Nikon D850
Nikon D850 + MB-D18 + AF-S NIKKOR 35mm f/1.8G ED
2018年1月作成
●静と動の撮影を高い次元で両立した、完成度の高い一眼レフ |
2012年のD800/D800Eの衝撃的なデビューから5年、マイナーチェンジを超えたマイナーチェンジとして2014年に発売されたD810から3年、2017年は、Nikonやカメラを取り巻く環境も大きく変わりました。 高画素機では、5060万画素を超えるCanon EOS 5Ds/5DsRが登場、SONYもα7RIIでは、4K30p動画対応の4240万画素を達成しました。 さらにSONY α99IIでは、4240万画素で、AF/AE追従で秒12コマ達成と、高画素と連写を両立しました(Aマウント機のせいか、イマイチ盛り上がりに欠ける印象ですが…) 特に大きな変化は、ミラーレス機の大幅な進化。従来、レスポンスが悪い、AFが遅い、連写が遅いと言われてきたミラーレス機でしたが、この数年で大きな進歩を遂げました。 OLYMPUSのE-M1MarkIIや、SONYのα9のような、一眼レフ上位機に迫り、連写コマ数だけ見れば追い越しす勢いのカメラも登場しました。 これにより、一眼レフ機優位の時代は終わりを告げ、これからはミラーレス機が主力になっていく未来が見え始めました。 追い打ちをかけるように、Nikonは2016年の熊本地震による、イメージセンサーの供給不足や、売上の減少に伴う社員のリストラなどあり、暗いニュースが多かった中、D5や、まさかのD300S後継機となるD500の発売など、明るい話題もありました。 とは言え、フルサイズ機ではシェアをSONYに抜かれるなど、徐々に一眼レフを取り巻く環境が厳しきなってきているのも事実です。 そんな中、2017年の大型モデルチェンジとして期待されたのが、D810の後継モデル。折しもNikon100週年を迎える年です。 画素数もα7RIIと同様の4240万画素から、はたまた新規開発の7000万画素超えまで噂されましたが、いざD850として登場してみると、その中でも中庸かつ新規開発の、裏面照射CMOSセンサの4575万画素センサが採用されました。 また、D500と同様のXQD/UHS-II SDカードスロットの採用、D5/D500と同様の153点AFの採用は想像通りだったものの、フル画素で最大秒9コマ連写(MB-D18+EN-EN18b使用時)可能、単体でも秒7コマ連写に対応するなど、高画素機ながら連写に強いカメラとなりました。 もちろん、α99IIのように、高画素と連写を両立した機種は初めてではありません。が、細かく見れば、バッファの大きさはD850が上ですし(α99IIの連続撮影枚数は、撮影条件が不明確)、レンズもAマウントよりFマウントは遥かに豊富。メモリーカードもより高速なものに対応しているため、実質的にはD850のほうが、長く連写撮影可能といえます。 また、D一桁機に継ぐ機種としてのD800/D810は、連写より画素数優先となっていたことから、純粋なD700の後継機ではないと言われていて、連写優先のユーザーには未だ根強い人気を持つD700ですが、D850登場で、D700からの買い替えも検討に値出来る機種となりました。 もちろん、スペックとしては順当にD810から進化しています。 ・常用ISO設定範囲:ISO64~25600 (D810はISO64~12800) 拡張ISO32~102400相当と1段分の改善 ・シャッターユニットにシャッターカウンターバランサーをNikon一眼レフで初めて装備し、シャッターショックを軽減 ・先幕だけでなく、後幕も電子シャッターによるサイレント撮影が可能(D810は電子先幕シャッターのみ) ・電子シャッターのモード2(DXモード・864万画素・画質NORMAL)で秒30コマ連写を最大3秒間撮影可能(4K動画切り出しに近い?) ・液晶ディスプレイがタッチパネル・チルト式の236万ドットに (D810:固定式122.9万ドット) ・ピクチャーコントロールに「AUTO」を追加 ・AWBに「自然光オート」を追加 ・EXPEED5搭載 ・FXフォーマットのフルフレーム4k/30p動画撮影対応(フルムレームの4KはNikon一眼レフ初) ・フルHD/HD撮影時の3軸電子手ブレ補正対応 ・フルHD/HD動画、静止画ライブビュー撮影時のフォーカスピーキング対応 ・HDスローモーション動画対応(DXモードのみ) ・フィルムデジタイズアダプターES-2との組合せで、ネガフィルムのJPEG保存が可能な「ネガフィルムデジタイズ」搭載 ・D5の0.72倍を超える、0.75倍の光学ファインダ etc... 