持ち出すことにしています。 勿論高性能なレンズなので、これで不満な画質というわけではない、けども、やはり良質で軽量な単焦点レンズに対しては、やや分が悪いのも確か。 誰にでもおすすめできるレンズではなく、人によってはAF-S 24-120mm f/4G VRのほうが便利かもしれません。最後まで24-120mmと悩みましたから。 高感度耐性が高い今時の一眼レフであれば、無理に開放f値が高いレンズでなくとも良い場面が多く、また動画も撮るならVRは必須。 本レンズと24-120mm、どちらが良いかは人それぞれということになります。どうしてもf2.8が欲しいのであれば、本レンズ、そうでなければ24-120mmのほうがはるかに便利です。 ■Tamronの手ブレ補正付きは? 現在、強力なライバルたるTamron SP 24-70mm F/2.8 Di VC USD(Model A007)が存在する。 このレンズは、f2.8の標準ズーム初の手ブレ補正を備える。しかも超音波モーターも内蔵。 かつてであれば、このレンズに手を出しただろうけど、どうもD300用のSP 17-50mm F/2.8 XR DiII VCでのトラブル(AF誤作動と作動不良、VCの効き始めで画像がブレる)があってから、あまり信頼を置いていない。 ましてこのTamronのA007、かつてのTamron程は安くはなく(それでもニコン純正よりは大幅に安いが)、値段の割に安っぽい外装、防塵防滴では純正より劣るであろうと予想され、確実な信頼性の純正に軍配を上げた。 とは言え、画質はTamronも相当良いようで、価格もこなれてくれば、十分選択肢として入るレンズではあります。もう少し外装が良くなれば…。 |
●描写・作例 |
フィルム時代名を馳せた、Tokina AT-X270シリーズの後期型、NEW 28-70mm f2.8からの買い替えです。 Tokinaもフィルム時代は評判の良いレンズでしたが、デジタル時代、特にD800にはさすがに解像感が不足、また設計が古いために最短撮影距離も長いのも、大きな欠点でした。 本レンズはVRこそ無いものの、現代のレンズらしく最短撮影距離0.38mと不足なく、ナノクリスタルコートにより、逆光など厳しい条件下でもヌケが良く、コントラストがよく出るレンズです。 まさに、デジタル時代にふさわしいレンズです。 |