今回は、さすがにD800→D810のマイナーチェンジと言うものではなく、フルモデルチェンジだけあり、新しい機構や機能も充実しています。 ファインダ倍率を上級機のD5の0.72倍より高めた0.75倍を採用したという点は、原点に立ち返り、一眼レフの光学ファインダを重要視する姿勢が伺えます。ただ、欲を言えば、スクリーンは交換式として、MFし易いスクリーンも別途欲しかったですね。この辺りは、ファインダスクリーンを交換式とすると、ファインダのピント精度に影響するから、あえて採用していないようですが、Nikon Dfの開発者でもある後藤哲朗氏も、Dfは台湾メーカーのマイクロスプリットに交換しているそうなので、そういうのがオプションであっても良い気はしますが。 ただし、フォーカスエイドの精度も向上させているようで、これがNikonの回答なのでしょう。 シャッターバランサー搭載も、より高画素化したために、メカ的なブレを極力抑えているための地道な努力ですね。 今後電子シャッターがグローバルシャッターとなり、動体の歪がなくなれば、最終的にはメカニカルシャッターがない機種が増えていくのかもしれませんが、それはもう少し先の話でしょう。 SONYのα7シリーズも、初期のものはシャッターショックが大きかったのを、次のモデルでは改善しているわけで、地道な改善の積み重ねは、工業製品では重要なポイントです。 画質はもう文句のつけようがないです。 裏面照射型CMOSセンサの、低感度時の画質も一部で指摘されていますが、それはごく初期の裏面照射型のウイークポイントではありましたが、D850では特にD810より低感度が劣る、という感じもありません。 ただ、Nikon初の裏面照射型CMOSセンサからか、はたまはセンサがSONY製ではないからか、D810とは絵の質の傾向が異なる感じです。 例えば、シャドーについては、諧調がより豊かになった反面、ハイライトはD810より少し硬調な印象を受けます。 このあたりは、EXPEED4と5の差もあるため、もう少し設定をいろいろ試してみたいと思っています。 今回はRAW-M(2556万画素)が出来たことで、航空機撮影のような、とにかく枚数が多い撮影に積極的に使っていきたいと思います。 DXクロップ(1946万画素)も、積極的に使えますね。 。 |
今回は、D500と同様内蔵フラッシュを取りやめたことが、外観上の大きな変化点で、スッキリしたデザインになりました。 MODEボタンが左に、代わりにISOボタンが右に来たことで、ISO感度の操作がしやすくなりました。 また、D850はAFがより暗い状況に対応できるようになったためか、AF補助光もなくなりました。 必要なら、スピードライトの補助光を使えということでしょうね。。 |
|
大きな変化点その2は、記録メディアの変更。 CFがXQDカードスロットとなり、スロットのサイズが少し小さくなりました。 |
|
端子側は大きな変化はないですね。 ただWiFiとBluetooth対応になったので、マークが追加されています。 |
|
背面は、大きく変化したのは、液晶がチルト式になったことでしょう。 その代わり、液晶カバーはつかないため、パネルの傷防止対策はしたほうがよいでしょう。 Nikon純正の保護ガラスもありますが、自分はHAKUBAのULTIMAを購入しました。 購入当時は、まだHAKUBAにはD850用の設定がなく、D5/D500用を購入しましたが、サイズ的には問題なかったです。 現在では、D850専用でも発売されていますが、サイズ的にはD5/500用と同じで、パッケージの問題でしょうね。 サブセレクター(ジョグ)とFn2ボタンが追加された一方、AF-L/AE-Lボタンが無くなりました。 AE-Lはサブセレクターの中央ボタン、AF-Lへ割り当てろということなんでしょうね。 |
|
ブログでもTwitterでも書きましたが、なんと液晶をチルトすると、角度に寄っては角がサブセレクターに当たります。 同じチルト液晶でも、D500では当たらないようなので、D850固有の問題のようです。 勝手にフォーカスポイントが移動してく~となったら、まずはここを確認してみてください。 |
よくある比較表です。さすがにD800→D810のときより変化点が多いですね。
D850 | D810 | |
イメージセンサ | 4575万画素裏面照射CMOS | 3635万画素CMOS (SONY IMX094) |
ローパスフィルタ | 非搭載 | 非搭載 |
画像処理エンジン | EXPEED5 | EXPEED4 |
基本感度 | ISO64-25600 | ISO64-12800 |
拡張感度 | ISO32-102400 | ISO32-51200 |
連写速度 | 7コマ/秒 | 5コマ/秒 |
9コマ/秒(MB-D18+EN-EL18b使用時) | 7コマ/秒(DXクロップ時) | |
測光方式 | 180kピクセルRGB | 91kピクセルRGB |
AF測距点 | 153点(クロス99点) マルチCAM20K | 51点(クロス15点) マルチCAM3500FX |
AF微調整 | 対応(自動・手動) | 対応(手動) |
ライブビューAF | コントラスト(ピンポイントAF対応) | コントラスト |
フォーカスシフト撮影 | 対応 | 非対応 |
ボタンイルミネーション | 対応 | 非対応 |
液晶モニタ | 3.2型/236万ドット | 3.2型/122.9万ドット(RGBW) |
RAWサイズS | 対応 | 対応 |
RAWサイズM | 対応 | 非対応 |
タイプラプス | 4K(内部生成)/8K(画像撮影のみ・生成は市販ソフト) | フルHD |
レリーズラグ | ?(未公表) | 0.052秒 |
シャッター耐久 | 20万回 | 20万回 |
電子シャッター | 先幕・後幕共に対応 | 先幕シャッターのみ対応 |
動画 | 2160(4K)/30p・1080/120p | 1080/60p |
動画ハイライト表示 | 対応 | 対応 |
動画電子手振れ補正 | 対応(3軸) | 非対応 |
記録媒体 | XQD | CF(TYPE I/UDMA対応) |
SD/SDHC/SDXC(UHS-II対応) | SD/SDHC/SDXC(UHS-I対応) | |
撮影可能コマ数 | 約1840コマ(EN-EL15a使用時/CIPA準拠) | 約1200コマ(EN-EL15使用時/CIPA準拠) |
質量(本体のみ) | 915g | 880g |
こうして並べると、D810とD850との差は大きいように感じますが、スチルメインで考えると、D810が劣る…という感じもあまりありません。なので、D810は性能に対してお買い得に買える(執筆当時)とも言えます。
作例その他D850関連の話題は、例によってブログからどうぞ。
購入からしばらく使い込みましたので、ここからは個人的な感想や所見を書いていこうと思います。
●オートフォーカス |
D810からの大きな変化点としては、D5/D500と同じ、153点のマルチCAM20Kが搭載されたこと。 測距エリアが広がっている他、クロスセンサも99点と増えました。とくにクロスセンサは、左右端でも搭載されるため、縦位置撮影でも威力を発揮します。 欲を言えばCanonの上位機種のように、全面クロスセンサになれば、と思います。 同じAFセンサであっても、D5のほうが、特に暗所ではD850より捕捉率が上という話(私はD5ユーザーではないので比較できない)、このあたりはボディが大型かつ駆動電圧や処理速度で、D5のほうが余裕があるからと言われていますが、D850も、特に暗所はD810より優れている感じです。AF補助光がなくても、かなり合焦率が高くなりました。 クロスセンサが広がり、暗所でも測距エリアの左右端でのフォーカスが合いやすくなりました。 ライブビューは、画質を重視したということで、像面位相差AFは非搭載。 コントラストAFは相変わらず行ったり来たりの動作で、スチルはまあそれでも何とかなりますが、基本的に動画撮影時には使い物にならないので、最初にシングルAFで合わせた後は、マニュアルフォーカスしたほうが手っ取り早いです。 Nikonは、既にミラーレスのNikon 1で像面位相差AFは実現させていて、ノウハウがないわけではないので、フルサイズミラーレスでは、搭載してくると思われます。 |
●画質 |
元々画質に定評があったD810を、特に暗部の階調表現は更に上回る印象です。 ハイライトは、前述の通り、裏面照射CMOS化された影響か、少し硬い…と思っていましたが、いろいろ試した結果、設定次第とも言えるので、一概にハイライトが硬くなったとも言えないかな。 例えば、コントラストや明瞭度の設定でもかなり変わってくる印象です。なので、例えばRAW現像時にコントロールはしやすいと思います。 D810から大幅に向上したというイメージはありませんが、暗部階調の良さが際立っていると思います。特に暗部のざわざわとしたノイズ感は、一層少なくなりました。 |
●ピクチャーコントロール |
D810にはなかったAUTOが追加されました。 「[スタンダード]を基に状況に応じて階調、色、輪郭、明瞭度をカメラが自動的に微調整し、人物撮影時には肌をより柔らかく、風景撮影時には青空や木々の緑を鮮やかに描写します。」とあるように、スタンダードで諧調など各部の設定をAUTOにし、独立したピクチャーコントロールにしたもののようです。 個人的には、デフォルト設定では、コントラストや色が派手目に出る気がしており、撮って出しのJPG撮影に向いているモードかと思います。個人的には、彩度は1段階落としたいですかね。 その他は、D810と同様で、色の傾向も、D810と大きくずれることはないように感じました。 そのため、例えばEXPEED4のD810や、同じ世代のD750と併用しても、かつてD300とD800を併用していた時に感じた、色の出方が違って同時撮影だと処理が大変、ということはないと思います |
●高感度 |
カタログスペック上は、D810から1段分改善していますが、ノイズ処理かより改善されたためか、実際の画像では1段分以上の向上が感じられます。 カラーノイズが、D810からさらに改善され、ノイズリダクション弱でも、ノイズ感が軽減しています。弱なら、ディテール喪失も抑えられます。 個人的には、NR弱、解像度をMやSにするなら、ノイズリダクションオフでも、かなり使えると感じました。 ノイズの出方が、D800やD810と傾向が違うのも、センサが違うから、と思いますが、D800やD810で感度が上がるにつれ、カラーノイズが増える傾向が抑えられています。 |
●シャッター |
D810では、「クシャッ」という大抑えられた音(文字で表現するのは難しい…)になり、Qモードでは「クシュ」と言う、相当抑えられた音でしたが、D850では逆にシャッター音は少し高めで大きくなりました。文字にすると「カシャ」という、普通の感じです(笑) DXクロップで最速秒7コマまでのD810に対し、D850は秒9コマ(MB-D18+EN-EL18b)まで対応するため、シャッターユニットも、静音化よりもスピードが優先された結果なのかもしれません。 ただし、シャッターショックは、新たにバランサーが搭載されて、最小限に抑えられています。 また、D810では電子先幕シャッターが使用できましたが、D850では後幕も電子シャッターが使える、完全な電子シャッターである「サイレント撮影」も可能となりました。 これにより、インターバル撮影やタイムラプス撮影で、シャッターの消耗を抑え、完全無音での撮影も可能となりました。 さらに、モード2では、864万画素(DXクロップJPG-NOMALのみ・AE/AF固定)で3秒間、秒30コマ撮影も可能となりました。これは、一部のミラーレス機では既に実現していますが、まだ非対応のミラーレス機が多く、一眼レフに搭載したことで、撮影の幅も広がりそうです。 |
●連写 |
長々と書きますが、今回D850が単なる高画素機から、連写もできるオールマイティ機に変貌を遂げたD850のハイライトなので(笑 FX時、D800では秒4コマ、D810では秒5コマに対し、D850ではボディ単体で秒7コマ、MB-D18とバッテリEN-EL18b使用時に秒9コマを実現。クロップ時の連写速度向上はありません。 D810では、単三電池8本でも連写コマ数アップしましたが、D850では、単三電池8本での連写コマ数アップはなく、EN-EL18a/b使用時のみ連写コマ数アップとなります。電圧の関係でしょうね。単三電池では性能のばらつきが多いので、連写速度の担保が出来ないのでしょう。 D810のEXPEED4は、D800のEXPEED3の3割増し程度の処理速度と言われていますが、D850では画素数がD800/D810から25%程度増えたにも関わらず、秒9コマ連写達成していることから、EXPEED5は、EXPEED4と比較して、単純計算で2.25倍以上の処理速度を実現したことになります。 4K動画にも対応していることから、やはりこれくらいの処理速度向上が必要だったと思われますし、同時に従来のイメージセンサでは対応できなかったため、新しいイメージセンサが必要になったとも言えます。 ちなみに…D800やD810で使用されているイメージセンサは、SONYのIMX094となっていて、性能データも公表されています。これによると、Max Flame Rateは4.7flames/sとなっていて、これはD810の秒5コマと言う性能とほぼ一致します。 クロップすると連写速度が上がるのも、IMX094の仕様なのでしょう。逆に言うと、これ以上の連写速度向上のためには、従来のSONY製IMX094では性能不足ですし、4Kにも非対応です。 本文執筆時点で、まだセンサのメーカーや型式は解析されていません。さてどこが設計し、製造したのかな? 秒9コマ連写を実現するためには、ボディ単体にプラスして、バッテリーパックMB-D18、D4シリーズやD5で使われている電圧の高いバッテリEN-EL18a/b、バッテリー室BL-5、さらにEN-EL18a/bを充電するための充電器MH-26Aakが必要となり、これだけで総額12万円程度になります。 SONYのα99IIやα7RIIIが、ボディ単体で秒12コマ/秒10コマ(メカシャッター)を達成していることから、連写速度アップに対するハードルは高いといえます。 個人的には、秒7コマと秒9コマは、体感差はそこそこ大きいと感じます。ちなみに、秒9コマは、D3シリーズと同等なんですね。ミドルクラスが、10年かけて連写速度がフラッグシップ機に追いついたとは、感慨深いです。 標準バッテリのEN-EL15aは7.0Vの1900mAhに対し、EN-EL18bは10.8Vの2500mAh、アルカリ単3電池8本なら1.5Vx8で12.0Vですが、eneloopのような充電式の単3電池なら9.6Vとなり、単3電池は種類も多く、性能を担保できないから、連写コマ数アップしないのかもしれませんね。D810ではアップしたので釈然としませんが…。 連写ではどうしても連写速度だけに目が行きがちですが、連続撮影枚数も重要になってきます。 ●FX撮影時 ・D810 L-ロスレス14bit圧縮RAW:28コマ L-12bit圧縮RAW:58コマ ・D850 L-ロスレス14bit圧縮RAW:51コマ L-12bit圧縮RAW:200コマ D850は、最高画質であるロスレス14bit圧縮RAWでも、D810の12bit圧縮RAWに迫る連続撮影枚数ですし、12bit圧縮RAWなら200コマと、申し分のない連続連写撮影が可能です。 面白いことに、12bitロスレス圧縮RAW撮影の場合、Lで撮るより、MやSにするほうが連続撮影枚数が減少します。これは、恐らく撮影時はデータ自体はLのまま、間引き処理してMやSのサイズに変換しているからと思われます。 なので、連続撮影枚数を稼ぐなら、サイズはLのままが良いですね。というわけで、戦闘機撮影では、12bit圧縮RAW Lを使っています。画質については、圧縮RAWでは細部の諧調が飛ぶとの情報もあり、Nikon Rumorsで紹介されたレビューにも書かれていますが、私の使い方では今のところあまり気にならないかな…。もう少しテストする必要がありそうです。 ちなみに、高画素連写機のライバルを見ると、SONYのα99IIが連続撮影Hi+で54コマ、α7RIIIが76コマとありますが、RAWの設定条件は詳しく書かれていませんね。 |
●動画 |
2017年の機種なので、当然ながら4Kには対応。残念ながら60pではなく30pですが、発熱も大きいので、現状これが落としどころと思います。まだ4Kの60p対応機は、D850登場時点では、PanasonicのGH5くらいで、殆どありませんので。 フォーカスピーキングや電子手ブレ補正に対応したものの、フルHDまでなのが残念。4Kでもせめてフォーカスピーキングには対応して欲しいところです。 また、他社が映像制作用にLog記録などに対応しているのに対し、ピクチャーコントロールのフラットを使って、というのも、ちょっとトレンドを外していて投げやり感があります。 日本ではスチルカメラの動画が重視されない傾向にありますが、海外では盛んに利用されているようで、今後も力を抜かないで欲しいところ。 相変わらず動画撮影時のコントラストAFは行ったり来たりで遅く、画質に影響があるから像面位相差AFを採用しなかったというNikonの開発者の弁は理解するものの、コントラストAFでももう少しピシッと早くならないものだろうか? |
●バッテリ |
標準バッテリは、EN-EL15aで、基本的には2013年に放電特性変更後のEN-EL15と同等のようです。 容量は1900mAで、D810のEN-EL15と同じですが、D810より連続撮影枚数は増えています。 また、バッテリバックMB-D18には、EN-EL15aや単3電池8本の他に、D4シリーズ、D5用のEN-EL18a/bも使用可能で(ちなみにD800/D810のMB-D12もEN-EL18シリーズが使用可能)、EN-EL18a/b使用時のみ、連写コマ数アップするのは前述の通り。 また、EN-EL18a/bは電圧と容量ともにEN-EL15aより大きいため、さらに撮影可能コマ数も増えます。 ちなみに、航空祭の連写多様の撮影で、フル充電のEN-EL18bで4500コマ撮影し、まだ残量28%でしたので、相当バッテリが持つカメラだと思います。びっくりです。 このバッテリの持ちっぷりは、ミラーレスは現状太刀打ちできないですね。 |
●SnapBridge |
D800やD810では、業務用の高価なWiFiアダプタしか搭載できませんでしたが、ついにスマホやタブレットと接続可能なSnapBridgeが搭載されました。 ◇SnapBridgeの機能のおさらい SnapBridgeは、D5600から搭載された、Nikonのカメラとスマホ・タブレットをBluetoothで常時接続するための機構です。 NikonのHPによると… http://www.nikon-image.com/products/software/lineup/snapbridge/
従来から、Wi-Fiで画像を転送する機能は、Nikonの一部のカメラに搭載、または別売りのWi-Fiアダプタで可能でした。他社のカメラも同様です。 ただ、Nikonに限らず、Wi-Fi接続の場合、都度カメラとスマホ・タブレットの接続を行わなければならず(1対1のアドホック接続)、常時接続してしまうと、今度はスマホ・タブレットがWi-Fi通信のみとなって、外部に通信できない、ということになります。 例えば、カメラの画像をスマホに転送し、SNSにアップロードするとします。 この場合、従来のWi-Fiでは、まずアプリ上からカメラに対してWi-Fi接続を行います。 次に、アプリ上から転送したい画像を選択、あるいはカメラによってはカメラ側であらかじめ特定の画像に転送設定すると、その画像がスマホ・タブレットに転送される仕組みです。 ただし、画像転送中は、前述のとおり、Wi-Fiによりカメラとスマホ・タブレットは1対1のアドホック接続となり、Wi-Fi接続中は、3G/4G回線による通信はできないため、SNSなどインターネットには接続できないことになります。 このため、画像転送を終えたら、カメラとのWi-Fi接続を切断してから、3G/4G回線又はインターネット接続できるWi-Fiに接続して、SNSなりにアップロードしなければなりません。 これが割と面倒な作業でした。 ところが、SnapBridgeは、カメラとの接続にBluetooth LEを使用します。 BluetoothはWi-Fiや3G/4G回線とは排他的に接続できるため、常時Bluetoothでカメラとスマホ・タブレット接続していても、その状態のままインターネットに接続可能です。 画像の常時転送設定にしておけば、撮影するとほぼ同時に、Bluetooth経由で画像が転送されます。 Bluetoothなので、Wi-Fiより転送速度は劣るものの、2Mピクセル程度に縮小して転送する設定であれば、さほどストレスなく画像転送可能です。 また、アプリ側で設定しておけば、Bluetooth接続と同時に、カメラの内臓時計をスマホと同期できるほか、スマホのGPSを利用して、撮影時にGPSデータを付与することも可能です。 Wi-Fi接続すれば、ライブビュー画像をそのままスマホ・タブレットで見れて、シャッターを切ることも可能ですし、スマホ側からカメラの画像データにアクセスし、画像取得も可能となります。 ▲Ver1時代のSnapBridgeの画面(左)とVer2(右) Ver2になって洗練された感じ ◇つながれば概ね快適だが… 機能的には非常に便利で、他メーカーのカメラのようなWi-Fi接続よりも手軽かつシームレスな画像転送も可能なSnapBridgeですが、あくまでこれは繋がれば、の話。 以前当ブログで、一筋縄にはいかない、と書いた通り、うまく接続されないことがあり、そうなるといつまでも繋がらない、画像転送もできない、となります。 また、Bluetoothはつながれど、Wi-Fi接続がうまくいかないことが多々あり、つながっても速度が遅すぎるなど、Wi-Fi接続によるライブビューは、ほとんど使い物にならないです。 アプリについては、Ver2.00になって接続性が大幅に改善されました。とは言え、時々つながらないこともあり、さらなる安定性向上に期待したいです。 |
●残念なポイント |
基本的に完成度の高いカメラではありますが、重箱の隅をつつくとしたら、以下が不満点です。 ・4K動画撮影時にフォーカスピーキングやハイライト飛び警告、電子手ブレ補正が使えない ・Ver2で改善されたとは言え、SnapBridgeの接続性に問題が多いこと ・未だ遅すぎるライブビュー時のAF速度 ・電子シャッター時のブラックアウト 完璧なものはないですが、4K動画時のフォーカスピーキングや電子手ブレ補正くらいは動いてほしいですね。ファームウェアアップで何とかならないかな? |
●D700/D800/D810ユーザーは買い替えるべきか? |
D800(E)ユーザーであれば、買い換える恩恵は大いにあります。まずJPGの画質が大幅に改善される、ここは大きいです。そして微ブレ対策もされているので、写真の歩留まりも上がるはずです。 D810との差は、JPG画質についてはそれほど大きくはないと思います。D810のJPG画質は、現在も十分通用します。 高感度耐性は、素直に世代別にD800(E)<D810<D850で、室内や暗所撮影が多いなら、買い替えの価値は十分あります。 一方、連写しない、RAW現像主体、であれば、差は小さいかと思いますが、D800(E)はミラーショックとシャッターショックによる微ブレ問題があり、D810はそこが大幅に改善され、D850は更にシャッターショックも改善しているので、歩留まりの観点から、D800ユーザーは買い換える価値はあると思いますが、D850登場で値落ちしてきているD810に買い換えるのも悪くない選択肢です。ちなみにYamaroはD810は売却せず残します。 一方、純粋な後継機がないと言われていたD700ですが、さすがにD850は9年新しいだけに、買い替えは大いに推奨します。 D700はD3ジュニアとして、D3と同じセンサ、秒8コマ連写(MB-D10+単3電池8本/EN-EL3使用時)で、ファインダ視野率は100%ではないものの、フルサイズの連写機として長く君臨してきました。さすがに初代EXPEEDは古いですし、そろそろメンテナンスも難しくなってくる時期(話ではD700の修理対応は2018年10月までのようです)です。大幅に画素数が変わるところがネックですね。 |